【遠くの親類より近くの他人】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

遠くの親戚より近くの他人

【ことわざ】
遠くの親類より近くの他人

【読み方】
とおくのしんるいよりちかくのたにん

【意味】
遠くに住む親類よりも、日常のつきあいがある近くの他人のほうが、いざという時には頼りになるというたとえ。

ことわざ博士
遠くの親類より近くの他人は、血縁の近さよりも、実際に助け合える距離やふだんの関係を重んじる考え方を表すよ。
助手ねこ
遠くの親類よりも、すぐ近くの人が困ったときに助けになってくれることがあるんだニャ。距離の近さが支えになるたとえなんだニャン。

【英語】
・Better a neighbor nearby than a relative far away.(遠くの親類より近くの隣人のほうがよい)

【類義語】
・遠き親子より近き隣(とおきおやこよりちかきとなり)
・遠い一家より近い他人(とおいいっかよりちかいたにん)
・遠水は近火を救わず(えんすいはきんかをすくわず)

【対義語】
・血は水よりも濃い(ちはみずよりもこい)

「遠くの親類より近くの他人」の語源・由来

ことわざを深掘り

「遠くの親類より近くの他人」は、血のつながりそのものを軽んじることわざではありません。遠方の親類は大切な存在であっても、火事、病気、急な用事、暮らしの困りごとのように、すぐ助けが必要な時には、近くにいて日ごろ顔を合わせる人の力が頼りになる、という生活の知恵を表しています。

このことわざで大切なのは、「親類」と「他人」の対比だけではなく、「遠く」と「近く」の対比です。遠方にいる身内よりも、近隣に住み、ふだんから声をかけ合える人のほうが、急な場面では具体的に助けになりやすい、という考え方が中心にあります。

古い形としては、「遠くの親類」ではなく「遠くの親子」という言い方がありました。『慶長見聞集(けいちょうけんもんしゅう)』(1614年の著作、江戸時代初期、三浦浄心著と伝わる)巻六には、「下郎のたとへに、遠くの親子より近くの他人といへるは 寔(まこと)に 実義(じつぎ) なり」とあります。これは、「身分の低い者のたとえとして言われる『遠くの親子より近くの他人』は、まことに道理にかなっている」という意味です。

『慶長見聞集』のこの部分では、江戸の町で争いごとが起きた時、奉行所が左右の隣人に事情をたずね、隣人の言い分を正しい筋道として扱う、という話が出てきます。また、夫婦げんかの時にも女は隣を頼りにする習わしがある、と記されています。つまり、この古い用例では、近所の人が単なる通行人ではなく、暮らしの安全や判断を支える存在として描かれています。

この段階の形は「親類」ではなく「親子」で、血縁の中でも特に近い親子を引き合いに出しています。それほど強いはずのつながりであっても、遠く離れていれば、目の前の困りごとには間に合わない場合があります。そこから、近くにいる他人の実際のありがたさを強く示す言い方になっています。

後には、「親子」が「一家」や「親類」へと変わり、現在よく使われる「遠くの親類より近くの他人」という形が広まりました。言い方が変わっても、中心の考えは変わらず、遠くの身内よりも、日常のつきあいがある近くの人のほうが、急な時には頼りになるというものです。

現在の形に近い用例として、歌舞伎『島鵆月白浪(しまちどりつきのしらなみ)』(1881年・明治14年、河竹黙阿弥作、東京新富座初演)四幕に「遠くの親類近くの他人と」という形が出てきます。この作品は、明治初年の東京を舞台にした散切物(ざんぎりもの)の代表作で、近代の都市生活の中でもこのことわざが自然に通じる言い回しとして使われていたことが分かります。

中国にも、よく似た発想の古い言い方があります。元の時代の雑劇『東堂老勧破家子弟』(元、秦簡夫作)第四折には、「岂不闻远亲呵不似我近邻」とあり、「遠くの親戚は、近くの隣人には及ばないではないか」という意味を表しています。この場面では、隣人として長く関わってきた人物が、困った相手を助ける流れの中でこの言葉を述べています。

さらに、中国の長編小説『水滸伝(すいこでん)』第二十四回にも、「常言道、遠親不如近鄰」という形が出てきます。明代の戯曲にも同じ言い方があり、遠くの親戚より近くの隣人のほうが助け合いやすいという考えは、東アジアの生活感覚の中で広く共有されてきました。

ただし、日本語の「遠くの親類より近くの他人」は、特定の一人の人物や一つの出来事だけから生まれた言葉というより、近隣同士のつきあいを大切にする生活の中で形を整えてきたことわざです。古い「親子」の形から「一家」「親類」へと表現を広げながら、身近な人との助け合いを説く言葉として定着しました。

このことわざは、親類より他人を必ず大切にせよ、という意味ではありません。遠くにいる人の思いやりも尊いものですが、いざという時に手を差し伸べられる近くの人との関係も、同じように大切にしたいという教えです。現在でも、防災、介護、子育て、地域の見守りなど、身近な人とのつながりが力になる場面で、しみじみと意味をもつことわざです。

「遠くの親類より近くの他人」の使い方

健太
昨日の夜、おばあちゃんが階段で転びそうになったんだ。すぐ隣のおじさんが気づいて、家まで送ってくれたよ。
ともこ
それは本当に助かったね!遠くの親類より近くの他人って、こういう時にぴったりだね。
健太
遠くに住む親せきにも電話したけど、すぐ来るのは難しかったみたい。近所の人がいてくれて安心したよ。
ともこ
ふだんのあいさつも大事だね。今度会ったら、私もちゃんとお礼を言うよ。

「遠くの親類より近くの他人」の例文

例文
  • 台風で庭の木が倒れた時、近所の人がすぐ手伝ってくれて、遠くの親類より近くの他人を実感した。
  • 祖母は一人暮らしだが、毎朝声をかけてくれる隣人がいて、遠くの親類より近くの他人という言葉どおり支えられている。
  • 遠くの親類より近くの他人とはいえ、日ごろから近所づきあいを大切にしてこそ助け合いが生まれる。
  • 急に子どもが熱を出した時、隣の家が車を出してくれたので、遠くの親類より近くの他人だと思った。
  • 新しい町に引っ越してから、親切な近所の人たちに助けられ、遠くの親類より近くの他人ということわざの意味がよく分かった。
  • 地震のあと、同じ通りに住む人たちが水や食料を分け合い、遠くの親類より近くの他人の大切さを感じた。

主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・三浦浄心『慶長見聞集』1614年。
・秦簡夫『東堂老勧破家子弟』元代。
・施耐庵・羅貫中ら『水滸伝』明代成立。
・河竹黙阿弥『島鵆月白浪』1881年。
・『聖書』箴言27章10節。




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