【ことわざ】
当て事と越中褌は向こうから外れる
【読み方】
あてごととえっちゅうふんどしはむこうからはずれる
【意味】
こちらが当てにしていることは、先方の都合でだめになりやすい、というたとえ。


【英語】
・Don’t count your chickens before they hatch(まだ確かでないことを、もう決まったように当てにするな)
【類義語】
・当て事は向こうから外れる(あてごとはむこうからはずれる)
・取らぬ狸の皮算用(とらぬたぬきのかわざんよう)
「当て事と越中褌は向こうから外れる」の語源・由来
「当て事」は、当てにしていること、心の中で期待して頼りにしていることを指します。「当て」には、見込みや頼りという意味があり、このことわざでは、自分の側で都合よく期待している事柄を表します。
「越中褌」は褌の一種です。褌には六尺褌、越中褌、もっこ褌などの種類があり、越中褌は布に紐を通してT字形にし、腰に当てて紐を前で結び、布を股の間に通して前へ垂らして着ける形です。
この形では、前に垂らした布が紐の下から外れる様子を連想しやすくなります。そこで、身体の前方から越中褌が外れることと、こちらが当てにしていたことが相手側の都合で外れることとを重ね、少しおかしみをこめて言い表したのが、このことわざです。
同じ考え方を表す形として、「当事と越中褌は向こうから外れる」や、「当て事と畚褌(もっこふんどし)は先から外れる」もあります。「当事」はここでは「あてこと」と読まれる形で、「畚褌」は越中褌と並ぶ褌の名です。表記や言い回しには違いがありますが、いずれも、当てにしていたことは先方の都合でだめになりやすい、という同じ筋の意味をもっています。
越中褌そのものは、布が少なくてすむという実用面もあり、並幅の晒木綿を用いて作るものとして説明されます。生活の中で褌が身近だった時代には、この具体的な下着の形を使ったたとえが、すぐに分かる笑いとして通じたと考えられます。
明治25年ごろの河鍋暁斎の『狂斎百図(きょうさいひゃくず)』には、「当て事と越中褌」を含む画題が出ています。『狂斎百図』は、古くからのたとえやことわざ、決まり文句を題材にした戯画を集めた作品で、このことわざが、言葉だけでなく絵の題材としても受け止められていたことが分かります。
また、昭和39年の古今亭志ん生『びんぼう自慢』にも、思惑や褌は外れやすいという趣旨の用例があります。ここでは、ことわざそのものを一字一句そのまま述べるというより、当てにしていた見込みが外れることと褌が外れることを結びつける発想が、話芸の中でも生きていたことを示しています。
現在では、褌を日常的に締める習慣が少なくなったため、「越中褌」という言葉だけではすぐに形を思い浮かべにくくなっています。それでも、このことわざの中心にある「相手の都合まで自分の期待通りには動かない」という教訓は、約束、予定、仕事、貸し借りなど、今の生活にもよく当てはまります。
「当て事と越中褌は向こうから外れる」の使い方




「当て事と越中褌は向こうから外れる」の例文
- 合宿のバスを友人の家に頼むつもりだったが、当て事と越中褌は向こうから外れるので、予備の交通手段も調べておいた。
- 町内会の備品を借りられると決めつけた計画は、当て事と越中褌は向こうから外れるという通り、先方の予定で変更になった。
- 父の車を使えると思って遠出の約束をしたが、当て事と越中褌は向こうから外れるで、父に急な仕事が入った。
- 取引先からの返事を前提に仕事を進めすぎるのは、当て事と越中褌は向こうから外れるというものだ。
- 当て事と越中褌は向こうから外れるから、借りる予定の会議室が使えない場合の候補も押さえておく。
- 祖母は、親戚の手伝いを初めから当てにしすぎると、当て事と越中褌は向こうから外れると戒めた。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・小学館『日本大百科全書』小学館、1994年。
・河鍋暁斎『狂斎百図』大倉版、明治25年頃。
・河鍋狂斎画、宮尾與男・宮尾慈良著『近世戯画集「狂齋百圖」を読む』東京堂出版、2016年。
・古今亭志ん生『びんぼう自慢』毎日新聞社、1964年。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster。























