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誤用・間違えやすいことわざ慣用句

間違えやすいことわざと慣用句

ちょっと気のきいたことを言おうとして、ことわざ慣用句を使っても、肝心の用法が間違っていたのでは、恥をかくだけでなく、相手に真意が伝わらない心配も出て来ます。

今回の記事では、誤用や間違えやすいことわざと慣用句をわかりやすく解説しています。

読みが同じだったり形が似ていたりして、書くときにまちがいやすい四字熟語は「間違えやすい四字熟語一覧」をご覧ください。

ビジネスや冠婚葬祭の場、そして毎日のお付き合いにご活用ください。

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目次

「あ行」の誤用・間違いやすいことわざと慣用句

愛想

❌誰にでも愛想を振りまく
◯愛想を言う

「振りまく」のは「愛嬌」で、「愛想」は「言う」ものです。愛想も愛嬌も「人当たりの良い愛らしさ、好意のあらわれ」で同義ですが、後に続く動詞を使い分けます。

合いの手

❌話に合いの手を打つ
◯合いの手を入れる

「相槌を打つ」と混同した誤用です。「合いの手」は歌や演奏に合わせて入れる手拍子がもとの意味ですので、「入れる」が正しい表現です。

明るみ

❌汚職が明るみになる
◯明るみに出る

「明るみ」は「明るいところ」から転じて「公の場」という意味なので、この場合は「出る」が正しい表現です。「なる」を使うなら、「明らかになる」とします。

揚げ足

❌揚げ足をすくう
◯揚げ足をとる

相手の話の言葉じりをとらえて非難がましいことを言うのは「揚げ足をとる」です。「揚げ足」は「蹴ろうとしてあげた足」のことだから、「すくう」のではなく「とる」になります。「すくう」は「思わぬところで足をすくわれた」などと使います。

あごが落ちる

❌あごが落ちるほど大笑いする
◯あごが落ちるほどおいしい

「あごが落ちる」は、とびきりおいしいものを食べた時に使う表現です。

圧倒的

❌圧倒的な大敗を喫した
◯圧倒的な勝利をおさめた

「圧倒的」はほかを圧倒するのだから、敗けてしまっては意味を成しません。同じように「圧倒的に弱い」も誤りで、「圧倒的に強い」が正しい表現です。

蟻の這い出る隙間もない

❌蟻の入る隙間もない警備
◯蟻の這い出る隙間もない

「這い出る」が正解。類義語の「水を漏らさぬ」が「水も入らぬ」ではないのと同じです。

怒り心頭

❌怒り心頭に達した
◯怒り心頭に発した

「心頭」は「あたま」ではありません。「心頭を滅却すれば火もまた涼し」のことわざでも分かるように、「精神=こころ」のことです。だから怒りは「あたまに達する」のではなく「こころに発する」です。

息の根を止める

❌あの会社は銀行に見放されて完全に息の音を止められた
◯息のを止める

これは「息をする音を止める」ではありません。「息の根元を止める」です。

異彩を放つ

❌彼は偉才を放っていた
異彩を放つ

「偉大な才能を周囲に放つ」という言い方は誤用です。才能は「放つ」ものではなく「持つ」ものです。「異彩を放つ」が正しい表現です。

痛くもない腹をさぐられる

❌痛い腹をさぐられて迷惑する
痛くもない腹をさぐられる

「何も悪いことをしていないのにあらぬ疑いをかけられる」ことを「痛くもない腹をさぐられる」と言います。

一縷の望み/一抹の不安

❌一抹の希望を抱く
◯一縷の望み/一抹の不安

「一抹」は「絵筆でサッとなすった程度」つまり「ほんの少し」。だから「一抹の希望」でもよさそうなものだが、一抹には常に「不安」つきまとう。希望だったら「一縷の望み」。「一縷」は「切れそうで切れない一本の細い糸」。「一抹=不安」「一縷=望み」とセットで覚えておきましょう。

一再ならず

❌一切ならずしつこく誘う
◯一ならず

意味を分解すれば「一度や再度でなく」だから、「一再ならず」が正解。

一寸先は闇

❌世の中、一瞬先は闇だ
◯一先は闇

「しゅん」と「すん」では音は似ていても意味は大違いです。

一世一代

❌一生一代の大勝負に出る
◯一一代

「生涯にただ一度きり」という意味だが、この場合の「生涯」は「一生」ではなく、「一生涯」「終生」の意の「一世」を使います。

意に介しない

❌どんな悪口を言われようと意に会しない
◯意にしない

「介する」は「気にかける」。「意に介しない」で「自分がやったり言ったりすることを他人がどう思おうとちっとも気にかけない」の意味です。

悪事が芋づる式

❌人々が芋づる式に次々と倒れた
悪事が芋づる式に明らかになった

芋のつるをズルズルたぐると次々に芋が出てくるように、一つのことがきっかけになって次々と関連する多くのことが現れる様子を言いいます。例文のように将棋倒しのようなイメージで使うのは誤用。また厳密に言えば「次々と」は意味の重複になるので不要です。

いやが上にも

❌祝勝会はいやが応にも盛り上がった
◯いやがにも盛り上がる

「いやが応でも連れて行く」などと使う「いやが応でも」と混同した例です。

引導を渡す

❌責任をとって辞職しろと印籠を渡された
引導を渡す

「印籠」は江戸時代の携帯用薬入れです。この場合、渡すのは印籠ではなく「引導」です。「引導を渡す」は「僧侶が葬儀の際に死者が迷わず成仏できるよう経文を唱える」のが元の意味です。

後ろ髪を引かれる思い

❌後ろ髪を引かれる思いで結局残ることになった
◯後ろ髪を引かれる思いで別れた

未練が残って立ち去りがたい様子を「後ろ髪を引かれる思い」と言いますが、あくまでもこれは未練を残しながらも結局はその思いをふりきって立ち去る時に用います。

薄紙をはぐように

❌薄皮をはぐように快方に向かう
◯薄をはぐように

病気が少しずつよくなっていく様子は「薄紙をはぐように」です。

腕利きの

❌この店には腕よりのコックがいる
◯腕利きのコック

「腕よりのコック」という言葉はありません。「腕がいい」という意味なら「腕利きの」。だが「あのコックは腕が利く」とは言わず、この場合は「腕が立つ」になります。

恨み骨髄に徹す

❌長年の親友を裏切るとは、恨み骨髄に達すだ
◯恨み骨髄に

骨の髄まで恨んでいることは「恨み骨髄に徹す」。

上前をはねる

❌稼ぎの上前をかすめる
◯上前をはねる

「上前」は「上米」から転じた言葉で、仲介者の手数料のことです。「上前をはねる」というのが成句で、「上前をかすめる」とは言いません。

笑みがこぼれる

❌思わず笑顔がこぼれた
笑みがこぼれる

こぼれるのは、笑顔に至る過程の「笑み」です。この「笑み」は「微笑」のことです。

縁は異なもの

❌こんな所で君とめぐり逢えるなんて、縁は奇なものだ
◯縁はなもの

思いがけず知人にばったり合った時、「奇遇ですね」などと言うので、そこから来た誤用です。

おうむ返し

❌彼はおうむ返しに文句を言うばかりだ
◯おうむ返しに繰り返す

「君は間違っているよ」「間違っていますね」「反省すべきだ」「反省すべきですね」。これが「おうむ返し」であり、文句を言っていることにはなりません。おうむのように相手と同じ言葉を繰り返すのが「おうむ返し」です。

大見得を切る

❌任せておけと大見栄を切った
◯大見得を切る

「見栄を張る」という類似の表現にひきずられた間違いです。これは、歌舞伎などで感情の高ぶりを表現するために役者が大げさな身振りを一瞬固定する「見得」から来た言葉なので、自信のほどを強調したいなら「大見得を切る」が正しいです。

屋上屋を架す

❌これ以上言うと屋上屋を重ねることになる
◯屋上屋を架す

屋根の上にまた屋根を架けるように、同じようなことを繰り返して言ったり無駄なことをやったりすることです。「重ねる」でも意味は通じますが、慣用句としては「架す」が正しいです。

臆病風に吹かれる/臆病神につかれる

❌いざやるとなると臆病神に吹かれる
◯臆病に吹かれる/臆病神につかれる

「臆病神」を使うなら「吹かれる」とは言いません。「つかえる」です。

押し出しがよい、押し出しが立派だ/押しが強い

❌あの政治家は押し出しが強い
◯押し出しがよい、押し出しが立派だ/押しが強い

ここで言う「押し出し」は人前に出た時の態度や風采のことです。この場合「よい」か「立派だ」を使います。

思いもよらない

❌思いもつかない展開になる
◯思いもよらない

「思いつかない」という言葉はありますが、「思いもつかない」とは言いません。「思いがけない」「予想もつかない」という意味を表したいのなら、「思いもよらない」が正解です。

女手一つ

❌母は女手一人で私を育ててくれた
◯女手一つ

「女の手」は「一人」とは数えません。「一つ」です。女性一人で何かを成し遂げることです。

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「か行」の誤用・間違いやすいことわざと慣用句

快哉を叫ぶ/喝采を送る

❌ひいきチームの勝利に喝采を叫ぶ
◯快哉を叫ぶ/喝采を送る

「いいぞ!」「よっ大統領!」などと送る声援が「喝采」です。これは「喝采を送る」「喝采をする」などと使います。「叫ぶ」のは「快哉」の方です。

かいま見る

❌人の好さをかいま見せる
◯かいま見る

「かいま見る」は「垣間見る」で、「垣根などのすき間からそっと見る」。あくまでも主体は「見る」ほうで「見せる」ほうではないので、「かいま見せる」は誤用です。

刀折れ矢尽きる

❌倒産だけは免れようと奔走したが、矢折れ刀尽きた
折れ尽きる

折れて使いものにならないのは一本の「刀」で、尽きてしまうのは何本もある「矢」のほうです。

片棒をかつぐ

❌経営の肩棒をかつぐ
棒をかつぐ

この「片棒」は駕籠の片方の棒のことです。肩にかつぐからと言って「肩棒」とは言いません。「片棒をかつぐ」は文字通り協力して何かをすることを言います。多くは悪事に関して使うことばです。

鼎の軽重を問う

❌首相は国民から鼎を問われている
◯鼎の軽重を問う

「鼎の軽重を問う」とは、楚の荘王が周の定王に、周王室に伝わる九鼎という宝物の大小・軽重を訪ねたという故事から、統治者の実力を疑ってかかったり、あるいはその地位を覆そうとすることを言います。「鼎を問う」とは言いません。

枯れ木も山の賑わい

❌枯れ木も山の賑わいだから、集会に出てくれよ
◯枯れ木も山の賑わいだから、集会に出させてもらうよ

「枯れ木も山の賑わい」は「つまらないものでも頭数に加えておけばないよりはまし」の意です。自分からへりくだって言うのならまだしも、相手に使うのは非常に失礼な表現です。

寒心に耐えない

❌あの事件は感心に堪えない
寒心えない

「感動を表に出すまいと思っても出てしまう、それくらい深く感動する」という意味の「感に堪えない」と混同して用いた例です。今回の場合は、もうこれ以上耐えられないほど恐れおののくので、「寒心に耐えない」となります。

雉も鳴かずば撃たれまい

❌「雉も飛ばずば撃たれまい」なのに、君のひとことでぶちこわしだ
◯雉も鳴かずば撃たれまい

「雉も鳴かなければどこにいるか分からず、矢で射られることもなかっただろう」というのがもとの意味です。余計なことを「する」のではなく「言う」のだから「飛ぶ」ではなく「鳴く」です。

機先を制する

❌相手チームの気勢を制してシュートを決めた
機先を制する

気勢は「意気込んだ気持ち」のことで、「気勢を上げる」「気勢が殺がれる」などとは使いますが、「気勢を制する」とは言いません。「機先を制する」が正しいです。

木で鼻をくくる

❌木で花をくくったような返答
◯木でをくくる

そっけなく、つっけんどんな態度のことを言いますが、木でくくるのは「鼻」です。

キャスティングボートを握る

❌政権奪取へのキャスティングボードを握る
◯キャスティングボートを握る

新聞などでよく使われる表現です。「キャスティングボート」とは、議会の採決で賛成・反対同数の場合に議長に委ねられる決裁権、もしくは同じく議会で二大勢力が均衡している場合に議決を左右する第三勢力の投票のことです。つまり「キャスティングボートを握った」とは自らの判断による行動しだいで大勢が決まる状況になったことを言います。

鳩首凝議する

❌経営陣が鳩首を集めて協議する
◯鳩首凝議する

「鳩」には「集める」という意味がすでに含まれています。人々が雁首揃えて相談するのは「鳩首凝議する」です。「協議」ではなく「凝議」であるところに注意です。

極めつき

❌極めつけの名場面
◯極めつき

「極めつけ」という言葉はありません。これは「極め+付き」です。「極め」は「極書」つまり鑑定書。鑑定書が付くほど定評がある、というわけです。

櫛の歯が欠ける

❌櫛の歯が抜けるように人がいなくなる
◯櫛の歯が欠ける

木やプラスチックでできた櫛の歯を「抜こう」と思っても中々抜けるものではありません。「欠ける」が正解です。

口火を切る

❌私が議論の口火をつけた
◯口火を切る

これは、ガスの口火をつける、などと言うことから生じた誤用です。物事が始まるきっかけをほかに先駆けてつくるのは「口火を切る」が正解です。

苦にもせず、苦もなく

❌それを苦ともせずやり遂げた
苦にもせず苦もなく

「苦」のつく慣用句は、「病気は苦にして〇〇」などの「苦にする」や、「老親の介護が苦になってきた」などの「苦になる」。否定形なら「苦にもせず」か「苦もなく」で、「苦ともせず」という言い方はありません。

首っ引きで

❌辞書と首ったけで勉強する
◯首っ引き

「首ったけ」は「あのコに首ったけ」などと、熱愛中の時に使う表現です。今回の場合では「首っ引き」が正しいです。

逆鱗に触れる

❌その一言が琴線に触れたのか、怒鳴りつけられた
逆鱗に触れる

「琴線」は「心の奥の琴の糸」つまり、そこに触れると心の底から美しい雅楽のような感情がわき上がってくる「感動のツボ」みたいなものです。「激怒のツボ」は「逆鱗」のほうです。

けりをつける

❌離婚話に蹴りをつけた
けりをつける

この場合の「けり」は古語の過去を表す助動詞「けり」から来ていて、和歌や物語など「けり」で終わることが多いことから、物事の終わり、結末のことです。

後悔する

❌怠けていると後で後悔するぞ
◯怠けていると後悔する

「馬から落ちて落馬した」「白い白馬」などと同様の誤り。話し言葉ではこの種の誤りが多いから注意したいですね。

ご自愛ください

❌時節柄、お体をご自愛ください
◯時節柄、ご自愛ください

手紙の末尾によく使われる表現ですが、「慈愛」は「自分の体を大切にする」ことなので、「お体を」はいりません。

五十歩百歩

❌どの候補作も五十歩百歩で入賞を絞るにしのびない
◯五十歩百歩で入賞の水準に達していない

優れたものどうしではなく凡庸なものどうし、もしくは劣ったものどうしについて使います。

ご多分に漏れず

❌ご多聞(ご他聞)に漏れず、わが社も不況で青息吐息だ
◯ご多に漏れず

「ご多分に漏れず」となります。「他で聞かれるように」とか「多く聞かれるように」ではありません。

言葉を濁す

❌私が問い詰めたら彼は口を濁した
言葉を濁す

「濁す」は「うやむやにする」「曖昧にする」の意味なので、「口」ではなく「言葉」です。この場合に「口」の慣用句を使うなら、「口が重くなった」とすれば近い意味になります。

衣の下から鎧がちらつく

❌穏健派に見えても鎧の下から衣がちらついている
衣の下からがちらつく

鎧の下から衣がちらついてだらしないとか寒がりといった意味ではありません。これはあべこべで、衣の下に鎧を着けています。

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「さ行」の誤用・間違いやすいことわざと慣用句

財布の底をはたく

❌財布をはたいて手に入れる
◯財布のをはたく

財布そのものをはたいても「有り金全部使い果たす」の意味にはなりません。財布を逆さにして「底」をはたくから中の金が全部出ていき、すっからかんになってしまうのです。

杯を交わす/酌み交わす

❌旧友と酒を飲み交わす
を交わす/み交わす

「飲み交わす」という表現はありません。「交わす」つまり「かわりばんごにする」行為は「杯をさしだすこと」です。

歯牙にもかけない

❌そんな難題はとても歯牙にかけられない
◯あんな奴など歯牙にもかけない/そんな難題はとても歯が立たない

「歯牙にもかけない」は「まったく問題にしない」「無視する」という意味なので例文の用法は誤りです。

下にも置かぬ

❌来客は下にも置かぬ扱いに耐えた
◯下にも置かぬもてなしを受けた

「下にも置かぬ」は「丁寧にもてなして下座に置かず」の意味です。ですので例文は誤りです。

始末に負えない

❌あの子のいたずら好きは始末に終えない
◯始末にえない

始末に困る、始末するのに負担が大きすぎる、という意味なので「負えない」を使います。

愁眉を開く

❌愁眉を開いてうちあける
◯解決策が見つかり愁眉を開く

「愁眉を開く」は「愁い(憂い)のためにひそめた眉がパッと明るく開かれる」で、要するに心配事が解消されて明るい気分になることです。例文は「心中をうちあける」という意味なので「胸襟を開く」が正解になります。

珠玉の

❌知られざる珠玉の大作
◯珠玉の佳品

「珠玉の」は「真珠や宝石のように粒は小さいが大変価値の高い」の意味なので「大作」の形容詞にはなりません。地味で控えめだけれどキラリと光る「佳品」か「佳作」とすべきです。

出藍の誉れ

❌いいお子さんに恵まれて、出藍の誉れですね
◯親方には手の届かなかった横綱に弟子が昇進するとは出藍の誉れだ

「出藍の誉れ」は「青は藍より出でて藍より青し」のことわざから来た言葉で、弟子や生徒や子供の方が師匠や先生や親よりも優れていることを表します。

将棋を指す

❌将棋でも打ちましょうか
◯将棋を指す

「打つ」のは碁で、将棋は「指す」です。

食指が動く

❌良書だからと薦められたが堅苦しそうで食指が伸びない
◯食指が動く

「食指」は人差し指のこと。「人差し指が動くのはご馳走にありつく前兆」という故事が由来なので「食指が動く」となります。例文は「手に入れようとする」の「触手を伸ばす」との混同です。

白羽の矢

❌次期総裁にと白羽の矢が当たる
◯白羽の矢が立つ

神への人身御供に選ばれた少女の家の屋根には白羽の矢を立てるという伝説が由来なので「当てる」ではなく「立てる」です。

尻の持って行き場

❌自業自得なので足の持って行き場がない
の持って行き場

不平不満があっても、文句の持って行き場がないことを「尻の持って行き場がない」と言います。

身命を賭して

❌身命を投じて経営再建をはかる
◯身命をして

「命に賭けても」「命を賭ける覚悟で」だから「身命を賭して」です。

砂をかむような味気なさ

❌砂をかむような苦しみ
◯砂をかむような味気なさ

「味がない」ほうに着目したことわざです。「砂をかむような味気なさ」でワンフレーズです。

寸暇を惜しんで

❌寸暇を惜しまず研究する
◯寸暇を惜しんで

この「惜しむ」は「手放したものを名残惜しく思う」ではなく「大事にする」「尊重する」です。だから否定形ではなく肯定形で使います。「少しの暇も大事にして」=「暇が少しでもあったらその時間も費やして」すなわち「寸暇を惜しんで」が正解です。

青天の霹靂

❌いきなり転勤とは晴天の霹靂だ
天の霹靂

「霹靂」は「突如として響く雷鳴」のことです。「一天にわかにかき曇り」のイメージ通りに「青天の霹靂」が正しいです。

是が非でも

❌この法案は是が否でも通さなければならない
◯是がでも

「是」は「道理にかなったこと」「良いこと」です。その反対は「否」ではなく「非」です。だから「是が非でも」で「良し悪しにかかわらず」「ぜひとも」の意味になります。

雪辱する/屈辱を晴らす

❌次の試合で雪辱を晴らそう
◯雪辱する/屈辱を晴らす

「雪辱」は「前に負けた相手に勝つ」ことなので、「雪辱を晴らす」のは間違いです。雪辱はそのまま「雪辱する」と使います。

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「た行」の誤用・間違いやすいことわざと慣用句

体調をくずす

❌体調をこわしたので会社を休んだ
◯体調をくずす/体をこわす

「体調」は「体の調子」。「調子をくずす」というので「体調」は「くずす」が正解です。「こわす」を使うなら「体をこわす」です。

高嶺の花

❌彼女は僕には高値の花だ
◯高の花

「高い嶺」つまり手が届かないくらい高いところにあってただ眺めているしかない、という意味です。

他山の石

❌先輩を他山の石として頑張ります
◯人の失敗を見て他山の石とする

「他山の石」は「反面教師」の意味に近いことわざです。もともとは「他山の石を以て玉を攻むべし」。「よその山から出た粗悪な石でも自分の宝石を磨く役には立つ」という意味です。つまり他人を「石」、自分を「宝石」にたとえて、取るに足らない人の劣った言動でも自分の知恵を磨くためには何らかの参考になる、ということです。

立つ鳥跡を濁さず

❌飛ぶ鳥後を濁さず引退する
立つを濁さず

「立ち去る者は後に残る者に迷惑をかけず、見苦しくないように後始末をするべきだ」という意味です。「後」ではなく「跡」であることも間違えやすいので注意です。

達筆

❌あの人は筆が立つから題字を頼もう
達筆だから/能筆だから

「筆が立つ」は「文章がうまい」の意。「字がうまい」は「能筆」もしくは「達筆」。「達筆」は「達筆すぎて読めない」などとも使います。

取りつく島もない

❌お高くとまっていて取りつく暇もない
◯取りつくもない

「取りつく」は「取りすがる」「すがりつく」。相手が忙しそうにしていて取りすがる暇もない、という意味ではありません。溺れそうになっても頼りにして取りすがる島一つ見当たらない。つまり、何か頼みごとをしたり説得しようとしても、相手がしれっとしてつっけんどんな態度だったり、聞く耳を持たなかったりして、どのきっかけが中々つかめないような時に使うことわざです。

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「な行」の誤用・間違いやすいことわざと慣用句

泣く子と地頭には勝てぬ

❌彼の頑固ぶりには、まったく泣くこと地蔵には勝てぬだ
◯泣く子と地頭には勝てぬ

「地頭」は中世の荘園の管理者。泣き叫ぶばかりの子供みたいな聞き分けのない者と、絶大な権力者には手が出ない、という意味です。

情けは人のためならず

❌助けてやろうと思ったが、情けは人のためならずというから、やめた
◯情けは人のためならずというから、助けてやった

このことわざを「むやみに情けをかけると甘ったれてしまうからその人のためにならない」と解釈するのは誤りです。「情けは他人のためにかけるものではない」が正解です。つまり、「人に情けをかけておけばそのうち自分にも良い報いがある」ということです。

梨の礫

❌いくら催促の手紙を出しても無しの礫だ
の礫

これは「無し」と「梨」の語呂合わせです。「礫」は「小石を投げること」または「投げた小石」です。投げた小石は戻ってこないことから、便りを出した先方からいっこうに返事が来ない時に使います。

故郷に錦を飾る

❌都心に自社ビルを建て、社長として錦を飾る
故郷に錦を飾る

「錦を飾る」は「成功をおさめて故郷に帰る」。必ず「故郷に錦を飾る」とフルセットで使うので、例文は誤りです。

二の句が継げない

❌あまりの暴言に二の矢が継げなかった
◯二のが継げない

例文の「二の矢が継げない」は、二度目の矢が打てない=二度目に打つ手がない時に使います。この場合は、相手の発言に対して驚いたり呆れたりして言うべき言葉が出て来ない様子を表す「二の句が継げない」が正解です。

二の舞を演じる

❌左遷された前任者の二の舞を踏むわけにはいかない
◯二の舞を演じる

例文は「二の足を踏む」との混同です。「二の舞」は舞楽で「案摩の舞」の後にそれを真似てわざと失敗しながら滑稽に舞ってみせる舞のことです。だから「二の舞を演じる」で「前の人と同じ失敗を再び繰り返す」ことになるのです。

濡れ手で粟

❌濡れ手で泡のぼろ儲け
◯濡れ手で

黄色い粟の実は小粒で軽く、濡れた手を突っ込んだだけでたくさんひっついてきます。だから苦労もせずに得をすることを「濡れ手で粟」といいます。

念頭に置く

❌このことを念頭に入れてくれたまえ
◯念頭に置く

「念頭」は「胸のうち」。心のファイルの一番手前に置いていつでも取り出せるようにしておく、というニュアンスなので「入れる」ではなく「置く」が正解です。

伸るか反るか

❌乗るか反るか、一発勝負に出てみよう
か反るか

吉と出るか凶と出るか運を天に任せて思い切ってやってみる様子を表します。「伸る」とは「長く伸びる」のことで、「反る」は反対側にそり返ることです。「成功するか」「失敗するか」の意。

「は行」の誤用・間違いやすいことわざと慣用句

働きづめ

❌母は生涯、働きずくめだった
◯働きづめ

「〜ずくめ」は名詞の後について「〜ばかり」の意味を表し、「いいことずくめ」などと使います。例文のように動詞の後につけて「〜しているばかり」の意味を表すなら、「〜づめ」が正解です。

鼻息が荒い

❌久々の目標達成に鼻息も荒く祝杯をあげた
◯目標達成のために鼻息も荒く突き進んだ

「鼻息が荒い」は、何か事を成し遂げようとして意気込み激しく鼻の穴をふくらまし気負っている様子を表します。したがって例文のように「完遂後」に使う表現ではありません。

鼻もひっかけない

❌彼女は僕なんか鼻にかけないよ
◯鼻もひっかけない

「相手にしない」「無視する」は「鼻もひっかけない」です。「鼻にかける」は、自慢たらしく得意げな様子を表す慣用句なので、例文の用法では意味が通じません。

歯に衣着せない

❌歯に絹着せない批判
◯歯に着せない

この「きぬ」は「絹」ではなく、衣摺(きぬず)れの「衣」です。歯に衣を着せたらものが言いにくくて仕方ないが、そんなことをせずに「ズバリ言いたいことを言う」という意味です。

半畳を入れる

❌君が半畳を入れてくれたおかげで、間が保てたよ
◯そうちょいちょい半畳を入れられては、調子が狂うよ

「半畳を入れる」は、「話の途中でちゃかす、からかう」ということわざです。江戸時代の芝居小屋における観客のブーイングは、座布団がわりの半畳のゴザを舞台に向かって投げ入れることでした。この伝統が唯一残っているのは、相撲の世界です。結びの一番で番狂わせが起こった時に舞う座布団です。

悲喜こもごも

❌合格発表の光景は悲喜こもごもだ
◯人生は悲喜こもごもだ

「悲喜こもごも」は、「悲しんでいる人もいれば喜んでいる人もいる」という意味ではありません。「一人の人間の中で悲しむこともあれば喜ぶこともある」という意味です。「こもごも」は「かわるがわる」の意。例文のように、入試の合否や選挙の落選の光景などにこの表現を使うのはふさわしくありません。

人目を引く

❌人目をそばだてる服装
◯人目を引く

「音の聞こえる方へ耳を傾けて聞き取ろうとする」の「耳をそばだてる」と混同した誤用例です。

瓢簞から駒が出る

❌棚から牡丹餅で、私の奇想天外な提案が採用されてしまった
瓢簞から駒が出て、私の奇想天外な提案が採用されてしまった

例文では「冗談半分で言ったことが実現する」あるいは「思いもよらないことが現実になる」の意の「瓢簞から駒が出る」を使うべきです。この場合はそれが「思いがけない好運」かどうかは分からないので「棚ぼた」ではありません。

火を見るより明らか

❌彼が勝つのは火を見るより明らかだ
◯彼が負けるのは火を見るより明らかだ

「疑いをさしはさむ余地がない」という意味の「火を見るより明らか」は、「吉」ではなく、どちらかといえば「凶」と出る結果の時に使う表現です。「対策の立てようがないのは火を見るより明らかだ」などとも使います。

二つ返事

❌一つ返事で引き受ける
二つ返事で引き受ける

よくある誤用です。「二つ返事で」=「即座に快く承知して」と頭にいれておきましょう。

物議を醸す

❌彼の発言は物議を呼んだ
◯物議を醸した/論議を呼んだ

「物議」は「世間の評議」「人々の議論」です。「物議を醸す」で「世間の人々の間に議論を引き起こす」という意味です。

下手の考え休むに似たり

❌僕に期待されても、下手な考え休みに似たりですよ
◯下手考え休に似たり

「下手な」ではなく「下手の」です。これは「下手(な人)の考え」の意味です。「下手な」だと上手な考えが浮かぶ余地も残されていますが、この場合は「下手の」で、もともと下手くそな人なので上手な考えなど浮かぶはずがありません。

望外

❌ファンレターに肉筆の返事が来て法外の喜びだ
望外の喜び

「法外」は「法律に外れる」すなわち理屈や常識に合わない並外れたとんでもないことに対して使います。「法外な値段」など。例文の場合は「望みもしなかった」「望んだ以上」なので「望外」が正解です。

 

「ま行」の誤用・間違いやすいことわざと慣用句

馬子にも衣装

❌孫にも衣装、よく似合っている
馬子にも衣装、彼でさえも引き立っている

この「まご」は「馬子」。馬の子どもではなく、いわゆる昔の「馬追い」のことです。馬をひいて人や荷物を運ぶ人です。

的を射る

❌的を得た表現
◯的を

間違えやすい誤用です。「的」は「標的」のことです。「標的を弓矢で射たように核心に迫っている、要点をついている」という意味なので「的を射る」となります。

まなじりを決して

❌まなじりをつりあげて戦いにいどむ
◯まなじりを決して

「まなじり」は「目じり」のことです。「まなじりを決して」は「カッと目を見開いて」という意味です。

三日にあげず

❌三日とあけず通いつめる
◯三日あげず

「あげず」は「間を空けず」です。「三日にあげず」で、「毎日のように」。例文の「三日とあけず」は「三日と空けず」と漢字で書けば表現としては成り立ちます。慣用句として使うなら、「と」ではなく「に」が正しいです。

耳にとどめる

❌彼の言うことを頭にとどめる
にとどめる

この「とどめる」は「注意をそこに集中させる」という意味です。したがって「よく聞いておく」の意味で「耳にとどめる」が正解です。

胸三寸

❌どうするかは君の胸先三寸だ
三寸

「口先だけ」の意味の「舌先三寸」と取り違えた例です。「胸三寸」は「胸の中の考え」。「君の胸三寸だ」と言えば、どうするかは君の考え次第、ということです。

目端が利く

❌最高値で売り抜けるとは、目鼻がきく奴だ
◯目がきく

状況判断が素早く抜け目ないことは「目端がきく」です。「目鼻がきく」とは言いません。

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「や・ら・わ行」の誤用・間違いやすいことわざと慣用句

役不足

❌この重大な任務は彼には役不足だ
◯こんな簡単な仕事は彼には役不足だ/この重大な任務は彼には力不足

「役不足」という表現は、本来その人が持っている能力や力量に比べて役目が軽すぎる時に使います。役が足りないからもっと重い役を、というわけです。例文の場合は「役」ではなく「力」が足りないのだから「力不足」です。

焼けぼっくい

❌焼けぼっくりに火がついて、また付き合い始めた
◯焼けぼっく

これは「焼け木杭」が正解です。燃えさしの杭はまだくすぶっていて、火がつきやすい。転じて、かつで深い仲にあった者同士が一度別れて、また縁を結ぶことです。

柳に風

❌議論をふっかけたが柳に風と無視された
◯柳に風と受け流す

「柳に風」は、柳の木が風に任せてなびくように、相手の言葉にむやみに逆らわずサラリと巧みにあしらう様子です。それほど悪い意味で使われる表現ではなく、「処世術に長けている」「大人だ」というニュアンスが強いです。

有終の美

❌千秋楽に勝って優秀の美を飾った
有終の美

「手を抜かずに終いまで美しく仕上げる」から「有終の美」です。

横車を押す

❌野党が横車を通して法案が通らなかった
◯横車を押す

車を横にして通せんぼをすることではありません。「横車を押す」は、まるで車を横に押すように道理の通らないことを無理やり押し通すことです。

予防線

❌大役を押し付けられないように予防線を引いておく
◯予防線を張る

「予防線」は「張る」ものです。自分が不利になったり責任を負わされたりするのがいやで、あらかじめ逃げ道をつくっておくことです。

四者入り乱れての

❌四つどもえの場外乱闘
◯四者入り乱れての

「三つどもえ」とは言いますが「四つどもえ」とは言いません。




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