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「情けは人の為ならず」の意味(出典・類義語・対義語)
【ことわざ】
情けは人の為ならず
【読み方】
なさけはひとのためならず
【意味】
人に親切にしておくと、それはめぐりめぐって、やがて自分のためになるのだから、人には親切にしなさいとの教え。
つまり、他人に対する思いやりや親切が、結局は自分に返ってくるということや。これは、日頃から他人への思いやりの心を忘れずにいることの大切さを教えてくれることわざやで。
【出典】
旧五千円札にも描かれた新渡戸稲造が作った詩の一部分。
【類義語】
・思えば思わるる
・積善の家には必ず余慶あり
・人を思うは身を思う
・善因善果
【対義語】
・悪因悪果
・恩が仇
・慈悲が仇になる
・情けが仇
・情けの罪科
・情けも過ぐれば仇となる
「情けは人の為ならず」の解説
「情けは人の為ならず」っていうことわざはね、実は誤解されやすいんだ。
最初に聞いたら、「他人に親切にすると、それがかえってその人のためにならないよ」っていう意味に聞こえるかもしれないよね。でも、本当の意味は全然違うんだ。
このことわざは、人に親切にすることを勧めている言葉なんだよ。「人の為ならず」の部分がちょっと難しいけど、「人の為なり」っていう古い言葉の否定形で、「人のためだけではない」っていう意味になるんだ。
だから、「情けは人の為ならず」を全体で見ると、「親切に行動することは、それを受けた人のためだけでなく、自分自身のためにもなるよ」っていうことを教えてくれる言葉なんだよ。
親切にすると、周りの人が喜んでくれるし、自分も満足感を感じることができるんだ。だから、このことわざは、親切な行動は自分自身にも良い影響を与えるっていうことを教えてくれるんだね。
「情けは人の為ならず」の使い方
その話を聞いたお友達は、大きくなって生れてきた子供に、その時の話を聞かせるの。その子供はやがて高校生になって、ある日バスの中で杖をついているおじいちゃんに席を譲ってあげたの。おじいちゃんはとても喜んでくれたわ。
「情けは人の為ならず」の例文
- 財布の中に小銭がたくさんあるな。情けは人のためならずと言うし、半分くらい募金箱に入れてやろう。
- 情けは人のためならずというように、人に情けをかけると、その人のためになるだけでなく、自分にも情けがかえってくる。
- 困っているおばあさんに手助けをしたら、お礼におかしをもらった。情は人のためならずだね。
- 情けは人の為ならずと言うから、知らない人にも親切にしてあげよう。
- ぼくは道で迷っている人に声をかけて、道案内をしてあげた。お母さんは「いいことをしたね。情けは人の為ならずというから、そのうちいいことがあると思うよ。」と言った。
- 情けは人の為ならずなので、積極的にボランティアに参加してみましょう。
【注意!】間違った例文
❌「健太くんが忘れ物をして困っていても、情けは人の為ならずだから、助けてはいけない。」
「情けは人の為ならず」には続きがある
「情けは人の為ならず」とは、かつて五千円札にも描かれていた新渡戸稲造が作った詩の一部であり、この言葉には続きが存在します。
大正4年に出版された『一日一言』に「情けは人のためならず」と記されています。それでは、同書の「4月23日“恩を施しては忘れよ”」という箇所を全文で確認しましょう。
施せし情は人の為ならず おのがこゝろの慰めと知れ
我れ人にかけし恵は忘れても ひとの恩をば長く忘るな
出典:『[新訳]一日一言:「武士道」を貫いて生きるための366の格言集」 新渡戸稲造著』
「情けは他人のためではなく自分自身のためにかけるものだ。だから自分が他人にした良いことは忘れてもいい。しかし、人から良くしてもらったことは絶対に忘れてはいけない。」という意味です。
「情けは人の為ならず」を英語で言うと?
「情けは人の為ならず」の英語表現をご紹介します。
※英語の声:音読さん
One good turn deserves another.
- 意味:親切を施せば親切を受けるに値する。
Kindness is never lost (wasted).
- 直訳:親切が失われる(無駄になる)ことは決してない。
- 意味:親切な行為は無駄にはならない。
They say kindness is its own reward.
- 直訳:優しさは自分自身への報酬であると彼らは言っている。
- 意味:親切は自分のためになる。
Charity is a good investment.
- 直訳:慈善行為は良い投資だ。
- 意味:良い行為は自分に返ってくる。
「情けは人の為ならず」を深掘り
「情けは人の為ならず」ということわざの背後にある考え、すなわち他人のために親切に行動することの恩恵について、現代の科学的な研究も支持しています。
具体的には、ヒューストン大学のラッドらの研究では、他者のために良いことをする(向社会的行動)と、幸せホルモンとして知られるオキシトシンの分泌が促進されることが示されています。
このオキシトシンの分泌は、具体的な行動を通して達成感を得た時に特に強まることが分かっており、その結果、行動を起こす人の幸福感が高まります。
さらに、カリフォルニア大学のリウボミルスキーらの研究によれば、週に5回の善行を実践することで、参加者の幸福度が明らかに向上することが確認されました。しかし、その善行の頻度を増やすと、その効果は薄れる傾向にありました。
これは、脳が同じ行動に慣れると新しい刺激を感じにくくなる「馴化」という現象に起因するとされています。
また、向社会的行動を起こすためには共感性が非常に重要であることが、長崎大学の南らの研究からも明らかとなっています。共感性の高い人は他者の痛みや喜びをより深く理解できるため、ペイ・フォワードのような行動を取りやすい傾向があります。
この共感性と読書経験との間には関連があるかもしれないという仮説もあり、実際、子ども時代に読書を頻繁にしていた人は、向社会的行動に対する理解が深いことが示唆されています。
総じて、善行や他者への親切は、行動を起こす本人にとっても多くの利益をもたらすことが、科学的な研究を通じて理解されています。
参考文献
このことわざ、科学的に立証されているんです | 堀田 秀吾