【故事成語】
帷幄の臣
【読み方】
いあくのしん
【意味】
主君のそばにあって作戦や計画を立て、これを補佐する臣。参謀。


【英語】
・close adviser(主君や指導者のそばで支える側近)
・chief strategist(作戦や計画を立てる中心的な参謀)
・strategic adviser(戦略面で支える助言役)
【類義語】
・入幕之賓(にゅうばくのひん)
・股肱之臣(ここうのしん)
・腹心之臣(ふくしんのしん)
【対義語】
・独断専行(どくだんせんこう)
・匹夫之勇(ひっぷのゆう)
「帷幄の臣」の故事
帷幄の臣は、中国の古い歴史の中で生まれた言い方です。帷と幄はどちらも幕のことで、軍中で大将のまわりを囲う幕や、とばりの内側の場所を指しました。
昔の戦では、指揮を執る人のいる場所を幕で囲い、その内側で大事な相談をしました。そこから帷幄は、ただの布の幕ではなく、作戦を考える本陣や中枢の場を表す言葉になりました。
この故事成語を考えるうえで欠かせないのが、秦の末から前漢の初めにかけて活躍した張良(ちょうりょう)です。張良は劉邦(りゅうほう)に仕え、知恵と計略で漢の建国を支えた功臣として知られます。
張良のはたらきは、自分が先頭に立って武勇を示すことより、主君のそばで情勢を見て、どう動けば勝てるかを考えるところにありました。主君の危機を救い、進むべき道を示し、遠い戦場の勝敗にも影響する助言を重ねた人物として伝えられています。
天下が定まったあと、劉邦は張良をほめて、帷幄の中で策をめぐらし、遠く離れた場所の勝敗を決する力では自分は張良に及ばない、という趣旨のことばを残しました。よく知られる形では、運籌帷幄之中、決勝千里之外と伝わっています。
このことばの大事な点は、勝負を決める力が、戦場の最前線だけにあるのではないと示しているところです。大将のそばで練られた一つ一つの策が、はるか遠くの戦いの結果を左右するという考えが、ここにははっきり表れています。
こうして帷幄は、主君や大将の近くで大事な計画を立てる場を意味するようになりました。そして、その場で知恵をめぐらし、主君を助ける臣下を指して、帷幄の臣という言い方が生まれました。
この語が表すのは、ただそばにいる家臣ではありません。信頼されて機密にあずかり、進むべき道を考え、主君の判断を支える参謀役であることが重要です。
また、この故事成語は張良という人物のイメージと強く結び付いています。日本語では『漢書(かんじょ)』の張良伝を出典として説明されることが多く、張良が参謀の代表のように受け止められてきたことがうかがえます。
後の時代には、軍事だけに限らず、主君や組織の長のそばで計画を立て、全体を動かす助言役にも広くたとえて使われるようになりました。表には出にくくても、物事の進み方を大きく左右する人を高く評価する語として生きています。
つまり帷幄の臣とは、目立つ働きよりも、中心のそばで知恵を尽くし、遠い結果にまで影響を与える人物をたたえる故事成語です。張良のように、主君の信頼を受けて全体の勝ち筋を考える人の姿が、この四字にこめられています。
「帷幄の臣」の使い方




「帷幄の臣」の例文
- 新しい生徒会長のそばで案を整理した副会長は、まさに帷幄の臣であった。
- 父の店を立て直すとき、売り方を考えた叔母が帷幄の臣となった。
- 名将の陰には、前線に立たずに勝ち筋を示す帷幄の臣がいた。
- 学級新聞の編集長を支え、記事の順番を組み立てた友人は帷幄の臣といえる。
- 新商品の発売では、表に出る社長より、計画を固めた帷幄の臣の働きが大きかった。
- 大きな交渉をまとめるには、代表者だけでなく、資料を整える帷幄の臣も欠かせない。























