【故事成語】
管鮑の交わり
【読み方】
かんぽうのまじわり
【意味】
非常に仲のよい友人づきあい。互いを深く理解し、利害や立場が変わっても変わらない親しい交際。


【英語】
・close friendship.(親しい友情)
・lifelong friendship.(一生続く友情)
【類義語】
・水魚の交わり(すいぎょのまじわり)
・刎頸の交わり(ふんけいのまじわり)
・莫逆の友(ばくげきのとも)
【対義語】
・犬猿の仲(けんえんのなか)
・反目(はんもく)
「管鮑の交わり」の故事
「管鮑の交わり」の「管鮑」は、管仲(かんちゅう)と鮑叔牙(ほうしゅくが)の二人を指します。二人は中国春秋時代の斉(せい)の人で、互いに深く理解し合った友人として伝えられています。
この故事は、『史記(しき)』(前漢、司馬遷著、前91年ごろ完成)「管晏列伝(かんあんれつでん)」に詳しく出てきます。『史記』は、全130巻から成る中国の代表的な歴史書で、人物の伝記を通して歴史を描く形式を整えた書物です。
『史記』によると、管仲は若いころ、鮑叔牙とよく交わり、鮑叔牙は管仲のすぐれた才能を知っていました。管仲は貧しく、鮑叔牙と商売をしたときに分け前を多く取りましたが、鮑叔牙はそれを欲ばりだとは考えず、管仲の貧しさを理解していました。
また、管仲が鮑叔牙のために考えた策がかえってうまくいかなかったときも、鮑叔牙は管仲を愚かだとは見ませんでした。物事には時に利があり、時に不利があることを知っていたためです。
管仲は、仕官しても三度退けられ、戦いでは三度逃げました。しかし鮑叔牙は、管仲を無能だとも臆病だとも決めつけず、時に恵まれていないことや、老いた母を思う事情を理解していました。
やがて斉の国では、君主の位をめぐる争いが起こりました。鮑叔牙は公子小白に仕え、管仲は公子糾(きゅう)に仕えたため、二人は別々の主人を支える立場になりました。
小白が勝って斉の桓公(かんこう)となると、公子糾は死に、管仲は捕らえられました。ふつうなら敵として処罰されてもおかしくない場面でしたが、鮑叔牙は管仲の才能を惜しみ、桓公に管仲を用いるようすすめました。
桓公は鮑叔牙のすすめを受け入れ、管仲を宰相として用いました。管仲は斉の政治を担い、桓公を助けて国を強くし、諸侯の盟主としての地位を築く大きな力となりました。
管仲はのちに、自分を生んだのは父母だが、自分を本当に知ってくれたのは鮑叔牙だ、と述べています。この言葉は、鮑叔牙が管仲の表面の失敗や不利な立場だけで判断せず、その人柄や才能を深く見抜いていたことをよく表しています。
『列子』(前漢末から晋代にかけて現行本が成立したといわれる道家思想書)「力命篇」にも、管仲と鮑叔牙の関係が語られています。そこでは、二人が親しく交わったこと、鮑叔牙が管仲を桓公にすすめたこと、管仲が鮑叔牙への感謝を述べたことが、まとまった形で伝えられています。
この話から、「管鮑の交わり」は、ただ一緒に遊ぶ仲のよさではなく、相手の本質を理解し、困難なときにも信頼を失わない友情を表す言葉になりました。立場が変わり、利害が分かれても、相手の価値を認め続けた点に、この故事成語の大切な意味があります。
日本語でも、古くから親しい交わりを表す言葉として用いられ、俳諧の文献には「管鮑のまじはり」とする用例が出てきます。近代以後も、深い友情や知己の関係をいう表現として使われています。
現在の「管鮑の交わり」は、相手をよく知り、短所や失敗だけで見限らず、長く信頼し合う関係をたたえるときに用います。友人関係を美しく言い表す故事成語であると同時に、人を見るときには一時の失敗だけでなく、その人の本質を見ようとすることの大切さも伝えています。
「管鮑の交わり」の使い方




「管鮑の交わり」の例文
- 二人は小学校以来、困ったときに支え合う管鮑の交わりを続けている。
- 失敗した友人を見捨てず励ました彼らの関係は、管鮑の交わりと呼ぶにふさわしい。
- 利害がからむ仕事の中でも、あの二人は管鮑の交わりを保っていた。
- 祖父には、若いころから何でも相談してきた管鮑の交わりの友がいる。
- 互いの短所も事情もよく分かっているからこそ、二人の友情は管鮑の交わりとなった。
- 管鮑の交わりのような友人関係は、一時の楽しさだけでなく深い信頼によって育つ。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2006年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・円満字二郎編『故事成語を知る辞典』小学館、2018年。
・司馬遷『史記』前漢、前91年ごろ。
・『列子』前漢末〜晋代ごろ。
・Oxford University Press『Oxford Advanced Learner’s Dictionary.』























