『中庸』は、中国古代の儒学の経書で、「四書」の一つとして知られます。もともとは『礼記』の中の一篇であり、子思の著作と伝えられていますが、成立や作者に関しては諸説存在しています。
概念としての「中庸」は、儒教の中心的な考え方として重視されてきました。
『論語』において孔子は「中庸の徳たるや、それ至れるかな」と賛嘆しましたが、その後段では、この過不足なく偏りのない徳は、修得者が少ないとも言及しています。
古代ギリシャでは、アリストテレスの「メソテース」に相当する考えとして尊重されており、仏教の中道との関連性も指摘されることがありますが、両者は異なる概念であるとの意見もあります。
文献としての『中庸』には、多くの学者や政治家が注釈を加えてきました。特に、宋代の学者朱熹は『中庸章句』を作成し、その後の儒教学で『中庸』は『大学』の後に続き、最も深く読むべき経書と位置づけられました。
『中庸』の主要なテーマは、天人合一の真理と、中庸の誠の域に至る修養法についての説明です。