墨子は、中国の戦国時代の思想家で、名は翟(てき)といい、墨家の始祖とされます。
彼は「兼愛交利」という考えを提唱し、これは血縁にとらわれない普遍的な愛や相互扶助を意味します。また、墨子は礼楽を無用の消費と考え、これを排斥しました。その上で、節倹勤労の大切さを強調し、儒家とは異なる立場をとりました。
「墨子」という名前は、墨翟とその門下の学説をまとめた書籍の名称としても知られています。現存するこの書籍は15巻53編から成り立っており、主要な論説としては「尚賢」「兼愛」「非攻」「節用」「節葬」「天志」「明鬼」「非楽」などがあります。
この中で、同じ主題を3編持つものは、学派や成立時期の違いによるテキストの相違が考えられています。また、書籍の中には論理を説明する部分や、城の建築や敵の迎撃方法に関する部分も含まれており、墨家学派の活動を伝える貴重な史料となっています。