【ことわざ】
首縊りの足を引く
【読み方】
くびくくりのあしをひく
【意味】
ひどく困っている人に、さらに打撃を与え、いっそう苦しい状態へ追い込むこと。情けのない、むごい仕打ちのたとえ。


【英語】
・kick someone when they are down.(弱っている人に追い打ちをかける)
【類義語】
・傷口に塩を塗る(きずぐちにしおをぬる)
【対義語】
・敵に塩を送る(てきにしおをおくる)
「首縊りの足を引く」の語源・由来
「首縊りの足を引く」は、特定の人物や歴史上の事件をもとにした言葉ではなく、目に浮かぶような残酷な情景をたとえにしたことわざです。首をつろうとしている人を助けるどころか、その足を下へ引っ張り、死なせてしまうという行為から、窮地にある人へさらに追い打ちをかけるという意味が生まれました。
「首縊り」とは、首をくくって命を絶つこと、または、そのようにして命を絶つ人を指す言葉です。「縊」という漢字には、ひもや縄などで首を締めるという意味があり、「首縊り」は「首くくり」と読みます。
「首縊り」という言葉の古い用例は、浄瑠璃(じょうるり)『賀古教信七墓廻』(1714年ごろ・江戸時代中期)にあります。作中には「はあ、さてはくびくくりか、南無三宝」とあり、この時代にはすでに、首をくくって死ぬこと、また、その人を「くびくくり」と呼んでいました。
ことわざのもとになった情景では、首をくくった人は、すでに命を失いかねない極限の状態にあります。その人の足を引けば、救うこととは正反対に、さらに強い力を加えて死を早めることになります。このため、単に助けないだけではなく、苦しむ相手へあえて害を重ねる、きわめて非情な行為を表すたとえとなりました。
ここでの「足を引く」は、足をつかんで下へ引っ張るという具体的な動作です。現在よく使われる「人の足を引っ張る」という言い方にも、他人の前進や成功を妨げる意味がありますが、「首縊りの足を引く」では、すでに窮地に陥っている人を、いっそう悪い状態へ追い込むという点が強く表れています。
このことわざが表すのは、偶然に災難が重なることではありません。たとえば、失敗して落ち込んでいる人を大勢の前でさらにあざけることや、経済的に苦しんでいる人の弱みにつけ込んで不当な要求をすることなど、相手の苦境を知りながら、さらに打撃を与える行為に用います。
この点で、「弱り目に祟り目」や「泣きっ面に蜂」とは少し異なります。これらは、弱っているときにさらに不運が起こることを表しますが、「首縊りの足を引く」は、多くの場合、誰かが意図的に追い打ちをかけるという、人の冷酷な振る舞いを責める言葉です。
反対の発想を表すのが「敵に塩を送る」です。こちらは、相手が苦境にあるとき、その弱みにつけ込まず、たとえ敵であっても救いの手を差し伸べることを表します。「首縊りの足を引く」が、弱った相手へ害を加える非情さを示すのに対し、「敵に塩を送る」は、苦しむ相手を助ける思いやりや公正さを示します。
このように、「首縊りの足を引く」は、すでに追い詰められている人へ、さらに害を加えることのむごさを、強烈な情景によって表したことわざです。困っている人の弱みにつけ込むのではなく、苦境から救おうとすることの大切さを、裏側から教える言葉でもあります。
「首縊りの足を引く」の使い方




「首縊りの足を引く」の例文
- 試合に負けて落ち込む選手を大勢の前であざけるのは、首縊りの足を引くような行為だ。
- 会社が倒産しかけていると知りながら、根拠のない悪評を広めるとは、まさに首縊りの足を引くである。
- 友人が失敗を悔やんでいるときに、昔の過ちまで持ち出して責めるのは、首縊りの足を引くに等しい。
- 被災して困っている人に法外な値段で生活用品を売るのは、首縊りの足を引くような非情な商売である。
- 部下が病気と仕事の失敗で弱っているところへ侮辱の言葉を浴びせるとは、首縊りの足を引く仕打ちだ。
- 首縊りの足を引くということわざは、窮地にある人へさらに打撃を与える残酷さを戒めている。
主な参考文献
・日本漢字能力検定協会編『漢検 漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・白石大二編『国語慣用句大辞典』東京堂出版、1977年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・『賀古教信七墓廻』1714年ごろ。























