【故事成語】
快刀乱麻を断つ
【読み方】
かいとうらんまをたつ
【意味】
もつれた物事や紛糾した問題を、すばやく鮮やかに処理すること。


【英語】
・cut the Gordian knot(難しい問題を大胆で直接的な方法で解決する)
【類義語】
・快刀乱麻(かいとうらんま)
・一刀両断(いっとうりょうだん)
【対義語】
・優柔不断(ゆうじゅうふだん)
「快刀乱麻を断つ」の故事
この故事成語のもとには、よく切れる刀で、複雑にもつれた糸や麻を一気に断つという具体的な場面があります。中国語の形では「快刀斬亂麻」といい、古い形としては「快刀斬亂絲」とも結びつき、後には「果断で素早い方法で、入り組んだ問題を解決する」という意味で用いられるようになりました。
古い背景の一つに、三国時代の呉の謝承『後漢書』に出てくる方儲の話があります。この話は、北宋の李昉らが編んだ『太平御覧(たいへいぎょらん)』(983年成立)に引用されており、方儲が「文武兼備」であることを示したあと、章帝から乱れた糸を整えるよう命じられ、佩刀でそれを断ち、「反經任勢,臨事宜然」と答えたと記されています。
この場面で大切なのは、もつれた糸を一本ずつほどくのではなく、状況に合った思い切った処置をとった点です。ただし、この段階で出てくるのは「亂絲」であり、現在の日本語で定着している「乱麻」とは表記が異なります。ここから、「乱れた糸を刀で断つ」という発想が、後の「快刀乱麻」という言い方へつながっていったと考えられます。
もう一つ、よく知られている故事は『北斉書(ほくせいしょ)』巻四「文宣帝紀」に出てくる高洋(こうよう)の話です。『北斉書』は、唐の李百薬が撰した北斉の正史で、636年に完成した史書です。
北斉(ほくせい)のもとを築いた高歓(こうかん)は、息子たちの判断力を試そうとして、それぞれに乱れた糸を整えさせました。高洋だけは刀を抜いてその糸を斬り、「亂者須斬」、つまり「乱れたものは斬らなければならない」と言い、高歓はその答えをよしとしました。
この高洋は、のちに北斉の初代皇帝である文宣帝(ぶんせんてい)となった人物です。『北斉書』では、彼が高歓の第二子であることも記されており、この逸話は、幼いころから物事の急所を大胆につかむ人物として描く場面の一つになっています。
この故事の「刀で断つ」という行動は、ただ乱暴に切るというだけではありません。複雑にからみ合って、普通のやり方ではなかなか解けない問題に対して、ためらわずに核心を処理するという意味へ広がりました。そのため、現在の「快刀乱麻を断つ」は、困難な問題を鮮やかに解決することをほめる表現として使われます。
日本語では、「快刀乱麻を断つ」という形のほか、「快刀乱麻」と短く用いる形もあります。明治30年の評論にも「快刀乱麻を断つ」の例があり、近代以降の文章では、批評・政治・仕事・人間関係など、こじれた問題を一気に処理する場面に広く用いられるようになりました。
「快刀乱麻を断つ」の使い方




「快刀乱麻を断つ」の例文
- 新しい校長は、長年もめていた部活動の時間割問題を快刀乱麻を断つように整理した。
- 社長は赤字の原因を見抜き、無駄な会議を減らして快刀乱麻を断つ手腕を見せた。
- ともこちゃんの提案は、班の意見が割れていた遠足計画を快刀乱麻を断つものだった。
- 弁護士は複雑な相続問題を一つずつ整理し、最後は快刀乱麻を断つ解決案を示した。
- 町内会の祭りの準備で混乱が続いたが、経験豊かな会長が快刀乱麻を断つように役割を決めた。
- 編集長は入り組んだ原稿の構成を見直し、快刀乱麻を断つ判断で記事を読みやすくした。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・飯間浩明編『四字熟語を知る辞典』小学館、2018年。
・Merriam-Webster編『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster.
・謝承『後漢書』。
・李百薬撰『北齊書』636年。
・李昉等撰『太平御覽』983年。























