【ことわざ】
犬にも食わせず棚にも置かず
【読み方】
いぬにもくわせずたなにもおかず
【意味】
けちな人のやり方のたとえ。人に分けることも、大切にしまうこともせず、自分だけのものにしようとするさま。


【英語】
・be stingy(けちで、出し惜しみする)
・a dog in the manger(自分では使わないものを、他人にも使わせない人)
【類義語】
・犬にもやらず棚にも置かず(いぬにもやらずたなにもおかず)
・犬にもくれず棚にも置かず(いぬにもくれずたなにもおかず)
・爪に火をともす(つめにひをともす)
【対義語】
・気前がよい(きまえがよい)
・大盤振る舞い(おおばんぶるまい)
「犬にも食わせず棚にも置かず」の語源・由来
「犬にも食わせず棚にも置かず」は、中国の古い故事に結びつく表現ではなく、日本の犬に関することわざの一つとして伝わる言い方です。犬に関することわざには、吠える、食べる、噛みつくなど、犬の行動を手がかりにして人間のふるまいをたとえるものが多く、このことわざも「食わせる」という動作を用いて、けちな人のやり方を表しています。
このことわざの形は、食べ物や品物を前にしたときの二つの扱い方を並べています。一つは、気前よく犬に与えてしまうことです。もう一つは、あとで使うために棚へ置き、大切にしまっておくことです。そのどちらもせず、自分だけのものにするところに、このことわざの皮肉があります。
「犬にも食わせず」の「食わせる」は、犬に食べさせるという直接の意味から、惜しまずに手放す動作を表しています。一方、「棚にも置かず」は、保存したり、きちんとしまったりする動作を表します。与えることもしない、しまうこともしないという二重の否定によって、ただ物を抱えこんで手放さない人の姿が浮かび上がります。
同じ発想は、「犬にもやらず棚にも置かず」「犬にもくれず棚にも置かず」という形でも伝わっています。「食わせず」「やらず」「くれず」は、いずれも相手に与えないことを表し、「棚にも置かず」と組み合わさることで、分けることも保存することもせず、ひたすら自分の手もとに置きたがる態度を強調します。
このことわざで大切なのは、ただ物を大事にしているという意味ではない点です。物を大切に使う倹約なら、棚に置いて保存することに当たります。しかし、この言い方では、そのように大切に扱うことさえせず、他人にも動物にも分けず、自分だけのものにしようとする点を問題にしています。そのため、節約をほめる言葉ではなく、物惜しみが強すぎるふるまいを批判する言葉として用いられます。
現在の使い方でも、食べ物だけに限らず、道具、資料、場所、機会などを独り占めし、他人に渡すことも、有効に使うこともしない場面に当てはまります。「犬にも食わせず棚にも置かず」は、単なる所有ではなく、役立てる道をふさいでまで抱えこむけちな態度を、短く印象的に言い表すことわざです。
「犬にも食わせず棚にも置かず」の使い方




「犬にも食わせず棚にも置かず」の例文
- 古い工具を使わないまま抱えこみ、近所にも貸さない祖父の態度は、犬にも食わせず棚にも置かずだった。
- 余ったお菓子を人に分けず、結局しけらせてしまうのは、犬にも食わせず棚にも置かずというものだ。
- 倉庫の紙を使わないのに他部署にも渡さないやり方は、犬にも食わせず棚にも置かずと批判された。
- 兄は読み終えた参考書を弟に貸さず、箱に入れたまま忘れていて、犬にも食わせず棚にも置かずだった。
- 地域の集会所の備品を一部の人だけで囲いこむのは、犬にも食わせず棚にも置かずのふるまいだ。
- 犬にも食わせず棚にも置かずにならないよう、使わない道具は必要な人に譲ることにした。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・馬場俊臣「『犬』に関することわざ(2)—『犬』をどう捉えてきたか—」『札幌国語研究』第25号、北海道教育大学国語国文学会・札幌、2020年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』Cambridge University Press。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster。























