【ことわざ】
うろこ雲は雨
【読み方】
うろこぐもはあめ
【意味】
うろこ雲が現れると、やがて雨になりやすいという天気の言い伝え。


【英語】
・Mackerel sky, not twenty-four hours dry(魚の鱗のような雲が出れば、二十四時間以内に雨になりやすい)
【類義語】
・鯖雲は雨(さばぐもはあめ)
「うろこ雲は雨」の語源・由来
「うろこ雲は雨」は、空に現れる雲の形と、その後の天気との関係を、経験から言い表したことわざです。天気予報が発達する以前、人々は雲や風、空の色などの変化を観察し、農作業や漁、旅の予定を決める手掛かりにしてきました。
「うろこ雲」は、白い小さな雲が、魚の鱗のように規則正しく並ぶ雲を指します。気象上は、空の高い所にできる巻積雲(けんせきうん)に当たり、鰯雲(いわしぐも)や鯖雲(さばぐも)とも呼ばれます。
「うろこ雲」という呼び名の古い用例には、有島武郎の小説『或る女』(大正8年、有島武郎著)にある「鱗雲で飾られた青空を仰いだ」があります。ここでは、細かな雲が青空を飾るように広がる様子を、魚の鱗に見立てています。
ただし、同じ種類の雲を雨の兆しと見る考えは、「うろこ雲」という呼び名よりも古くからありました。中世には、巻積雲を「水増雲(みずまさぐも)」と呼び、雨の前兆となる雲とみなしていました。
慈円の和歌を尊円法親王が編んだ『拾玉集(しゅうぎょくしゅう)』(1346年・南北朝時代)には、「末はれぬ水まさ雲にもる月をむなしく雨の夜半やおもはむ」とあります。水増雲の間から漏れる月を眺めながら、空は晴れず、雨の夜になるのだろうかと詠んだ歌です。
江戸時代前期の俳諧集『薦獅子集(こもじししゅう)』(1693年)には、「鰯雲鯛も蚫も籠りけり〈北枝〉」という句があります。「鰯雲」は、巻積雲の古くからの呼び名で、イワシの大漁だけでなく、暴風雨の前兆ともいわれてきました。
このように、現在の「うろこ雲は雨」という形が、そのまま中世から使われ続けたわけではありません。しかし、魚の鱗に似た高い雲を雨や荒天の兆しと見る考えは、水増雲、鰯雲、鯖雲、うろこ雲と、呼び名を変えながら長く伝わってきました。
後には、「うろこ雲がでると雨」「うろこ雲が出たら二日のうちに雨か風」「うろこ雲が出たら三日のうちに雨」など、時期や地域によって少しずつ異なる形で言い伝えられました。「うろこ雲は雨」は、これらと同じ経験則を、短く覚えやすくまとめた表現です。
このことわざには、気象の仕組みにもとづく理由があります。温帯低気圧が近づくときには、まず空の高い所に巻雲や巻積雲が広がり、やがて巻層雲、高層雲へと変化して、雲が次第に低く、厚くなることがあります。
うろこ雲そのものが、すぐに地上へ雨を降らせるわけではありません。遠くにある低気圧や前線の接近によって上空の空気が変化し、その最初の兆しとして巻積雲が現れ、低気圧や前線がさらに近づくと、雨になりやすくなります。
そのため、うろこ雲が現れても、必ず雨になるとは限りません。雲が広がり続けるか、低く厚い雲へ変わるか、風が強まるかなど、その後の空の変化も合わせて見ることが大切です。
「うろこ雲は雨」は、美しい空の模様から天気の変化を読み取り、早めに備えようとした昔の人々の知恵を伝えることわざです。長年の観察による経験と、低気圧や前線に伴う雲の変化とが結び付いた言葉です。
「うろこ雲は雨」の使い方




「うろこ雲は雨」の例文
- 祖父は空一面の細かな雲を見て、うろこ雲は雨だと傘を用意した。
- うろこ雲は雨というため、農家では刈り取った稲を早めに納屋へ運んだ。
- 遠足の前日にうろこ雲を見つけ、うろこ雲は雨という言葉を思い出した。
- 漁師たちは、うろこ雲は雨と用心し、出港前に天気予報を確かめた。
- うろこ雲は雨というが、空の変化を見守りながら祭りの準備を進めた。
- 洗濯物を干そうとした母は、うろこ雲は雨だから早めに取り込もうと考えた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・関東小型船安全協会編『気象海象のはなし』関東小型船安全協会、2007年。
・富山県総合教育センター『ことわざから学ぶ、天気の話』。
・慈円詠、尊円法親王編『拾玉集』1346年。
・『薦獅子集』1693年。
・有島武郎『或る女』1919年。
・Hong Kong Observatory, “Mackerel Sky, Not Twenty-Four Hours Dry,” 2022.























