「本人曰くって、なんとなく聞いたことはあるけれど正確な意味は説明しづらい」と感じる方は少なくありません。
「曰く」は古風な語感があるため、読み方や使い方に不安が出やすい言葉です。
さらに「曰く付き」「曰く言い難し」など関連表現まで含めると、意味の幅が広くなり、誤用もしやすくなります。
この記事では、「曰く」の基本意味を2つに分けて整理し、「本人曰く」の実用的な使い方、類義語との違い、失礼に見せない言い換えまで一気に解説します。
辞書情報だけで終わらず、実際の文章でどう使うかまで落とし込むので、読み終えるころには迷わず使える状態になります。
【この記事でわかること】
- 「曰く」の2つの意味と読み方が分かる
- 「本人曰く」の自然な使い方と注意点が分かる
- 類義語への言い換えまで含めて、文脈に合う語を選べるようになる
目次
曰くの意味は2つある
まず押さえるべきポイントは、「曰く」には実際に2つの意味があることです。
1つは「言うことには」という引用の機能で、もう1つは「事情・いわれ」という名詞的な意味です。
この2本立てを理解しておくと、「本人曰く」と「曰く付き」の違いが一気に明確になります。
① 引用としての「曰く」
「A曰く、B」の形で、Aの発言内容を導く使い方です。
現代語で言い換えると「Aが言うには」「Aによると」に近い機能を持ちます。
文体としてはやや硬く、会話よりも文章で見かけやすい語です。
② 事情としての「曰く」
こちらは「いわれ」「込み入った事情」という意味です。
「曰くのある品」「曰く付きの物件」のように、背景事情を示す名詞として使います。
語義としては中立ですが、実際の運用では「あまり好ましくない事情」を帯びることが多い点が重要です。
読み方は「いわく」が基本
現代では「いわく」と読むのが基本で、古い仮名遣いでは「いはく」と表記されます。
また「曰わく(のたまわく)」という読みもあり、こちらは「いわく」の尊敬語として扱われます。
ただし「のたまわく」は古典的な場面で見かけることが中心で、現代の日常文で多用する語ではありません。
「本人曰く」とは?
「本人曰く」は、文字どおり「本人が言うには」という意味です。
第三者が、当事者本人の発言を取り次いで伝えるときに使われます。
つまり「私の意見」ではなく「当人の説明」を示すためのラベルとして機能します。
この表現の実務的なポイントは、情報の責任主体を本人側に置けることです。
たとえば報告文で「本人曰く、体調不良で遅れたとのことです」と書けば、報告者が断定しているのではなく、本人の申告を伝えている構造になります。
断定を避けたい場面では有効ですが、使いすぎると距離を感じる文にもなり得ます。
「本人曰く」の基本文型
「本人曰く」は、次の形で覚えると運用しやすくなります。
本人曰く、〜。
この後ろには、事実の断定よりも「〜とのこと」「〜だそうです」などの伝聞表現を組み合わせると、語調が自然になります。
| 文型 | ニュアンス | 例文 |
|---|---|---|
| 本人曰く、〜とのことです | 報告文向き。客観性を保ちやすい | 本人曰く、通信障害で返信が遅れたとのことです。 |
| 本人曰く、〜だそうです | 会話寄り。柔らかい | 本人曰く、来月から新部署に異動だそうです。 |
| 本人曰く、〜。 | 強めの提示。文脈次第で断定寄り | 本人曰く、今回は不参加です。 |
「曰く」の使い方を例文で整理
ここからは、混同されやすい3パターンをまとめて確認します。
「同じ曰く」でも、機能がまったく違うことを意識すると誤用が減ります。
まずは引用、次に事情、最後に慣用句の順で見ていきましょう。
パターン1:A曰く(引用)
引用型は、発言者を前に置いて内容を導く形です。
語感は硬めなので、レポート・コラム・評論調の文脈と相性がよいです。
日常会話なら「〜によると」に置き換えると自然になります。
【例文】
- 先生曰く、語彙の学習は「意味」より「使う場面」を覚える方が定着しやすいそうです。
- 先輩曰く、最初の企画書は完璧さより提出速度を重視した方がよいとのことでした。
- 本人曰く、昨日の欠席は寝坊ではなく発熱が理由だったそうです。
パターン2:曰く付き(事情・前歴)
「曰く付き」は、特別な事情が付随していることを表す語です。
辞書上は「事情がある」が中核ですが、実際には「よくない前歴・いきさつ」の含みで使われることが多いです。
したがって、人物や物件に使うときは、文脈上の印象に注意が必要です。
【例文】
- この骨董品は由来がはっきりしない曰く付きの品で、真贋判定に時間がかかった。
- その土地は過去の権利関係が複雑で、曰く付きと評されてきた。
パターン3:曰く言い難し(慣用)
「曰く言い難し」は「簡単には説明できない」「何とも言いようがない」という意味です。
語源は『孟子』に由来するとされ、現代では感想や事情説明の難しさを表す際に使われます。
かしこまった文体で使うと品よくまとまりますが、口語ではやや硬く聞こえることもあります。
【例文】
- 作品全体の印象は、面白いとも退屈とも言い切れず、曰く言い難しというほかない。
- その判断に至った経緯は複合的で、外部からは曰く言い難い部分が多い。
「曰く」は失礼?ビジネスでの使い分け
「曰く」自体が直ちに失礼語というわけではありません。
ただし古風でやや客観距離のある語なので、相手との関係や文書の目的によっては、より中立的な言い換えの方が適切です。
特に対面コミュニケーションでは、硬さが先に立ってしまうことがあります。
失礼に見せないための実務ルールは、次の3点を押さえると十分です。
- 目上の人を直接話題にする場面では「おっしゃるには」「〜とのことです」を優先する
- 伝聞であることを示したい報告文では「本人曰く」を使って責任主体を明確にする
- 口頭説明では硬すぎると感じたら「〜によると」に置き換える
たとえば会議メモなら「部長曰く」でも成立しますが、対面で部長本人に向かって言うなら「部長がおっしゃるには」の方が角が立ちにくいです。
また、社内報告では「本人曰く、体調不良とのことです」とすれば、断定を避けつつ情報を共有できます。
要するに「語の正誤」より「距離感の調整」が、実用上の核心です。
類義語(言い換え)は意味ごとに選ぶ
「曰く」の類義語は、意味の軸を分けて選ぶと失敗しません。
引用の「曰く」と、事情の「曰く」では、適切な言い換えが異なります。
ここを混ぜると不自然な日本語になりやすいので、下の整理で覚えるのが効率的です。
| 曰くの意味 | 主な言い換え | 使い分けの目安 |
|---|---|---|
| 言うことには(引用) | 〜によると/〜とのこと/〜だそうです/〜いわく | 日常は「〜によると」、報告は「〜とのこと」、硬め文体は「〜いわく」 |
| いわれ・事情(名詞) | 事情/理由/いわれ/由来/前歴 | 中立に説明するなら「事情・理由」、背景を含めるなら「いわれ・由来」、負の含みなら「前歴」 |
「曰く付き」の言い換えは、状況で粒度を変えるのがコツです。
法務・不動産など事実を淡々と書く文脈では「経緯が複雑」「過去に特記事項あり」のように中立化すると誤解を減らせます。
エッセイや評論では、あえて「曰く付き」を使うことで語感の強さを演出する選択もできます。
よくある質問(誤用防止)
Q1. 「本人曰く」は二重伝聞になりますか?
必ずしも二重伝聞ではありません。
「本人曰く」は“情報源が本人である”ことを示す枠組みで、その後ろに「〜だそうです」「〜とのことです」を置くと、報告者の立場としては自然です。
ただし、確定情報として出す場面では「本人の申告では〜」など、確度の注記を加えるとより丁寧です。
Q2. 「曰く付き」は必ずネガティブですか?
語義の中核は「特別な事情があること」で、理論上は中立です。
ただし辞書にも「特に、よくない前歴」の用法が示されており、現代の実際の運用では負の含みが強く出やすい語です。
無用な印象付けを避けたい文書では「事情がある」「経緯が複雑」などを使うのが安全です。
Q3. ひらがなの「いわく」と漢字の「曰く」はどちらが正しいですか?
どちらも使えます。
可読性重視なら「いわく」、語感や見出しの統一を重視するなら「曰く」が選ばれます。
なお辞書では歴史的仮名遣いとして「いはく」も示されますが、現代文では通常「いわく」で問題ありません。
まとめ
「曰く」は、引用(言うことには)と事情(いわれ)の2つの意味を持つ語です。
「本人曰く」は当事者の発言を伝える実用的な表現で、報告文では責任主体を明確にできる利点があります。
一方で、文体としてはやや硬いので、会話や対面では「〜によると」「〜とのことです」への言い換えを使い分けると自然です。
最後に実務で使う際は、「この文は誰の情報か」「どの程度断定するか」「語感は硬すぎないか」の3点を確認してください。
このチェックだけで、「曰く」の誤用と違和感はほぼ防げます。
意味を知るだけでなく、場面に合わせて選べるようになれば、文章の信頼感は確実に上がります。
- 伝聞表現の使い分け(〜そうだ/〜とのこと)
- 敬語の引用表現(おっしゃるには/述べる)
- 「理由・事情・由来」のニュアンス差
- 古語由来の慣用句(例:曰く言い難し)への接続












