【ことわざ】
馬には乗ってみよ人には添うてみよ
【読み方】
うまにはのってみよひとにはそうてみよ
【意味】
馬のよしあしは乗ってみなければ分からず、人柄のよしあしも親しくつきあってみなければ分からない。何事も自分で経験してから判断せよという教え。


【英語】
・The proof of the pudding is in the eating(物事のよしあしは実際に試してみて分かる)
・Seeing is believing(見ることによって信じられる)
【類義語】
・百聞は一見に如かず(ひゃくぶんはいっけんにしかず)
・論より証拠(ろんよりしょうこ)
【対義語】
・食わず嫌い(くわずぎらい)
「馬には乗ってみよ人には添うてみよ」の語源・由来
「馬には乗ってみよ人には添うてみよ」は、馬と人を並べて、実際に関わってみなければ本当のよしあしは分からないという考えを表したことわざです。馬は見た目だけでは走り方や扱いやすさが分からず、人も外から見ただけでは人柄や相性が分からない、という身近なたとえから成り立っています。
ここでいう「添うてみよ」は、人に寄り添って親しく交わってみよ、または共に過ごしてみよという意味を含みます。単に近くにいるというだけでなく、実際につきあい、生活や仕事の中で相手の本質に触れてみることを表します。
このことわざには、「人には添うてみよ馬には乗ってみよ」という、順序の異なる形もあります。意味は同じで、人についても馬についても、外見や評判だけで決めず、自分で関わって確かめることをすすめています。
古い用例としては、狂言(きょうげん)『縄綯(なわない)』に近い形が出てきます。狂言は、中世の庶民の日常生活を明るく描いた、せりふを中心とする喜劇で、人間の失敗やおかしみを笑いの中に表す芸能です。
『縄綯』は、主人から手紙を預かった太郎冠者が何某の家へ行き、自分が主人の博奕の借金のかたにされたことを知る話です。太郎冠者はふてくされて働かず、やがて縄を綯うよう命じられ、隠れている何某の家の悪口を言いながら縄を綯い、追われるという筋をもつ狂言です。
その『縄綯』の波形本狂言(室町末〜近世初)には、「惣じて人にはそふて見よ馬には乗って見よと申すが」という形が出てきます。これは、現在の「馬には乗ってみよ人には添うてみよ」と語順は逆ですが、親しく交わってみなければ人の本質は分からず、実際に試してみなければ本当のことは分からない、という意味をすでに示しています。
この古い形では、「人にはそふて見よ」が先に置かれています。人との関わりを先に出すことで、相手を外見やうわさだけで判断しないことが強く示されています。
一方、現在よく用いられる「馬には乗ってみよ人には添うてみよ」は、馬のよしあしを乗って確かめるという、目に浮かびやすいたとえから始まります。そのため、続く「人には添うてみよ」の意味も、実際に関わってみて初めて分かるという方向へ自然につながります。
「馬」は、外から姿を見ただけでは分からない性質をもつものの代表です。体つきがよく見えても乗りにくい馬もあれば、見た目は目立たなくてもよく働く馬もあります。この具体的な経験が、人や物事を判断するときのたとえになりました。
「人」についても同じです。第一印象だけで相手を決めつけると、その人の誠実さ、働きぶり、思いやり、相性などを見落とすことがあります。そこで、このことわざは、見ただけ、聞いただけで判断せず、実際につきあってから考えることを教えています。
後には、人間関係だけでなく、仕事、学び、道具、土地、方法など、さまざまな物事にも広げて使われるようになりました。何事も実際に働きかけて試してみなければ本当のことは分からない、という教えとして受け取られています。
このことわざは、何でも軽く試せばよいという意味ではありません。大切なのは、見た目や評判だけで早く決めつけず、できる範囲で自分の経験を通して確かめる姿勢です。そこに、「馬には乗ってみよ人には添うてみよ」の落ち着いた教訓があります。
「馬には乗ってみよ人には添うてみよ」の使い方




「馬には乗ってみよ人には添うてみよ」の例文
- 馬には乗ってみよ人には添うてみよというから、第一印象だけで友人を決めつけない。
- 新しい仕事は難しそうに見えたが、馬には乗ってみよ人には添うてみよで、まず一度引き受けてみた。
- 馬には乗ってみよ人には添うてみよと思い、評判だけでなく自分で店を訪ねて判断した。
- 転校生は無口に見えたが、馬には乗ってみよ人には添うてみよで、一緒に係をしてみると親切な人だと分かった。
- 道具の使いやすさは、馬には乗ってみよ人には添うてみよで、実際に手に取らなければ分からない。
- 馬には乗ってみよ人には添うてみよを心に留め、うわさだけで相手を避けるのはやめた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・『波形本狂言』「縄綯」室町末〜近世初。
・公益社団法人能楽協会『狂言の基礎知識』。
・Cambridge University Press『Cambridge Dictionary』。























