【ことわざ】
鐘鋳るまでの土鋳型
【読み方】
かねいるまでのつちいがた
【意味】
目的を達成するまでの一時的な手段として用いるだけのもの。また、成功するまでは粗末なもので我慢すること。


【英語】
・make do with what one has.(手元にあるもので間に合わせる)
・a stopgap measure.(一時的な間に合わせの手段)
【類義語】
・間に合わせ(まにあわせ)
・一時しのぎ(いちじしのぎ)
・代用品(だいようひん)
【対義語】
・本末転倒(ほんまつてんとう)
「鐘鋳るまでの土鋳型」の語源・由来
「鐘鋳るまでの土鋳型」は、鐘を鋳造する仕事に関わるたとえから生まれたことわざです。「鐘鋳」は鐘を鋳造することを表し、室町時代後期の『御湯殿上日記』(1481年)にも、鐘を鋳る意味で「かねい」という形が出てきます。
鋳造とは、金属を溶かし、鋳型に流し込んで品物を作ることです。鋳型は、鋳物を作るときに溶けた金属を注ぎ入れる型で、古くは「いかた」とも呼ばれました。
鐘のような大きな鋳物を作るには、完成した形をそのまま削り出すのではなく、先に型を作り、そこへ溶けた金属を流し込みます。鋳金では、金属を鋳型に流し込み、冷えて固まったあと、製品を鋳型から取り出して仕上げます。
このことわざに出てくる「土鋳型」は、土で作った鋳型を指します。見出しの形には「土鋳型」のほか、「泥鋳型」という言い方も添えられており、どちらも鐘を作るまでの仮の型を表しています。
日本の伝統的な鋳造では、「真土」と呼ばれる鋳型砂を用いる方法があります。真土は、川砂に粘土を混ぜて焼き、砕いてふるい分け、粘土汁を混ぜて練る材料で、鋳肌になる部分や補強する部分に応じて使い分けます。
真土による惣型法は、茶の湯釜や梵鐘(ぼんしょう)、寺社の鰐口(わにぐち)など、回転形の器物を作る伝統技法として用いられてきました。梵鐘を作る場合にも、挽き型板を回しながら、粗い土から細かな土へと鋳物土を重ねて鋳型を作ります。
鋳型は、乾燥させ、表面を焼き、そこへ金属を流し込むために必要なものです。しかし、鐘そのものができあがると、土鋳型の役目は終わります。鐘は残り、鳴り続けますが、型は完成までの手段として働いたものになります。
この具体的な作業から、「鐘鋳るまでの土鋳型」は、目的を達するまでだけ用いられる一時的なものを表すようになりました。大事なのは完成する鐘であり、土鋳型はその目的を実現するための役割を果たすものです。
また、このことわざには、成功するまでは粗末なもので我慢する、という意味もあります。立派なものが手に入るまで、仮の道具や簡単な設備でしのぐという生活上の知恵を含んでいます。
ただし、このことわざは、手段を粗末に扱ってよいという意味だけではありません。目的を達成するまでには、仮のものにも役割があり、それを使って辛抱することが必要な場合もある、という考えを含みます。
したがって、「鐘鋳るまでの土鋳型」は、目的と手段の関係を、鐘づくりの土の型にたとえたことわざです。完成までの間だけ役に立つもの、または成功するまでの間に用いる粗末な仮のものを、落ち着いた言い方で表します。
「鐘鋳るまでの土鋳型」の使い方




「鐘鋳るまでの土鋳型」の例文
- 新しい校舎ができるまで、仮教室は鐘鋳るまでの土鋳型として使われた。
- 会社が正式な管理システムを導入するまで、手書きの表は鐘鋳るまでの土鋳型の役目を果たした。
- 引っ越し直後の簡単な食卓は、家具がそろうまでの鐘鋳るまでの土鋳型だった。
- 大会用のユニフォームが届くまで、練習着を鐘鋳るまでの土鋳型として代用した。
- 新しい道具を買うまでは、古い箱を鐘鋳るまでの土鋳型として材料入れにした。
- 完成版の資料ができるまで、下書きの冊子を鐘鋳るまでの土鋳型として配った。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・東京藝術大学大学院美術研究科鋳金研究室『真土による惣型』。
・東京藝術大学大学院美術研究科鋳金研究室『真土型鋳造法』。
・Cambridge University Press, Cambridge Academic Content Dictionary.























