「重ね重ねありがとうございます」は丁寧に聞こえる一方で、「くどくないか」「二重表現ではないか」と不安になる表現です。
実際、意味だけを知っていても、どの場面で使うべきかが曖昧だと文面の印象は安定しません。
この言葉は、感謝や謝罪を“繰り返して強調する”ときに効果を発揮しますが、使いどころを外すと不自然さが出ます。
この記事では、辞書的な意味からビジネスでの運用ルールまで、実例つきで整理します。
先に結論を言うと、「重ね重ねありがとうございます」は正しい日本語表現です。
ただし、単発の出来事に対して毎回使うと違和感が出やすく、文末の締めで使うほうが自然です。
さらに、場面によっては「改めてありがとうございます」「心より御礼申し上げます」などの言い換えが適することもあります。
意味とマナーを分けて理解するのが、使いこなしの近道です。
【この記事で分かること】
- 「重ね重ね」の正確な意味と、重言との違い
- 「重ね重ねありがとうございます」の適切な使い方と例文
- 類義語の使い分けと、失礼に見せない運用ルール
目次
重ね重ねの意味とは
辞書的には「たびたび」「念入りに」の2つが軸
「重ね重ね(かさねがさね)」は副詞で、辞書では大きく2つの意味で説明されます。
1つ目は「同じようなことが繰り返されるさま」、つまり「たびたび」という意味です。
2つ目は「念入りに相手に頼み込むさま」「心情の深さを伝えるさま」で、感謝や謝罪の強調に使われます。
この2軸を押さえると、なぜビジネス文で重宝されるかが理解しやすくなります。
「重ね重ね」は重言ではないのか
「同じ語を重ねているから誤りでは」と感じる人は少なくありません。
しかし、実務解説では「重ね重ね」は慣用的に成立した表現として扱われ、誤りとはされていません。
ポイントは、単なる重複ではなく「繰り返し」や「気持ちの深さ」を示す機能を持っていることです。
そのため、形式よりも“文脈に合っているか”で判断するのが実践的です。
語感の特徴
「重ね重ね」は、日常会話でも通じますが、やや改まった語感があります。
軽い雑談より、メール・手紙・正式な連絡での相性がよい表現です。
また、相手への敬意を保ちながら感情の強さを伝えられるため、謝意や謝罪の締め文に向いています。
反面、連発すると文章が重たく見えるため、頻度の調整は欠かせません。
「重ね重ねありがとうございます」とは
基本の意味
「重ね重ねありがとうございます」は、「何度も」「あらためて」感謝を伝える言い方です。
一度お礼を述べたうえで、さらに気持ちを強めたい場面に適しています。
たとえば、継続的な支援、複数回の配慮、再度の対応など、感謝対象が重なるときに自然です。
逆に、単発の出来事に使うと大げさに映ることがあります。
どの位置で使うのが自然か
実務では、冒頭よりも文末の締めで使うほうが安定します。
理由は、「重ね重ね」が“すでに述べた内容にさらに言葉を重ねる”性質を持つためです。
本文で経緯や謝意を示したあとに置くと、強調として機能しやすくなります。
導入文の一発目で使うと、読み手が「何を重ねているのか」を捉えにくくなります。
多用は避けるべきか
「重ね重ね」は効果の強い語なので、使い過ぎると逆に印象が薄まります。
丁寧に見せたい意図が、冗長さや過剰さとして受け取られることもあります。
重要な局面で使うからこそ、言葉の重みが保たれます。
一通のメール内で1回までを目安にすると、読みやすさと丁寧さのバランスが取りやすいです。
「重ね重ね」の使い方と例文
ここからは、感謝・謝罪・依頼の3場面で使い方を整理します。
ポイントは、単に定型句を付けるのではなく、先に事実や行為を明示してから重ねることです。
これにより、相手は「何に対しての感謝・謝罪か」を即座に理解できます。
結果として、丁寧でありながら実務的な文面になります。
感謝で使う例文
継続的な支援や複数回の対応に対しては、感謝を強める表現として有効です。
とくに社外メールでは、具体的な行為を先に述べると誠実さが伝わります。
「重ね重ねありがとうございます」を文末に置くと、全体のまとまりもよくなります。
以下はそのまま使える基本形です。
【例文】
「短納期にもかかわらず、迅速にご対応いただき誠にありがとうございました。加えて資料の修正点まで丁寧にご指摘いただき、大変助かりました。重ね重ねありがとうございます。」
謝罪で使う例文
謝罪では、「重ね重ねお詫び申し上げます」「重ね重ね申し訳ございません」が定番です。
すでに謝罪を述べたうえで、再度気持ちを強調する流れにすると自然です。
ただし、原因説明や再発防止策がないと、言葉だけが強く見えて逆効果になることがあります。
謝罪の強度は、内容の具体性で担保する意識が重要です。
【例文】
「このたびは納品遅延によりご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。進行管理体制を見直し、再発防止策を本日中に共有いたします。重ね重ねお詫び申し上げます。」
依頼・念押しで使う例文
「重ね重ね」は依頼の念押しにも使えますが、圧を上げすぎない配慮が必要です。
相手の負担が大きい依頼であれば、理由と期限を明示して丁寧に頼むのが基本です。
また、親しい関係ではやや硬くなるため、文体の温度調整を意識します。
無難な形は「重ね重ねのお願いとなり恐縮ですが」です。
【例文】
「重ね重ねのお願いとなり恐縮ですが、最終版のご確認を本日18時までにお願いできますでしょうか。」
NG例と改善例で理解する
意味を知っていても、運用を間違えると不自然に見えるのが「重ね重ね」の難しさです。
ここでは、実務で起こりやすい3つの失敗を改善形で示します。
着眼点は「反復性があるか」「配置が適切か」「言い過ぎていないか」です。
この3点が整うと、ほとんどの誤用は回避できます。
| NG表現 | どこが不自然か | 改善例 |
|---|---|---|
| (冒頭)重ね重ねありがとうございます。先日は… | 何を重ねるのかが不明確 | 先日はご対応いただきありがとうございました。…重ね重ねありがとうございます。 |
| 一度の対応に対して「重ね重ねありがとうございます」 | 反復性が弱く、大げさに見える | 誠にありがとうございます。/心より御礼申し上げます。 |
| 同一メールで2〜3回連続使用 | 冗長で機械的な印象 | 1回だけ使用し、他は「改めて」「このたびは」で分散する |
類義語との違い(使い分け)
「重ね重ね」に近い語は多いですが、ニュアンスは同一ではありません。
似た語を正しく使い分けると、文面の温度感や丁寧さを細かく調整できます。
特にビジネスでは、相手との距離感に合った語を選ぶことが印象を左右します。
以下の比較を基準にすると、選択に迷いにくくなります。
| 表現 | ニュアンス | 適した場面 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 重ね重ね | 反復+強調 | 感謝・謝罪の締め | 反復性が前提 |
| くれぐれも | 念押し・注意喚起 | 依頼・注意 | 感謝より依頼寄り |
| 重々(じゅうじゅう) | 非常に丁重 | 謝罪・依頼 | やや古風で硬い |
| 改めて | 再確認・再表明 | 感謝・報告 | 汎用性が高い |
| 再三 | 何度も繰り返し | 注意・催促 | 強めに響く場合あり |
言い換え候補(実務で使いやすい順)
- 改めてありがとうございます
- 心より御礼申し上げます
- このたびは誠にありがとうございます
- 繰り返しになりますが、感謝申し上げます
- 再度御礼申し上げます
失礼にならない運用ルール
「重ね重ね」は敬語として問題のある語ではありません。
ただし、相手がどう受け取るかは、語そのものより文脈の作り方で決まります。
特に社外文書では、丁寧さの前に「事実の明確さ」を優先したほうが信頼されます。
次の3点を押さえるだけで、文面の安定度が一気に上がります。
- 反復性を確認する
単発案件なら別表現に置き換える。
- 配置を意識する
本文で経緯を述べたあと、締めで使う。
- 頻度を絞る
1通1回を目安にし、他は別語で分散する。
加えて、祝い事や弔事では「重ね言葉」を避けるマナーが紹介されることがあります。
これは法的な禁止ではありませんが、場の慣習として配慮される領域です。
フォーマルな式典文では、主催側の慣習に合わせるのが安全です。
ビジネス通常文とは評価軸が異なる点を覚えておくと、場面対応がしやすくなります。
そのまま使えるメール文例(感謝・謝罪・依頼)
まず感謝の型です。
「このたびは度重なるご支援をいただき、誠にありがとうございました。おかげさまで無事に公開を迎えることができました。重ね重ねありがとうございます。」
この文は、支援が継続していた事実を示してから締めるため、語の機能と一致しています。
次に謝罪の型です。
「納期遅延によりご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。進行管理を見直し、今後は同様の事態を防止いたします。重ね重ねお詫び申し上げます。」
謝罪語の強さだけでなく、再発防止の具体策を添えることで、実務文としての説得力が高まります。
最後に依頼の型です。
「重ね重ねのお願いとなり恐縮ですが、見積書最終版をご確認いただけますでしょうか。ご多忙のところ恐れ入りますが、本日17時までにご返信いただけますと幸いです。」
期限と行為が明示されるため、丁寧さを保ちながら行動につながる文章になります。
FAQ
Q1. 「重ね重ねありがとうございます」は毎回使ってよいですか
毎回使うと、感謝の強調が平坦化しやすく、かえって形式的に見えることがあります。
継続支援や複数回対応など、重ねる理由がある場面で使うのが効果的です。
単発の謝意なら「誠にありがとうございます」「心より感謝申し上げます」で十分伝わります。
語の強さは、使う場面を絞るほど活きます。
Q2. 「重ね重ねありがとうございます」は失礼ですか
失礼表現ではありません。
むしろ丁寧な語ですが、硬さがあるため、相手との関係や媒体に合わせる必要があります。
社内チャットのような軽い場では「改めてありがとうございます」のほうが自然な場合もあります。
丁寧さの最適解は、語の難しさではなく、場面との一致で決まります。
Q3. 感謝以外にも使えますか
はい、謝罪や念押しの依頼にも使えます。
辞書語義にある「念入りに伝える」機能があるため、気持ちの深さを補強できます。
ただし、強い言葉なので、本文で事実説明を先に行うのが前提です。
言葉だけを重くしないことが、誤解を避けるコツです。
まとめ
「重ね重ね」は、単なる丁寧語ではなく、反復と強調を担う実務語です。
「重ね重ねありがとうございます」は正しい表現ですが、効果が高いぶん、場面と頻度の設計が欠かせません。
使い方の基本は、①反復性のある事実を示す、②文末で締める、③一通で多用しない、の3点です。
このルールを守れば、丁寧さと自然さを両立しやすくなります。
関連記事へつなぐなら、「謝罪メールの定型」「依頼文のクッション表現」「敬語の言い換え集」を次に読む導線が有効です。
意味理解だけでなく、文章運用まで一貫して押さえることで、言葉選びの迷いは大きく減らせます。
「重ね重ね」を“なんとなく丁寧な語”としてではなく、“使う理由がある語”として選べるようになると、文面の説得力は確実に上がります。



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