【ことわざ】
犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ
【読み方】
いぬはみっかかえばさんねんおんをわすれぬ
【意味】
犬でさえ、わずか三日世話をされれば、その恩を長く忘れないということ。人間なら、受けた恩をなおさら忘れてはならないという戒め。


【英語】
・One good turn deserves another(親切には親切で報いるべきだ)
【類義語】
・恩を忘れる者は犬にも劣る(おんをわすれるものはいぬにもおとる)
【対義語】
・猫は三年の恩を三日で忘れる(ねこはさんねんのおんをみっかでわすれる)
・飼い犬に手を噛まれる(かいいぬにてをかまれる)
「犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ」の語源・由来
「犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ」は、犬が飼い主になつき、よく従う動物だという身近な観察から生まれたことわざです。犬でさえ少し世話を受ければ恩を忘れないのだから、人は受けた恩を忘れてはならない、という道徳的な戒めに広がりました。
このことわざでは、「三日」と「三年」が強い対比になっています。「三日」はごく短い期間、「三年」は長く続く期間を象徴する言い方で、実際に三日世話をすれば必ず三年覚えている、という意味ではありません。短い世話に対して、長く恩を忘れないというつり合わなさが、恩を大切にする気持ちを強く伝えています。
古い用例として、『譬喩尽(たとえづくし)』(1786年序、江戸時代後期、松葉軒東井編)にこのことわざが出てきます。『譬喩尽』は、ことわざや慣用句に近い表現を集め、いろは分けにした八巻八冊の書物で、江戸時代後期の言葉の使われ方を知るうえで重要な資料です。
『譬喩尽』に出る段階では、すでに「犬でさえ恩を忘れない」という発想が、単なる動物観察ではなく、人間のふるまいを戒めることわざとして使われていました。つまり、この言い方は、犬の忠実さをほめるだけでなく、恩知らずな人をたしなめるための言葉として定着していたといえます。
また、このことわざには「飼えば」のほかに「養えば」という形もあります。「飼う」は犬を手元に置いて世話をすることを表し、「養う」は食べ物を与えて育てる意味を強く表します。どちらの形でも、短い世話を受けた犬が長く恩を忘れない、という骨組みは変わりません。
後の時代には、猫と対比して語られる例もあります。豊島与志雄『書かれざる作品』(1933年)には、三日飼われて三年恩を忘れない犬と反対に、猫は三年飼われた恩を三日で忘れる、という趣旨の表現が出てきます。ここでは、犬の恩を忘れない性質と、猫の気ままさを対照させることで、犬の忠実さがよりはっきり示されています。
このように、「犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ」は、犬の性質を手がかりにしながら、人間の恩義の重さを説くことわざとして受け継がれてきました。現在では、助けてもらったことを忘れてはいけない、世話になった人には誠実に向き合うべきだ、という場面で使われます。
「犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ」の使い方




「犬は三日飼えば三年恩を忘れぬ」の例文
- 入学したばかりのころに助けてくれた友人への感謝を、犬は三日飼えば三年恩を忘れぬという言葉とともに思い出した。
- 祖父は、世話になった先生へ礼を尽くすべきだと言い、犬は三日飼えば三年恩を忘れぬと孫に教えた。
- 苦しい時に支えてくれた同僚の恩を忘れない姿は、犬は三日飼えば三年恩を忘れぬということわざに通じる。
- 犬は三日飼えば三年恩を忘れぬというのに、助けてくれた人を軽んじる態度は見苦しい。
- 小さな親切でも心に残す人を見ると、犬は三日飼えば三年恩を忘れぬという言葉の重みを感じる。
- 会社を去る前に、彼は犬は三日飼えば三年恩を忘れぬと考え、長年支えてくれた上司に丁寧に礼を述べた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・Merriam-Webster, Incorporated『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster, Incorporated。
・松葉軒東井編『譬喩尽』1786年序。
・豊島与志雄『書かれざる作品』1933年。























