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【月と鼈】の意味と使い方や例文(由来・類義語・英語)

月と鼈

【ことわざ】
月と鼈

【読み方】
つきとすっぽん

【意味】
二つのものを比べたら、あまりにちがっていることのたとえ。

【語源・由来】
すっぽんはカメににた生き物で甲羅こうらが丸い。月もすっぽんも、どちらも丸い形をしているが、美しさがまったくちがう(月は夜空でかがやくが、すっぽんはどろの中にひそんでいる)ことから。

【類義語】
・雲泥の差
・雲泥万里
・烏と鷺
・鯨と鰯
・霄壌の差
・駿河の富士と一里塚
・提灯に釣鐘
・天と地
・灯心に釣鐘
・鍋蓋とすっぽん
・箸に虹梁
・瓢箪に釣鐘
・雪と墨

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「月と鼈」の使い方

健太
今日は素敵なコートを着ているね。
ともこ
ありがとう。自分へのご褒美に奮発して買っちゃったの。
健太
でも、色といい見た目といい、去年着ていたものとそっくりじゃないか。
ともこ
そんなことないわ。高かっただけあって、着心地は月と鼈よ。
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「月と鼈」の例文

例文
  1. 同じ高校を卒業したが、今や外科医の彼とフリーターの僕じゃ、月と鼈である。
  2. 渡されていたお見合い写真と比べたら、実際の彼女は月と鼈の差であり驚いた。
  3. 健太くんとぼくは同じ空手教室に通っているけれど、実力は月と鼈だ。ぼくも頑張りたい。
  4. 肉は肉でも、安売りしている牛肉とA5ランクの高級和牛では、月と鼈の差がある事ぐらい分かるだろう。
  5. 鈴木くんは、ぼくと体型が似ているのに懸垂が20回できる。ぼくはやっと5回。月と鼈だ。
  6. あの兄弟は二人とも男前だが、学業の点だけで見れば、月と鼈である。
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北村孝一コラム:“月とすっぽん” のコントラスト

助手ねこ
ことわざ研究者でことわざ学会代表理事の北村孝一先生に、「月とすっぽんについてコラムを書いてもらったニャン。
北村孝一先生
北村孝一です。このコラムでは、“月とすっぽん” のコントラストについて解説しますね。

“月とすっぽん” のコントラスト

「月とすっぽん」--たいていの人が知っていて、耳にしたことがあり、時には使ったこともあることわざでしょう。初めて聞いたときから、印象にのこりやすい表現です。「お月さまとすっぽん」とも言いますね。

ことわざの意味は、二つのもの〔あるいは人〕について、あまりに隔たりが大きく、比べものにならないということです。また、二つのもの〔多くは人や家など〕の取り合わせが釣り合いがとれないということにもなります。

月は天にあって、夜空に美しい姿で輝き、清らかな光をはなちます。もう一方のすっぽんは、池や川などの泥の中をはいずりまわり、食らいついたら放さないものとされています。両者の視覚的イメージにはまさに天地の差があり、音声としても「ツキ」は格調高く感じられるのに対し、「スッポン」は俗っぽく、滑稽(こっけい)に響くこともあります。

月とすっぽんの取り合わせは、しいて言えば、まるいという点で、いくらか共通性がないわけではありませんが(関西では、すっぽんのことを「まる」と呼んでいました)、イメージにあまりに大きな隔たりがあり、極端なコントラストをなしています。

用例を少しみてみましょう。高峰秀子は、子役として人気を博し、やがて大人の役を演じ半世紀にわたって活躍した昭和の大女優ですが、かつて七本の映画で共演した入江たか子について、次のように回想しています。

「…東坊城(ひがしぼうじょう)子爵のお姫(ひい)さまであった入江たか子は、その容姿、品格、人柄と三拍子そろった類まれな大型美人であった。片やおっとりと育ちのよいお姫さま、片やイジイジと育ちの悪いやくざ娘、なにからなにまで月とスッポンほど違うのに、なぜか二人は気が合って、私の東宝時代は入江たか子ベッタリ、〈略〉彼女もまた優しい姉のように私をいつくしんでくれた。」(高峰秀子『私の渡世日記』)

高峰秀子は、入江たか子を「月」にたとえて最大限の敬意をあらわし、自らは「スッポンほど違う」と謙虚(けんきょ)に卑下(ひげ)しています。この本を書いた頃、高峰は多くの名作映画で主演した大女優でしたが、すこしも驕(おご)ることなく、好感が持てるスタンスです。このことわざを引いて自分のことをいう場合に、学ぶべき心構えといえるでしょう。逆に、自分のことを月になぞらえたら、どんなに立派な人でも鼻持ちならない人になってしまいますね。

もう一つ、このことわざをめぐる作家のエピソードを紹介しておきましょう。夏目漱石といえば誰もが認める文豪ですが、まだ漱石と名乗っていない若い頃の話です。
「あの女(ひと)なら大変な美人で、君なんかとは月と鼈(スッポン)ほどの違いで、不つりあいも甚(はなはだ)しいじゃないか」と知人にいわれた漱石は、「そんなこと言うんなら絶対にもらわない」と縁談を断わったというのです(夏目鏡子『漱石の思い出』)。

鏡子夫人が「一説には」と断わった上での話なので、真偽のほどは不明ですが、評判の美女を「月」にたとえるのはよいとして、面と向かって「スッポンのほどの違い」と言われた漱石は、さすがに冷静ではいられなかったのかもしれません。ことわざは、日常のことば以上の威力を発揮することがあります。軽い気持ちで口にした表現でも、言われた側は、心穏やかではいられない場合があることは記憶にとどめておいてよいでしょう。

外国の類例をみると、「天と地の違いだ」(中国)や「昼と夜だ」(フランス)など、もっともではあるけれど、やや抽象的で、具体的なイメージが浮かびにくいものが目につきます。これに対し、日本の「月とすっぽん」は、イメージが具体的でわかりやすく、コントラストが鮮明で、視覚だけでなく五感に直接うったえるものがあるのではないでしょうか。(2025/9/30)

「月と鼈」を英語で言うと?

英語のことわざ

「月と鼈」の英語表現をご紹介します。

※英語の声:音読さん

as different as night and day

  • 直訳:夜と昼くらい違う

There’s no comparison.

  • 直訳:比較のしようがない。

poles apart

  • 直訳:かけ離れた極

as different as chalk and cheese

  • 直訳:チョークとチーズくらい違う

apples and oranges

  • 直訳:リンゴとオレンジ




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