『孝経』は、中国の経書で、十三経の一つとされる重要な文献です。
この経書は1巻から成り立っており、孔子とその弟子である曽子が儒教の重要概念「孝」について問答する形式を取っています。この問答を曽子の門人が記述したと言われています。
『孝経』は主に孝道を理論的根拠とし、封建社会の家族中心の道徳を説くものです。
ここでの「孝」は、徳の根本として位置づけられ、天子から庶民までのすべての階層での行動原理とされています。この孝経は、中国古代の道徳や倫理の普及に大きく寄与してきました。
テキストには「古文孝経」と「今文孝経」という二つの系統が存在しています。古文孝経は、漆書蝌蚪の古文字で書かれたもので、今文孝経は漢代通用の隷書で記されています。
今文孝経は18章から構成されており、古文孝経は22章からなるものです。
作者については複数の説が存在します。孔子本人の作とする説、曽子を作者とする説、さらには曽子の門人を作者とする説など、多くの解釈がなされています。
何れにせよ、この経書は中国の歴史や文化において、そして日本を含む多くの国々での精神形成に大きな影響を与えてきたのは間違いありません。