【ことわざ】
兎も七日なぶれば噛み付く
【読み方】
うさぎもなぬかなぶればかみつく
【意味】
どれほどおとなしい人でも、何度もいじめられたり辱められたりすれば、ついには怒って反抗するというたとえ。


【英語】
・The worm will turn(どれほど弱くおとなしい者でも、耐え難い扱いを受け続ければ反抗する)
【類義語】
・仏の顔も三度(ほとけのかおもさんど)
・堪忍袋の緒が切れる(かんにんぶくろのおがきれる)
「兎も七日なぶれば噛み付く」の語源・由来
「兎も七日なぶれば噛み付く」は、おとなしいと思われている兎であっても、長く苦しめられれば、ついには相手に噛み付くという見立てから生まれたことわざです。その姿を人間に重ね、温厚な人にも我慢の限度があることを表しています。
このことわざの「兎」は、単に動物の名を示すだけではありません。ふだんは争いを好まず、強く反抗しない者のたとえとして置かれ、その兎が噛み付くことで、怒りが限界に達したことを強く印象づけています。
「なぶる」は、相手が困るのを面白がってからかうことや、弱い立場の人をいじめ、思うままにもてあそぶことを表します。単に冗談を言うのではなく、相手の苦しみを顧みずに扱うという厳しい意味をもつ言葉です。
「なぶる」という言葉は古く、『日本霊異記(にほんりょういき)』(810〜824年ごろ成立、平安時代初期、景戒撰)中巻に、「嬲」の字を「ナブル」と読む用例が出てきます。この用例では、相手の意思を押さえつけ、無理に苦しめる行為を表しています。
この段階では、ことわざ全体ではなく、その核となる「なぶる」という言葉がすでに用いられていました。「嬲る」という古い表記は読み取りにくいため、現在のことわざでは、一般に「なぶれば」と仮名で書かれます。
「七日」は、文字どおり七日目に必ず兎が噛み付くという、生態上の決まりを表したものではありません。何日も続けて苦しめること、つまり、我慢を強いられる状態が長く続くことを、分かりやすい数字で示しています。
同じ発想をもつ形には、「兎も三年なぶりゃあ食いつく」や「なぶれば兎も食いつく」があります。日数や語順に違いがあることからも、重要なのは「七日」という正確な長さではなく、度重なる仕打ちによって、ついには反抗するという流れであることが分かります。
「噛み付く」と「食いつく」も、ここでは同じ働きをしています。おとなしく耐えていた者が、ただ怒るだけでなく、相手に向かって反撃したり、はっきりと抗議したりする段階に至ったことを表します。
表記には、「兎も七日なぶれば嚙み付く」と「兎も七日なぶれば噛み付く」があります。「嚙」と「噛」は字体が異なりますが、このことわざでは、同じ「かむ」という意味で用いられます。
このことわざは、特定の人物や事件を描いた中国の故事をもとにしたものではなく、兎の姿を借りて、人の忍耐と怒りを表した教訓的なたとえです。相手がおとなしく見えるからといって、何をしても反抗しないと思い込むことの危うさを戒めています。
「仏の顔も三度」が、温厚な者でも無礼を重ねられれば怒ることを表すのに対し、「兎も七日なぶれば噛み付く」は、弱く見える者が長く苦しめられた末に反抗する姿を、より具体的に描いています。また、「堪忍袋の緒が切れる」とも、我慢が限界に達するという点で意味が重なります。
したがって、このことわざには、耐えている人の怒りを表すだけでなく、人をしつこくからかったり、弱い立場につけ込んだりしてはならないという教えも込められています。相手の沈黙を、苦しんでいない証拠だと決めつけてはならないことを伝える言葉です。
「兎も七日なぶれば噛み付く」の使い方




「兎も七日なぶれば噛み付く」の例文
- 祖父は、温厚な人でも侮辱を重ねられれば怒るものだと、兎も七日なぶれば噛み付くを引き合いに出した。
- 友人を毎日のようにからかう弟に、母は兎も七日なぶれば噛み付くと注意した。
- 兎も七日なぶれば噛み付くというように、おとなしい彼も度重なる嫌がらせには黙っていなかった。
- 部下が反論しないのをよいことに責め続ければ、兎も七日なぶれば噛み付くという事態になりかねない。
- 住民の不満を軽く扱い続けた結果、兎も七日なぶれば噛み付くの言葉どおり、強い抗議が起こった。
- 兎も七日なぶれば噛み付くのだから、おとなしい相手ほど我慢させてよいと考えてはならない。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・景戒『日本霊異記』810〜824年ごろ。























