【ことわざ】
薬も過ぎれば毒となる
【読み方】
くすりもすぎればどくとなる
【意味】
どんなによいものでも、度を越せば、かえって害になるというたとえ。


【英語】
・Too much of a good thing.(よいものでも、多すぎれば、かえって不快や害のもとになる)
【類義語】
・過ぎたるは猶及ばざるが如し(すぎたるはなおおよばざるがごとし)
「薬も過ぎれば毒となる」の語源・由来
「薬も過ぎれば毒となる」のもとにあるのは、病気を治すための薬にも適切な量があり、必要以上に用いれば、かえって体を害するという身近な経験です。薬そのものを悪いものとするのではなく、よい働きをするものにも限度があることを教えています。
この考えを表す古い用例は、江戸時代初期の笑話集『醒睡笑(せいすいしょう)』(1623年・江戸時代初期、安楽庵策伝著)に出てきます。『醒睡笑』は、それ以前から伝わっていた数多くの笑い話を集めた書物で、巻五には、酒飲みにまつわる話をまとめた「上戸(じょうご)」が収められています。
その第十四話は、「薬さへ過ぐれば毒となる」という言葉で始まります。「さへ」は現在の「さえ」に当たり、病気を治す薬でさえ、度を越せば毒になるという意味を強く表しています。
話の中では、大きな杯で何杯も酒を飲む人物に対し、ある人が、薬でさえ過ぎれば毒となるのだから、体を熱くする酒をそのように飲み続ければ、脾胃(ひい:消化にかかわる内臓)を損なうと戒めます。そして、飲む量を決め、誓文(せいもん:神仏に誓うこと)を立てるよう勧めます。
酒飲みは、「ひやしる椀で三杯ずつ飲む」と誓います。ところが、三日もたたないうちに、冷酒を汁椀で三杯飲み、「冷、汁椀で三杯」と言葉を切って解釈したため、誓いには背いていないと言い張ります。
この笑い話では、酒の飲みすぎを薬と毒の関係によって戒めるだけでなく、せっかく限度を定めても、言葉を都合よく解釈して守らなければ意味がないことも描いています。体によいことを知っているだけでは足りず、実際に節度を守ることが大切だという教訓が、笑いの中に込められています。
『醒睡笑』の「薬さへ過ぐれば毒となる」と、現在の「薬も過ぎれば毒となる」とでは、助詞や言葉の形が少し異なります。「さへ」が「も」に、「過ぐれば」が「過ぎれば」に変わっていますが、薬でさえ量を越せば害になるという意味は共通しています。
古い用例では、実際に酒を飲みすぎて体を損なう場面に用いられていました。その後は意味が広がり、薬や酒だけでなく、勉強、運動、働くこと、親切、用心など、本来はよいものが過度になり、目的とは反対の害を招く場合にも使われるようになりました。
同じ教訓を表す言葉に、『論語(ろんご)』に由来する「過ぎたるは猶及ばざるが如し」があります。こちらは、やりすぎることは足りないことと同じようによくないと説く言葉で、「薬も過ぎれば毒となる」と同じく、物事には程よい限度が必要であることを教えています。
したがって、このことわざは、勉強や運動などを控えるよう勧めるだけの言葉ではありません。何のために行うのかを忘れず、よい働きを保てる範囲を見極めることの大切さを、「薬」と「毒」という対照的な言葉によって、分かりやすく伝えています。
「薬も過ぎれば毒となる」の使い方




「薬も過ぎれば毒となる」の例文
- 毎晩遅くまで勉強して体調を崩した弟に、母は薬も過ぎれば毒となると諭した。
- 健康のための運動でも、休まず続けて膝を痛めれば、薬も過ぎれば毒となる。
- 友人を心配するあまり行動を細かく指図するのは、薬も過ぎれば毒となるの例だ。
- 祭りを華やかにしようと飾りを増やしすぎ、通路をふさいでは、薬も過ぎれば毒となる。
- 品質を高めるための確認作業も、何度も重ねて納期を逃せば、薬も過ぎれば毒となる。
- 安全を守る規則を増やしすぎて必要な活動までできなくなれば、薬も過ぎれば毒となるというものだ。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・安楽庵策伝著、鈴木棠三校注『醒睡笑 上・下』岩波書店、1986年。
・安楽庵策伝『醒睡笑』1623年。























