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【石の物言う世の中】の意味と使い方や例文!語源由来は?(類義語・対義語・英語)

石の物言う世の中

【ことわざ】
石の物言う世の中

【読み方】
いしのものいうよのなか

【意味】
秘密や隠し事が、思いがけないところから外へ漏れやすいことのたとえ。また、世の中に強い不満が満ちると、物を言わないはずの石までも声を上げるというたとえ。

ことわざ博士
「石の物言う世の中」は、だれも聞いていないと思っても、内緒話は広まりやすいという考えを表すことわざなんだよ。
助手ねこ
秘密の相談、うわさになっては困る話、まだ公にしてはいけない計画などを不用意に話す場面で用いるニャン。

【英語】
・Walls have ears(壁には耳がある、だれかが聞いているかもしれない)

【類義語】
・壁に耳あり(かべにみみあり)
・岩が物言う(いわがものいう)
・後の目、壁に耳(うしろのめかべにみみ)

【対義語】
・口が堅い(くちがかたい)

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「石の物言う世の中」の語源・由来

ことわざを深掘り

「石の物言う世の中」は、口を持たない石でさえ物を言うほど、秘密が外へ漏れやすい世の中だ、という見立てから生まれたことわざです。ふつうなら話すはずのない石を持ち出すことで、「だれにも聞かれていないはず」という油断の危うさを、強く印象づけています。

この言葉のもとになる「石の物言う」は、秘密が漏れやすいことのたとえとして用いられ、「岩に口」「岩の物言う」とも近い言い方です。多くの場合、「壁に耳」という表現と並んで用いられ、壁や石のような無言のものまで人の話を聞き、外へ伝えるように感じられる世界を表しています。

古い用例として、『公武歌合』(1475年・文明7年・室町時代)には、「石の物いひて」という形が出てきます。ここでは、人に聞かれることや、よその非難を受けることを恐れる文脈で使われており、秘密や評判が外へ広がることへの警戒が、すでにこの表現に結びついています。

同じ発想は、「石」ではなく「岩」を用いる形にも広がっています。大観本謡曲『小鍛冶』(1537年ごろ)には、「壁に耳、岩の物言ふ世の中に」という形が出てきて、壁や岩までもが人の話を聞き、広めるような世の中という言い方が早くから使われていました。

江戸時代には、『鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)』(1731年・享保16年初演、文耕堂・長谷川千四合作)にも、「壁に耳石の物言ふ世の中に」という形が出てきます。この作品は人形浄瑠璃や歌舞伎と関わる作品で、舞台のせりふとしても、秘密や不用意な発言が思わぬ災いを招く感覚が伝えられていました。

また、『毛吹草(けふきぐさ)』(1645年・正保2年刊・江戸時代前期、松江重頼編)は、俳諧の作法や発句・付句の作例に加えて、季語や俚諺(りげん:世間で言いならわされた言葉)などを集めた俳書です。このことわざは、日常の経験から生まれた言い回しとして、そのような俚諺の世界の中で受けとめられていきました。

一方で、「石が物を言う」という発想には、中国古典『春秋左氏伝』昭公八年の話も関わっています。そこでは、晋(しん)の魏榆(ぎゆ)で石が物を言ったとされ、晋の君主が師曠(しこう)に、なぜ石が話すのかをたずねる場面が出てきます。

師曠は、石そのものが本当に話すのではないとしたうえで、時に合わない大きな工事を行い、人々の恨みが動くと、本来は言葉を発しないものまで物を言うことがある、と答えます。さらに、宮殿がぜいたくになり、人々の力が尽きているから、石が物を言うのも不思議ではない、という趣旨で君主を戒めています。

この古典の流れでは、「石の物言う」は、民衆の不満が高まり、ふつうなら声を出さないものまで訴えるように感じられる状態を表します。そのため「石の物言う世の中」には、秘密が漏れやすいという日常的な意味と、世の中に不満や批判が満ちているという重い意味の二つが重なっています。

ただし、日本語の日常では、前者の「秘密や隠し事が漏れやすい」という意味で使われることが多くなっています。「壁に耳あり」と同じように、周囲に人がいないと思っても、どこでだれが聞いているか分からないという用心を促すことわざとして定着しています。

このことわざの大切な点は、単に「秘密は守りにくい」と言うだけではなく、油断して口にした言葉は、自分の思わぬ道を通って広まることがある、という警告にあります。人の悪口、まだ決まっていない予定、大切な相談などは、場所と相手をよく考えて話すべきだという知恵が、この言葉に込められています。

「石の物言う世の中」の使い方

健太
明日の昼休みに、先生へのお礼カードをこっそり集めようと思って、廊下で班の友だちに話してしまったんだ。
ともこ
廊下はほかのクラスの子も通るよ。石の物言う世の中だから、内緒の計画は教室のすみでも小声で話したほうがいいよ!
健太
やっぱり先生が、みんなが何か準備しているのを知っているみたいだった。だれかに聞こえて広まったのかもしれない。
ともこ
次は代表の二人だけで相談しようね。うれしい秘密ほど、話す場所を選ばないとすぐ伝わってしまうよ。
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「石の物言う世の中」の例文

例文
  • 新商品の発表前に名前を口にすれば、石の物言う世の中で、すぐ社外に広まるおそれがある。
  • 友人の進学先を本人より先に話すのは、石の物言う世の中では思いやりに欠ける行動だ。
  • 職員室の近くで内緒の相談をしていたら、石の物言う世の中で、翌日には学年中のうわさになっていた。
  • 家族への誕生日のサプライズは、石の物言う世の中だから、本人の前では絶対に話題にしない。
  • 会議で決まる前の人事については、石の物言う世の中を忘れず、関係者だけで静かに扱うべきだ。
  • 村の人々の不満が高まり、石の物言う世の中のように、ふだん黙っている人まで役所に意見を伝え始めた。

主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・松江重頼編、新村出校閲、竹内若校訂『毛吹草』岩波書店、1943年。
・小倉芳彦訳『春秋左氏伝 中』岩波書店、1989年。
・『春秋左氏伝』。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster、2026年参照。





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