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【九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑う】の意味と使い方や例文!語源由来は?

九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑う

【ことわざ】
九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑う

【読み方】
くひゃくくじゅうくひきのはなかけざるまんぞくないっぴきのさるをわらう

【意味】
欠点や誤りをもつ大勢の者が、ごく少数の正しい者を悪く言ったり、あざ笑ったりすること。仲間が多いと、自分たちの欠点に気づかなくなることのたとえ。

ことわざ博士
多数であることは正しさの証明にならず、同じ欠点を共有する集団では、その欠点が見えにくくなるという戒めだよ。
助手ねこ
大勢の者が自分たちの誤りを正当化し、正しい意見を述べる少数者を非難する場面に用いるニャン。
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「九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑う」の語源・由来

ことわざを深掘り

このことわざのもとになったのは、平安時代末期、12世紀初めごろに成立した作者未詳の説話集『今昔物語集(こんじゃくものがたりしゅう)』巻第五第二十三話「舎衛国鼻欠猿供養帝釈語」です。『今昔物語集』は、天竺・震旦・本朝の説話を集めた書物で、この一話は、天竺を舞台とする仏教的な教訓話として収められています。

物語の舞台は、天竺(てんじく:古代インドを指す呼び名)の舎衛国(しゃえこく)です。山中の大木に千匹の猿が住み、皆で心を一つにして、仏教を守る神である帝釈(たいしゃく)に供え物をささげていました。

千匹のうち、九百九十九匹には鼻がなく、ただ一匹だけに鼻がありました。ところが、数の多い鼻のない猿たちは、自分たちの姿を当たり前だと思い、鼻のある一匹を、体に欠けたところのある者だと決めつけ、仲間に入れず、同じ場所に住むことさえ許しませんでした。

やがて、九百九十九匹の猿は、さまざまな珍しい果物を集めて帝釈に供えました。しかし、帝釈はその供え物を受け取らず、鼻のある一匹の猿がささげた物だけを受け取りました。

九百九十九匹が理由を尋ねると、帝釈は、鼻のない猿たちは前世で仏の教えをそしったため、六根(ろっこん:見る・聞く・嗅ぐなどの働きを担う六つの器官)が完全には備わらなかったのだと告げます。一方、鼻のある一匹には六根がすべて備わっており、本当に欠けたところがあるのは、正しい相手を笑っていた九百九十九匹のほうでした。

帝釈の言葉を聞いた九百九十九匹の猿は、初めて自分たちの欠けたところを知り、一匹の猿をあざ笑うことをやめました。物語は、この出来事を、怠けて修行しない大勢の者が、努力して戒めを守る人を悪く言うことにたとえています。

『今昔物語集』の末尾には、世間で「鼻欠猿」と呼ぶのは、この話に由来するという趣旨の言葉があります。この段階では、現在の長いことわざそのものではなく、「鼻欠猿」という短い表現によって、自分の欠点を知らず、正しい者を笑う人々を指していました。

現在のことわざに近い形は、浄瑠璃『大内裏大友真鳥(だいだいりおおとものまとり)』(1725年初演・江戸時代中期、竹田出雲作)に出てきます。第二段には、「九百九十九尾の鼻欠猿、満足な一尾の猿を笑ふ」とあり、卑怯で忠義に背く大勢の者を、鼻のない猿たちになぞらえて非難しています。

ここでいう「満足」は、喜んで心が満ち足りているという意味ではありません。「完全で欠けたところがない」という古くからの意味であり、「満足な一匹の猿」とは、鼻を含めて体の働きがそろった一匹の猿を指します。

古い用例では、動物を数える字に「尾」を用いながら「ひき」と読ませ、「笑う」を歴史的仮名遣いで「笑ふ」と書いていました。後に、表記が「匹」「笑う」へと改まり、「九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑う」という形で定着しました。

もとは仏教の教えを説く猿の物語でしたが、後には、同じ欠点をもつ仲間が大勢いるために自分たちの誤りが見えなくなり、かえって正しい少数者を笑うことを戒めることわざとなりました。数の多さと正しさは同じではなく、人を非難する前に、自分たちの姿を見直すべきだという教えを伝えています。

「九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑う」の使い方

健太
クラスのみんなが近道をしようと、立ち入り禁止の柵を乗り越えようとしていたんだよ。
ともこ
それは危ないね!健太くんはちゃんとルールを守って遠回りしたの?
健太
うん、僕が注意したら「一人だけ格好つけている」って大勢から笑われちゃったんだ。
ともこ
まさに九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑うだね。正しいことをしている健太くんが笑われるなんておかしいよ。
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「九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑う」の例文

例文
  • クラスの大半が誤った答えを選び、正解した一人をからかった様子は、九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑うそのものだった。
  • 皆が守っていない規則を一人だけ守る友人を非難するのは、九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑うようなものだ。
  • 会社ぐるみの不正を指摘した社員が仲間外れにされ、九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑うという言葉を思わせた。
  • 誤ったうわさを信じる大勢が、真実を語る少数の人を攻撃すれば、九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑うことになる。
  • 部員全員が練習方法の欠点に気づかず、改善を求めた一人を笑ったため、監督は九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑うと戒めた。
  • 九百九十九匹の鼻欠け猿、満足な一匹の猿を笑うというように、多数の賛成があるからといって、その意見が正しいとは限らない。

主な参考文献

・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・尚学図書・言語研究所編『故事・俗信ことわざ大辞典』小学館、1982年。
・今野達校注『今昔物語集 一 新日本古典文学大系33』岩波書店、1999年。
・竹田出雲『大内裏大友真鳥』1725年。





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