『抱朴子』は、中国の晋代の道家書で、葛洪(かっこう)という道教の士が著したものです。彼の号「抱朴子」が書名となっています。
全体は八巻からなり、内篇20巻に20章、外篇50巻に52章が含まれます。
内篇は、不老長生を求める仙術やその具体的な理論を詳細に論じています。具体的には、丹砂(水銀と硫黄の化合物)、各種の薬、呼吸法、護符、避邪法、鬼神の使役、心内の神々の想念法(歴臓法)など、仙人となるための方法や仙人の種類が記述されています。
その思想は、主に道家を基本にして、儒家の思想も取り入れています。
外篇は、儒家の思想を基盤に、政治や社会、処世に関することを中心に述べており、文学に関する部分も触れられています。文体としては、四六駢儷文という形式が使われており、文学史上でも注目されています。
また、巻50には葛洪自身の自叙があり、彼の生涯や本書の成立背景、内容について詳述されています。
葛洪は、古代の道家の教えを正統と捉え、特定の師から奥義を受け取った者を明師として高く位置づけました。彼は「神仙は学ぶことができる」との立場をとり、正しい師を選び、修行すれば仙人になることができると説いています。
しかし、同時に星宿による宿命論も採用し、道の教えと徳の修行を兼ね備えることを奨励しています。
現在、『抱朴子』と言うと、主に内篇を指すことが多いです。