【ことわざ】
内閻魔の外恵比須
【読み方】
うちえんまのそとえびす
【意味】
家の中ではいかめしい顔をして威張るのに、外ではにこやかで愛想がよい人のたとえ。


【英語】
・a saint abroad and a devil at home(外では立派に見えるが、家ではひどい人)
【類義語】
・内弁慶の外地蔵(うちべんけいのそとじぞう)
・内広がりの外すばり(うちひろがりのそとすばり)
「内閻魔の外恵比須」の語源・由来
「内閻魔の外恵比須」は、家の内と外で態度が大きく変わる人を、二つの顔にたとえたことわざです。家の中では「閻魔顔」、外では「恵比須顔」という対比によって、身近な人ほど厳しく扱われる不公平さを表します。
「内」は、仕切られた内側だけでなく、自分が属する家や家庭を表す言葉としても使われます。このことわざの「内」は、家庭や家族の前を指すと読むと、意味が分かりやすくなります。
一方、「外」は、家の外、つまり世間や他人の前を指します。「内」と「外」を並べることで、同じ人が家庭内と世間でまったく違う態度を見せる様子が、くっきりと表されています。
「閻魔」は、もとはインドの神ヤマに由来する仏教語で、死者の生前の行いを裁く地獄の王を指します。日本では、『日本霊異記(にほんりょういき)』(弘仁年間、810〜824年ごろ成立・平安時代前期、景戒著)にも「死して琰魔の国に至る」という形で早くから現れます。
閻魔は、罪を裁く王として恐ろしい姿で想像されることが多く、そのイメージから「閻魔顔」という言い方が生まれました。「閻魔顔」は、閻魔王のような恐ろしい顔つきをいう言葉です。
「閻魔顔」の古い用例には、虎明本狂言の「胸突」(室町末〜近世初)に見える「あど道すがらかる時のぢざうがほになす時のゑんまがほと申」があります。これは、借りる時は地蔵のような顔をし、返す時には閻魔のような顔をするという意味の言い方です。
「恵比須」は、七福神の一神で、商売繁盛や豊漁・豊作をもたらす福徳の神です。烏帽子をかぶり、釣り竿を持ち、鯛を抱えた姿で表されることが多い神として親しまれてきました。
「恵比須顔」は、恵比須神の顔のように、にこにこしている顔や、円満で福々しい顔を指します。江戸時代前期の俳諧撰集『鷹筑波集』(1642年刊、西武編。1638年に貞徳の序)には、「詠てやゑびす顔する桜鯛」という用例があり、早くからにこやかな顔のたとえとして使われていました。
このように、「閻魔顔」は恐ろしい顔、「恵比須顔」はにこにこした顔を表し、二つは反対の顔つきとして理解されてきました。「内閻魔の外恵比須」は、この対照を、家庭内と世間での態度の違いに重ねた言い方です。
似たことわざに「内弁慶の外地蔵」がありますが、こちらは家では威張り、外では気が小さくおとなしいことを表します。「内閻魔の外恵比須」は、外で弱くなるというより、外では愛想よく、にこやかにふるまう点に重みがあります。
そのため、このことわざは、ただ性格が二面的だというだけでなく、身近な人には厳しく、よその人にはよい顔をするという態度の偏りを言い表します。現在の意味も、閻魔と恵比須という二つの顔の対比から、自然につながっています。
「内閻魔の外恵比須」の使い方




「内閻魔の外恵比須」の例文
- 近所では評判のよい人だが、家族には厳しすぎて、内閻魔の外恵比須と言われている。
- 店ではにこやかな店主も、家ではすぐに怒るので、内閻魔の外恵比須そのものだ。
- 会社の同僚には親切なのに、家族には命令口調ばかりで、内閻魔の外恵比須と受け取られても仕方がない。
- 祖父は客の前では笑顔を絶やさないが、家では不機嫌な顔が多く、内閻魔の外恵比須のようだった。
- 外では人当たりがよい父が、家では細かなことで怒るため、姉は内閻魔の外恵比須だとこぼした。
- 内閻魔の外恵比須にならないよう、身近な人にもていねいに接することが大切だ。
主な参考文献
・公益財団法人日本漢字能力検定協会編『漢検漢字辞典 第二版』日本漢字能力検定協会、2014年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・上田正昭ほか監修『日本人名大辞典』講談社、2001年。
・景戒『日本霊異記』弘仁年間(810〜824年ごろ)成立。
・西武編『鷹筑波集』1642年刊。
・虎明本狂言『胸突』室町末〜近世初。
・John Bunyan, The Pilgrim’s Progress, 1678.























