【ことわざ】
君飾らざれば臣敬わず
【読み方】
きみかざらざればしんうやまわず
【意味】
人から尊敬を得るには、服装や言葉遣い、振る舞いをきちんと整える必要があるということ。


【英語】
・Clothes make the man.(服装が人の印象を形づくる)
【類義語】
・公家にも襤褸(くげにもつづれ)
「君飾らざれば臣敬わず」の語源・由来
「君飾らざれば臣敬わず」は、君主が身なりや言葉、振る舞いを整えなければ、臣下から敬われないという関係を表したことわざです。「君」は君主や主人、「臣」は君主に仕える者を指します。
ここでいう「飾る」は、宝石などを付けて華やかにすることだけではありません。服装を整え、言葉を選び、動作や態度をその立場にふさわしくすることまで含む言い方です。
「敬う」は、相手を尊いものとして礼を尽くすことです。そのため、このことわざは、地位や肩書だけでは本当の尊敬を得られず、それにふさわしい姿を自ら示す必要があると教えています。
古い用例は、心敬の連歌論書『ささめごと』(1463年・室町時代成立、心敬著)に出てきます。『ささめごと』は、連歌の歴史や作り方、言葉の選び方、創作に向かう心構えなどを、問答を交えながら論じた書物です。
その下巻には、「君かざらざれば臣敬はずといへば、姿・言葉をかざらむ、歌道の肝用なるべし」とあります。君主が自分を整えなければ臣下から敬われないのと同じように、歌も姿と言葉を磨くことが大切だ、という意味です。
この一節では、政治のあり方そのものを説くためではなく、歌を作る際の心得を示すたとえとして、このことわざが用いられています。心の中に優れたものがあっても、それを伝える姿や言葉が整っていなければ、その価値は相手に十分伝わらないという考えです。
また、本文には「君かざらざれば臣敬はずといへば」と書かれています。「といへば」という言い方から、心敬が新しく作った言葉というよりも、当時すでに知られていた教えを引いていると考えられます。
古い表記の「敬はず」は、動詞「敬ふ」の未然形に、打消しの「ず」が付いた形です。現代仮名遣いでは「敬わず」と書きますが、意味そのものは変わっていません。
「飾る」についても、表面を取り繕って中身を偽るという悪い意味に限りません。『ささめごと』では「姿・言葉をかざらむ」と続いており、外に表す形を磨き、内容にふさわしく整えることを指しています。
やがてこの表現は、君主と臣下だけでなく、人の上に立つ者と、その人に従い支える者との関係を表す教えとして、広く使われるようになりました。指導者が礼儀や身なりを軽んじながら、周囲に規律や敬意だけを求めても、人の心はついてこないという戒めです。
つまり、「君飾らざれば臣敬わず」がいう「飾り」とは、空虚な見栄ではなく、自分の立場に対する責任を外にも表すことです。内面を大切にしながら、それが正しく伝わるように姿や言葉を整えることが、信頼と尊敬につながると教えています。
「君飾らざれば臣敬わず」の使い方




「君飾らざれば臣敬わず」の例文
- 式典の責任者は、君飾らざれば臣敬わずを心に留め、服装と挨拶を整えた。
- 社長がだらしない態度で社員に規律を求める姿を見て、君飾らざれば臣敬わずという言葉を思い出した。
- 班長は君飾らざれば臣敬わずの教えに従い、誰よりも早く集合場所へ来た。
- 父は客を迎える前に君飾らざれば臣敬わずと言い、身なりと言葉遣いを正した。
- 監督が礼儀正しく練習に臨むと、君飾らざれば臣敬わずの教えどおり、選手たちの態度も引き締まった。
- 人の上に立つ者ほど自らを整える責任があることを、君飾らざれば臣敬わずは教えている。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・木藤才蔵・井本農一校注『日本古典文学大系 第66巻 連歌論集・俳論集』岩波書店、1961年。
・伊地知鐵男・表章・栗山理一校注・訳『日本古典文学全集51 連歌論集・能楽論集・俳論集』小学館、1973年。
・心敬『ささめごと』1463年。



-298x300.png)










