【ことわざ】
一枚の紙にも裏表
【読み方】
いちまいのかみにもうらおもて
【意味】
一枚の薄い紙にも表と裏があるように、単純に見える物事にも複雑な事情があるということ。物事のうわべだけを見て、すぐに判断してはならないという戒め。


【英語】
・There are two sides to every question(どんな問題にも二つの見方がある)
【類義語】
・光あるところに影あり(ひかりあるところにかげあり)
「一枚の紙にも裏表」の語源・由来
「一枚の紙にも裏表」は、紙という身近で薄い物をもとにした、たいへん分かりやすいたとえです。紙は、植物繊維を水の中で薄く平らにからみ合わせ、乾燥させて作るものです。どれほど薄く平らに見える一枚の紙にも、こちらから見える面と、その反対側の面があります。
このことわざで大切なのは、「紙にも裏表がある」というごく当たり前の事実を、人間や社会を見る際の考え方に広げている点です。「裏表」は、もともと物の表面と裏面を指しますが、そこから、表に現れている事柄と裏に隠れている事情、また、一つの事柄がもつ異なる二つの面を指す場合にも使われます。
たとえば、だれかが約束の時間に遅れたとします。表だけを見れば、「時間を守らない人だ」と思えるかもしれません。しかし、その裏には、家族の急病や交通機関の乱れなど、やむをえない事情がある場合もあります。このことわざは、そうした隠れた事情を考えずに、見えたことだけで決めつける危うさを教えています。
「一枚の紙にも」という言い方には、「こんなに単純に見えるものにさえ」という意味を強める働きがあります。紙は、木や石のように厚みや重さのある物ではなく、日常で目にする薄いものです。その紙でさえ裏と表があるのだから、人の心、世の中の出来事、仕事の結果などには、なおさら、表だけでは分からない面があるという考えにつながります。
同じ考えは、「表裏」という言葉にも表れています。「表裏」は、表と裏、また、外に出ている面と内実の違いを表す言葉です。見えていることと、内側にある事情とが必ずしも同じではないという発想は、このことわざの意味を支える大事な土台です。
このことわざは、相手を疑うためだけの言葉ではありません。むしろ、すぐに悪く決めつけず、もう一方の面も見ようとするための言葉です。表に出ている事実を大切にしながらも、その裏にある事情や、別の立場からの見え方を考えることで、判断をより公平なものに近づけることができます。
現在でも、友人関係、学校生活、仕事、ニュースの受け止め方など、さまざまな場面で使えます。単純そうに見えることほど、すぐに結論を出したくなりますが、「一枚の紙にも裏表」は、その前に一度立ち止まり、物事のもう一つの面を見る大切さを教えることわざです。
「一枚の紙にも裏表」の使い方




「一枚の紙にも裏表」の例文
- 友人の失敗を責める前に、一枚の紙にも裏表と思って事情を聞いた。
- 一枚の紙にも裏表というように、よく見える計画にも心配な点がある。
- 転校生が無口なのは冷たいからではなく、緊張しているからかもしれず、一枚の紙にも裏表だ。
- 会社の新しい制度は便利そうに見えたが、一枚の紙にも裏表で、利用する人によっては負担もあった。
- ニュースを見ただけで判断せず、一枚の紙にも裏表と考えて、関係者それぞれの立場を知ろうとした。
- 一枚の紙にも裏表を忘れず、表に出ている結果だけで人の努力を評価しないようにした。
主な参考文献
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。























