【ことわざ】
帯に短し襷に長し
【読み方】
おびにみじかしたすきにながし
【意味】
物事が中途半端で、どの目的にも合わず、役に立たないことのたとえ。問題を解決するための手だてや人材などが、適切でない場合にも用いる。


【英語】
・be good for neither one thing nor the other(どちらにも役に立たない)
【類義語】
・長し短し(ながしみじかし)
【対義語】
・適材適所(てきざいてきしょ)
「帯に短し襷に長し」の語源・由来
「帯に短し襷に長し」は、中国の古い故事に由来する言葉ではなく、日本の暮らしの中から生まれたことわざです。帯は和服を着るときに腰に巻いて用いる布であり、襷(たすき)は和服の袖や袂(たもと)がじゃまにならないようにたくし上げるためのひもです。どちらも布を使いますが、必要とされる長さや使い道が違うため、一枚の布が帯には短く、襷には長すぎるなら、どちらにも向かないものになります。
このことわざの考え方は、まず具体的な「布の長さ」の不都合から出ています。布そのものに価値がないのではなく、目的に合わない長さであるため、帯としても襷としても使いにくいというところが大切です。そこから、物事が中途半端で、せっかくの材料・方法・人材などが役に立ちにくいという意味へ広がりました。
古い用例としては、『削かけ』(1713年・江戸時代中期の雑俳)に「何にせう・帯にゃみじかしまはしにゃ長し」という形が出てきます。「何にせう」は「何にしようか」という迷いを表し、ここでは現在の「襷」ではなく「まはし」が用いられています。つまり、ある布を前にして、帯には短く、まわしには長いので、どう使えばよいか決められないという、生活に根ざした場面がもとになっています。
この用例が載る雑俳(ざっぱい)は、江戸時代中期に流行した遊戯的な俳諧の一種です。日常の言葉遊びや世間の感覚を取り入れやすい形式だったため、「帯には短いが、別の用途には長すぎる」という身近な不便さが、短い句として受け入れられたと考えられます。
その後、「帯に短し襷に長し」という形が広まりました。古い形には「帯に短しまわしに長し」もあり、また「長し短し」という短い異形も伝わっています。いずれも、長さがどちらか一方に合えば使えるのに、その中間であるために使い道が定まらない、という考え方を共有しています。
現在の形で「襷」が用いられるようになると、意味がさらに分かりやすくなりました。帯は腰に巻くためにある程度の長さが必要で、襷は袖をまとめるためのひもです。二つの用途を対にすることで、「どちらにも合わない中途半端さ」が目に浮かびやすくなっています。
このことわざは、単に「短い」「長い」という長さの話にとどまりません。たとえば、会場が大人数には狭く少人数には広すぎる、予算が本格的な計画には足りず簡単な案には多すぎる、人材がある仕事には経験不足で別の仕事には専門的すぎる、というような場合にも用いられます。具体的な布の不便さから、条件がぴったり合わないもどかしさを表す言葉へと定着したことわざです。
「帯に短し襷に長し」の使い方




「帯に短し襷に長し」の例文
- 会議室は十人で使うには広すぎるが、全員集会には狭すぎて、帯に短し襷に長しだった。
- このかばんは教科書を入れるには小さく、財布だけを持つには大きすぎて、帯に短し襷に長しだ。
- 候補地は駅から近いが面積が足りず、倉庫としては広すぎるため、帯に短し襷に長しとなった。
- 新しい案は費用を抑えられるが効果が弱く、本格的な対策としては不十分で、帯に短し襷に長しだ。
- その選手は守備には速さが足りず、攻撃では決定力が足りないため、今の作戦では帯に短し襷に長しだった。
- 家にあった箱は、贈り物を入れるには浅く、小物入れにするには深すぎて、帯に短し襷に長しだった。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・Cambridge University Press & Assessment『Cambridge Dictionary』。























