【故事成語】
勢いを以て交わる者は勢い傾けば即ち絶ゆ
【読み方】
いきおいをもってまじわるものはいきおいかたむけばすなわちたゆ
【意味】
地位や権力の強さをあてにして結ばれた交わりは、その力が衰えるとたちまち切れてしまうこと。うわべの交際は長続きしないというたとえ。


【英語】
・Friendships built on power end when power declines(力や地位で結ばれた友情は、その力が衰えると終わる)
・Ties based on influence break when influence fades(勢力に頼る結びつきは、その勢いが消えると切れる)
・A friendship of convenience does not last(都合で結ばれた交際は長続きしない)
【類義語】
・利を以て交わる者は利窮まれば即ち散ず(りをもってまじわるものはりきわまればすなわちさんず)
・酒肉朋友(しゅにくのほうゆう)
・門前雀羅を張る(もんぜんじゃくらをはる)
【対義語】
・管鮑の交わり(かんぽうのまじわり)
・刎頸の交わり(ふんけいのまじわり)
・金蘭の契り(きんらんのちぎり)
「勢いを以て交わる者は勢い傾けば即ち絶ゆ」の故事
この故事成語は、中国の思想書『中説』に伝わる言葉です。人と人との交わりが何によって成り立っているのかを、たいへん鋭く言い当てた一節として知られています。
この句は、もともと単独で語られるものではなく、「利を以て交わる者は利窮まれば即ち散ず」という言葉と並んで語られます。力によって結ばれた関係は、その力が衰えれば切れ、利益によって結ばれた関係は、利益が尽きれば散る、という意味です。
ここでいう「勢い」は、元気のよさや物事のはずみではありません。地位、権力、後ろだて、世の中での強さといった、人を引きつける外側の力を指しています。
そのため、この故事成語が言っているのは、ただ友だちが減る、という話ではありません。相手の立場が高いあいだだけ近づき、その立場が弱くなると離れていくような、薄い交わりのことです。
この考え方は、中国の古い書物にしばしば出てくる、人情への深い観察とも重なります。人は力のある者のもとには集まりやすい一方で、その力が失われると態度を変えやすい、という現実を見つめた言葉なのです。
似た内容は、『史記』に出てくる有名な話にも通じます。役人として栄えていたときには客が門にあふれていたのに、職を失うと人が去ってしまった、という場面が語られ、うわべの交際のはかなさが強く印象づけられています。
こうした背景があるため、この故事成語は、たんに交際が終わることを言うのではなく、何を土台にして人とつながっていたのかを問い返す言葉となりました。力そのものよりも、その力に寄りかかった人間関係の危うさを示しているのです。
日本でも、中国の古典を学ぶ中で、この句は広く知られるようになりました。とくに、交友のあり方を考える教えとして、漢文の学びや教訓的な文章の中で大切にされてきました。
今の社会でも、この言葉は古びていません。会社で役職が下がったとき、人気者でなくなったとき、家の勢いが変わったときに、まわりの人の態度まで変わるなら、この故事成語が当てはまります。
反対に、立場が変わっても変わらず支える人がいるなら、その関係は勢いだけで結ばれていたのではないと言えます。だからこの句は、人づきあいの冷たさを嘆くだけでなく、ほんとうの交わりとは何かを考えさせる言葉でもあります。
この故事成語が今も心に残るのは、人のつながりの値打ちを、いちばん分かりやすい形で示しているからです。力があるときに寄ってくる人ではなく、力が傾いたときにも離れない人こそ、ほんとうに大切な相手だと教えているのです。
「勢いを以て交わる者は勢い傾けば即ち絶ゆ」の使い方




「勢いを以て交わる者は勢い傾けば即ち絶ゆ」の例文
- 選挙で勝っていたあいだだけ集まっていた仲間が去ったので、勢いを以て交わる者は勢い傾けば即ち絶ゆという言葉が胸に浮かんだ。
- 家業が栄えていたころに親しかった人が離れていった様子は、勢いを以て交わる者は勢い傾けば即ち絶ゆを思わせる。
- 部長の座を退いたあとに訪ねてくる人が減ったとき、勢いを以て交わる者は勢い傾けば即ち絶ゆの重さが分かった。
- 人気者でいるあいだだけ近づく交際は、勢いを以て交わる者は勢い傾けば即ち絶ゆというたとえに当たる。
- 権力者の失脚とともに取り巻きが散ったニュースを見て、勢いを以て交わる者は勢い傾けば即ち絶ゆという故事成語を思い出した。
- 本当に信頼できる友人かどうかは、勢いを以て交わる者は勢い傾けば即ち絶ゆという場面になったときに分かる。























