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【衢道を行く者は至らず】の意味と使い方や例文!故事は?(類義語・対義語・英語)

衢道を行く者は至らず

【故事成語】
衢道を行く者は至らず

【読み方】
くどうをいくものはいたらず

【意味】
いくつもの道や目標に心を分けて進もうとすると、どれにも十分な力を注げず、結局は目的を達成できないということ。

ことわざ博士
「衢道」は、道が分かれている所、すなわち岐路を表すんだよ。
助手ねこ
目標を一つに定めず、複数の事に心や力を散らして、どれも成し遂げられない場面で用いるニャン。

【英語】
・If you run after two hares, you will catch neither.(二匹の野うさぎを同時に追えば、どちらも捕まえられない)

【類義語】
・二兎を追う者は一兎をも得ず(にとをおうものはいっとをもえず)
・虻蜂取らず(あぶはちとらず)

【対義語】
・一意専心(いちいせんしん)

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「衢道を行く者は至らず」の故事

故事成語を深掘り

この言葉は、『荀子(じゅんし)』(中国・戦国時代末期、紀元前3世紀ごろ成立、荀況とその学派の著作)の「勧学篇(かんがくへん)」に出てくる「行衢道者不至、事両君者不容」に由来します。「分かれ道を行こうとする者は目的地に着かず、二人の君主に仕えようとする者は、どちらからも受け入れられない」という意味です。

「衢」は、四方へ通じる道や、道が分岐する所を表す漢字です。「衢道」も岐路を意味し、「衢塗」という表記もあります。古い注釈には、四方へ分かれる道とする説明のほか、二つに分かれた道とする説明もありますが、いずれも、進む方向を一つに定めにくい道を表しています。

「勧学篇」は、人が学びを積み重ね、心を一つの目的へ向けることの大切さを、さまざまなたとえによって説いています。この言葉の少し前には、みみずは鋭い爪や丈夫な骨を持たなくても、心を一つにして土を食べ、地中の水を飲む一方、蟹は多くの足とはさみを持ちながら、心が落ち着かないため、自分の身を置く穴さえ得にくいという対照が置かれています。

その流れを受けて、荀子は「衢道を行く者は至らず」と述べます。分かれた複数の道を同時に進もうとしても、体を二つに分けることはできないため、どの目的地にもたどり着けません。「事両君者不容」も同じ発想によるもので、二人の君主に同時に忠義を尽くそうとすれば、心がどちらにあるのかを疑われ、結局は双方から信頼されないことを表しています。

さらに原文では、「目は二つのものを同時に見て明らかにすることができず、耳は二つの音を同時に聞いて正しく聞き分けることができない」と続きます。また、足を持たなくても飛ぶとされた蛇と、五つの技を持ちながら一つも十分に究められない動物とを対照させ、能力の多さよりも、力を一つに集めることが重要だと説いています。

最後には『詩経(しきょう)』の一節を引き、立派な人は態度を一つに定め、その心は固く結ばれたように揺るがないと述べ、「故君子結於一也」、すなわち「だから君子は心を一つのことに結びつけるのだ」と結論づけています。「衢道を行く者は至らず」は、この「一つに心を定める」という教えを、分かれ道の姿によって印象深く示した言葉です。

日本語では、原文の「行衢道者不至」を訓読した「衢道を行く者は至らず」という形で定着しました。具体的な道の話から意味が広がり、勉強、仕事、計画などで目標を定めず、あれもこれも同時に追いかければ、どれも達成できないという戒めとして用いられています。

この言葉は、選択肢を持つこと自体を戒めるものではありません。進むべき時になっても方針を決めず、限られた時間や力をいくつもの目標へ散らしてしまうことを戒め、まず一つの道を選び、そこへ力を注ぐことの大切さを教えています。

「衢道を行く者は至らず」の使い方

健太
夏休みに、水泳も野球もピアノも毎日練習して、自由研究も大作にするんだ!
ともこ
全部を同時に進めたら、どれも練習する時間が足りなくならない?
健太
昨日も予定を決めるだけで夜になって、結局、何も始められなかったんだ……。
ともこ
衢道を行く者は至らずというから、まず自由研究を仕上げて、それから次の目標に進もう!
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「衢道を行く者は至らず」の例文

例文
  • 衢道を行く者は至らずというように、目標を次々と変えていては、十分な成果を上げられない。
  • 資格の勉強を三つ同時に始めたが、衢道を行く者は至らずと気づき、一つにしぼることにした。
  • 衢道を行く者は至らずを心に留め、彼は最も重要な研究課題に力を集中した。
  • 家族は、あれもこれも習いたがる子どもに、衢道を行く者は至らずと穏やかに言い聞かせた。
  • 会社は衢道を行く者は至らずとの考えから、限られた資金を主力事業へ集中させた。
  • 衢道を行く者は至らずという教えに従い、町内会は防災倉庫の整備を最初の目標に定めた。

主な参考文献

・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・Jennifer Speake編『The Oxford Dictionary of Proverbs 第6版』Oxford University Press,2015.
・荀況『荀子』紀元前3世紀ごろ成立。
・王先謙撰『荀子集解』1891年。
・許慎『説文解字』後漢、2世紀初頭成立。





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