【ことわざ】
大河を手で堰く
【読み方】
おおかわをてでせく
【意味】
無謀で不可能な方法によって、到底できないことをしようとするたとえ。


【類義語】
・大海を手で塞く(たいかいをてでせく)
「大河を手で堰く」の語源・由来
「大河を手で堰く」は、勢いよく流れる大きな川を、両手だけで止めようとする光景から生まれた表現です。人の手では大河の流れを受け止められないことから、方法があまりにも無謀で、実現する見込みのないことをたとえます。
「堰く(せく)」は、水などの流れをさえぎって止めることです。「塞く」とも書きますが、「堰く」は川や水路をせき止める様子を直接表すため、このことわざの情景によく合います。
この言葉と同じ発想をもつ古い表現に、「大海を手で塞く」があります。海の水を手だけでせき止めるように、仕事の困難さに比べて、人の力や方法があまりにも小さく、到底なし遂げられないことを表します。
『毛吹草(けふきぐさ)』(1638年序・江戸時代前期、松江重頼編)巻二には、「大かいを手でせくごとし」とあります。「大かい」は大海、「せく」は水の流れを止めることであり、大きな海を手で止めるような不可能な行いを表したものです。
『毛吹草』は、俳諧(はいかい)の決まりや句作に役立つ言葉、各地の産物などを収めた七巻の書物です。便利な書物として広く読まれ、その中に集められた多くの言い回しは、江戸時代に使われていたことわざを知る手掛かりとなっています。
ただし、1638年の用例は、「大河を手で堰く」そのものではなく、「大海を手で塞く」という形です。二つの表現は、広大な水の流れを小さな手だけで止めようとする点で共通していますが、一方がもう一方から直接生まれたとまでは断定できません。
後には、「大海」を「大川」とした「大川を手で堰く」も、同じ意味を表す言い方として用いられました。「大河を手で堰く」では、「大河」を「たいが」ではなく「おおかわ」と読み、大きな川の流れを思い浮かべる形になっています。
表記にも、「塞く」「堰く」「塞ぐ」という違いがあります。「塞く」と「堰く」は、ともに「せく」と読み、「大海を手で塞ぐ」は「たいかいをてでふさぐ」と読みますが、いずれも広大な水を手だけで止めるという同じ比喩を用いています。
このことわざは、難しいことへの挑戦そのものを否定する言葉ではありません。問題の大きさに対して、人数・道具・時間・計画などがあまりにも不足し、その方法のままでは実現できない場合に用います。努力を続ける前に、目的に合った方法を選ぶ必要があることを教える表現です。
「大河を手で堰く」の使い方




「大河を手で堰く」の例文
- 一人で土のうも使わずに洪水を止めようとするのは、大河を手で堰くようなものだ。
- 一万冊の本を十分間で一人だけで整理する計画は、大河を手で堰くに等しい。
- 予算も人員もないまま全国に支店を開こうとするのは、大河を手で堰く試みにほかならない。
- 壊れた堤防から流れ込む水を小さなバケツ一つでくみ出しても、大河を手で堰く結果になる。
- 膨大な記録を道具も使わず一晩で調べ直すという仕事は、大河を手で堰くような難題だった。
- 大河を手で堰くことにならないよう、責任者は問題の規模に合った人員と設備を整えた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・小学館大辞泉編集部編、松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・松江重頼編『毛吹草』1638年序。



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