【ことわざ】
黒い雲が出ると雨
【読み方】
くろいくもがでるとあめ
【意味】
空に黒く見える雲が現れると、間もなく雨が降りやすいということ。


「黒い雲が出ると雨」の語源・由来
「黒い雲が出ると雨」は、雲の色や動きから、その後の天気を読む観天望気(かんてんぼうき)から生まれた言い伝えです。観天望気とは、その土地の人々が雲や風、空の色、動植物の様子などを観察し、長年の経験をもとに天気の変化を予測する方法を指します。科学的な天気予報がなかった時代には、農作業や漁、旅などの予定を決めるため、このような知恵が各地で受け継がれてきました。
ここでいう「黒い雲」とは、雲そのものが黒い物質でできているという意味ではありません。雲は小さな水滴や氷の粒からできていますが、それらが多く集まって雲が厚くなると、太陽の光が下まで通りにくくなります。そのため、地上から見上げた雲の底は、灰色や黒に近い色に見えます。
雲の中では、小さな水滴や氷の粒が互いに結びついて大きくなり、空中に浮かんでいられないほど重くなると、雨や雪となって地上へ落ちてきます。水滴や氷の粒が多く、厚く発達した雲ほど暗く見えやすいため、「雲が黒くなれば雨が近い」という経験には、気象の仕組みに合う面があります。
特に、積乱雲(せきらんうん)が発達して近づくと、空が急に暗くなり、短い時間に激しい雨が降ることがあります。真っ黒い雲の接近は、雷の音や急に吹く冷たい風とともに、積乱雲が近づいている徴候の一つです。積乱雲の下では、雨だけでなく、雷やひょう、竜巻などの激しい突風が起こるおそれもあります。
このような言い伝えは、一つの決まった形だけでなく、それぞれの土地の地形や雲が来る方角に合わせた言い方で伝わってきました。秋田県の矢島町・鳥海町地方には、「黒い雲は雨、雲が早く進むと雨」という言い方があります。黒い雲の色だけでなく、雲が流れる速さも天気の変化を知る手がかりにしていたことが分かります。
長野県の旧本城村には、「乱橋(みだれはし)の方から黒い雲が出てくると雨が降る」という言い伝えがありました。この形では、黒い雲が現れる方角まで示しています。身近な山や集落の方角と、その後に起こった雨とを何度も結びつけることで、その土地に合った天気の知恵が作られていきました。
現在は、地域名や方角を含まない「黒い雲が出ると雨」という簡潔な形でも紹介されています。雲の様子を見れば、専門的な道具がなくても天気の急変に気づけるという、分かりやすい教えとして定着したものです。
ただし、黒く見える雲が現れれば、必ず雨が降るとは限りません。雲の厚さだけでなく、太陽の位置や見る方向によっても、雲は暗く見えることがあります。また、地域の地形や季節によって天気の変わり方も異なります。それでも、真っ黒い雲がこちらへ近づいてきたときは、急な雨や雷が迫っている場合があります。「黒い雲が出ると雨」は、空の変化に早く気づき、安全な場所へ移るためにも役立つことわざです。
「黒い雲が出ると雨」の使い方




「黒い雲が出ると雨」の例文
- 黒い雲が出ると雨というので、遠足へ出かける前に折り畳み傘をかばんへ入れた。
- 祖父は黒い雲が出ると雨と判断し、庭に干していた洗濯物を急いで取り込んだ。
- 黒い雲が出ると雨だからと、農家の人たちは刈り取った稲を早めに納屋へ運んだ。
- 漁師たちは黒い雲が出ると雨という空模様を見て、沖へ出るのを取りやめた。
- 黒い雲が出ると雨を思い出した選手たちは、試合道具をぬれない場所へ移した。
- 登山の途中で黒い雲が出ると雨と気づき、一行は頂上を目指さず山小屋へ戻った。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・大後美保編『天気予知ことわざ辞典』東京堂出版、1984年。
・本城村誌編纂委員会編『本城村誌 民俗編』本城村誌刊行委員会、1998年。
・気象庁『気象業務はいま 2015』気象庁、2015年。























