【慣用句】
食わず嫌い
【読み方】
くわずぎらい
【意味】
食べたことがなく、味も分からないのに、嫌いだと決め込むこと。また、物事の真価を知ろうとせず、理由もなく嫌うこと。


【英語】
・How can you say that without trying it?(試してもいないのに、どうしてそう言えるのですか)
【類義語】
・食べず嫌い(たべずぎらい)
「食わず嫌い」の語源・由来
「食わず嫌い」は、「食わず」と「嫌い」を組み合わせた表現です。「食わず」は、動詞の「食う」に打ち消しの「ず」が付いた形で、「食べないまま」という意味です。そのため、言葉どおりには、食べ物を口に入れて味を確かめる前から嫌うことを表します。
食べ物の味は、実際に食べてみなければ十分には分かりません。そこから、味を知らないまま嫌う行為が、経験も理解もないまま物事を避ける態度のたとえとして使われるようになりました。現在も、食べ物についての具体的な意味と、物事を試さずに嫌うという広い意味の両方で用いられています。
この表現は、特定の人物の逸話や昔話をもとにしたものではなく、「食べないまま嫌う」という日常の行為から生まれた言い方です。古い使用例としてたどりやすいのは明治以降であり、江戸時代の確かな用例は広く示されていません。
大正時代には、すでに食べ物以外のものを表すたとえとして使われていました。『釘(くぎ)』(大正5年、安田善三郎述)には、西洋式の釘が日本へ入ってきたころ、人々が信用せず、なかなか使おうとしなかった様子が書かれています。大火によって釘の需要が急に増えると、それまで避けられていた西洋式の釘も使われ、しだいに普及していきました。
その経過を述べた箇所には、「食はず嫌ひの物に、始めて指を染めさせました」とあります。ここでの「食はず嫌ひ」は、釘を食べるという意味ではありません。実際に使って性能を確かめる前から、西洋式の釘を嫌っていた態度を表しています。
この用例から、大正時代には「食わず嫌い」が、食べ物だけでなく、新しい製品や技術を試さずに避ける態度にも用いられていたことが分かります。「味を知らずに嫌う」という具体的な行為から、「価値を確かめずに嫌う」という広い意味へと、たとえが自然に広がっていたのです。
「食べず嫌い」という形もあります。これは、もとの「食う」を、やわらかい「食べる」に置き換えた言い方であり、「食わず嫌い」が本来の形です。どちらも同じ意味で使われますが、「食わず嫌い」のほうが、決まった言い回しとして広く定着しています。
現在では、食べ物を一度も味わわずに避ける場合のほか、本を読まずに嫌う、スポーツを体験せずに退屈だと決める、新しい道具を使わずに役に立たないと考える、といった場面にも使います。見た目や評判だけで判断せず、まず確かめることの大切さを伝える表現です。
「食わず嫌い」の使い方




「食わず嫌い」の例文
- 弟は一度も口にしたことのない納豆を、食わず嫌いで避けている。
- 難しそうな題名だけで古典を読まないのは、食わず嫌いにすぎない。
- 兄は食わず嫌いだった料理を旅先で試し、すっかり好物になった。
- 野球を食わず嫌いしていた友人も、球場で観戦してから興味を持ち始めた。
- 新しい会計ソフトを食わず嫌いせず、まず試用版を使うことにした。
- うわさだけで相手を遠ざける食わず嫌いは、人間関係を狭めてしまう。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館国語辞典編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・高野フミ・板橋好枝編『プログレッシブ和英中辞典 第4版』小学館、2011年。
・安田善三郎述『釘』1916年。























