【ことわざ】
金の鎖も引けば切れる
【読み方】
かねのくさりもひけばきれる
【意味】
どれほど意志の強い人でも、誘惑に負けることがあるというたとえ。また、努力を重ねれば、できないことはないというたとえ。


【英語】
・Where there’s a will, there’s a way.(強い意志があれば道は開ける)
【類義語】
・雨垂れ石を穿つ(あまだれいしをうがつ)
「金の鎖も引けば切れる」の語源・由来
「金の鎖も引けば切れる」の「金」は、金銭や黄金ではなく、金属を表す「かね」です。「金の鎖」は金属製の鎖を指し、丈夫で簡単には切れないもののたとえとして使われています。
このことわざには、特定の人物や出来事を語る物語は伴いません。金属製の鎖を引っ張るという具体的な動作から、人の弱さと努力の強さという二つの教訓を導き出した表現です。
「金鎖(かなぐさり)」は、もともと金属で作った鎖を表す言葉です。「金」を「かな」と読むのは、「金物」「金具」などと同じく、金属を意味する古くからの言い方です。
「かなぐさり」という言葉の古い例は、『日本書紀(にほんしょき)』(720年・奈良時代、舎人親王ら編)の継体天皇二十四年九月条を、寛文版で訓読した箇所に出てきます。そこでは、人を拘束する鎖を「カナクサリ」と読んでいます。
『古今著聞集(ここんちょもんじゅう)』(1254年・鎌倉時代中期、橘成季編)にも、「金鏁を取り出して、よく逃げぬ様にしたためてけり」とあります。ここでの「金鏁」は、人が逃げないようにつなぎ止める、実際の金属製の鎖です。
このように、金属製の鎖は古くから、人や物を強くつなぎ止める道具として知られていました。その丈夫な鎖でさえ、強い力を加えれば切れるというところから、このことわざの比喩が成り立っています。
一つ目の意味では、鎖の丈夫さを人の堅い意志に重ねます。どれほど決心の固い人でも、強い誘惑を受け続ければ心が揺らぎ、ついには負けることがあるという戒めです。
この意味での「引く力」は、人の心を引き寄せる誘惑に当たります。「切れる」は、守ろうとしていた決意が崩れ、自分を抑えきれなくなることを表しています。
二つ目の意味では、鎖を引く人の側に目を向けます。いかにも切れそうにない金属の鎖であっても、力を加え続ければ切れることがあるように、難しい課題も根気よく努力すれば成し遂げられるという励ましです。
二つの意味は、一見すると正反対に思えます。しかし、前者は「丈夫なものにも弱点がある」と見る使い方であり、後者は「丈夫なものでも働きかけ続ければ破れる」と見る使い方です。同じ出来事を、鎖の側と引く人の側とから、それぞれ捉えています。
現在では、誘惑を甘く見ないよう戒める場合と、困難を前にしても努力を続けるよう励ます場合の、どちらにも用いられます。前後の文脈によって意味が変わるため、誰の意志や努力について述べているのかを確かめることが大切です。
「金の鎖も引けば切れる」の使い方




「金の鎖も引けば切れる」の例文
- 金の鎖も引けば切れるというように、毎日練習を続ければ、難しい曲も弾けるようになる。
- 研究班は金の鎖も引けば切れると信じ、失敗した実験を何度もやり直した。
- 金の鎖も引けば切れるの心で交渉を重ねた結果、ようやく相手の協力を得られた。
- 金の鎖も引けば切れるから、意志の強い人でも甘い誘いを軽く見てはいけない。
- 彼の決心は固かったが、金の鎖も引けば切れるの言葉どおり、目先の利益に心を動かされた。
- 母は、金の鎖も引けば切れるということわざを引き合いに出し、誘惑から距離を置くよう戒めた。
主な参考文献
・松村明監修、小学館国語辞典編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・Colin McIntosh編『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary Fourth Edition』Cambridge University Press、2013.
・舎人親王ら編『日本書紀』720年。
・橘成季編『古今著聞集』1254年。























