【言葉】
偲ぶ
【読み方】
しのぶ
【意味】
1⃣[動バ五(四)]
①過ぎ去った物事や遠く離れている人や場所などを懐かしい気持ちで思い出す。
②心引かれて思いめぐらす。
③物の美しさに感心し味わう。
2⃣[動バ上二]1⃣①に同じ。
【語源・由来】
上代は「しのふ」で、ハ行四段活用。平安時代になって、「忍ぶ」(本来は上二段活用)と混同して「しのぶ」となり、上二段にも活用。
【類義語】
・懐しむ
・慕わしく思う
・賞美する
「偲ぶ」の使い方
この大理石の石畳の街路が往時を偲ばせるね。
当時は活気のある町だったんでしょうね。
遺跡になってしまっても、その時の王様の権力のすごさが分かるよ。
これだけのものを作らせるんだから、財力も権力も思いのままだったんでしょうね。
「偲ぶ」の例文
- 戦争で亡くなった人々を偲んで、戦争記念碑が建立された。
- 質素な造りの家から、故人の人柄が偲ばれる。
- 食堂の内装もな、少しでも故郷を偲ぶよすがにと奥村は思ったんやろな。(三浦綾子 ちいろば先生物語)
- ですから、ただ 花のお江戸、だけじゃ駄目なんです。遠くを見てお江戸を偲んで後ろを振り返らなくてはいけません。(尾上松緑 松緑芸話)
- 原治の太打ち、これも遠い元禄のころを偲ばせる、この店の名物であった。(池波正太郎 夜明けの星)
「偲ぶ」と「忍ぶ」の違いは?
「偲ぶ」と同じ読み方の語に「忍ぶ」があります。
「忍ぶ」は、上代は上二段活用。平安時代になって「偲 ぶ」と混同し、四段にも活用。
1⃣[動バ五(四)]
①つらいことをがまんする。じっとこらえる。耐える。
②自分の存在や行いを、人に気付かれないようにする。外から見えないようにして身を置く。隠れる。
2⃣[動バ上二]
①(現代語に残存したものとして、ふつう「…にしのびず」「…にしのびない」など打消しの語を伴った形で用いる)救ってやりたい、捨てるに惜しい、といった気持ちを現したいのを押さえる。こらえる。
②1⃣①に同じ。
③1⃣②に同じ。
という意味です。
「偲ぶ」は、主に、遠く離れている人や場所を懐かしく思うという意味で使われます。
対して「忍ぶ」は、「人目にふれないようにする。忍耐。」という意味で使われ、同じ読み方ですが意味が違います。