【ことわざ】
石部金吉鉄兜
【読み方】
いしべきんきちかなかぶと
【意味】
非常に物堅く生真面目で、融通のきかない人のたとえ。道徳的に堅く、金銭や女色に心を迷わされない人をいう場合もある。


【英語】
・a stick-in-the-mud(古風で融通が利かず、新しいことを嫌う人)
・hidebound(考え方が固定的で、変わろうとしない)
【類義語】
・石部金吉(いしべきんきち)
・石に裃(いしにかみしも)
・木仏金仏石仏(きぶつかなぶついしぼとけ)
【対義語】
・融通無碍(ゆうずうむげ)
・融通が利く(ゆうずうがきく)
「石部金吉鉄兜」の語源・由来
「石部金吉鉄兜」は、「石部金吉」という堅物を表す言い方に、「鉄兜」を重ねて、かたさをさらに強めたことわざです。石、金、鉄兜という、いずれもかたいものを並べることで、心や考えが動きにくい人の姿を、少しこっけいに言い表しています。
「石部金吉」は、石と金という二つの硬いものを並べ、人名のように仕立てた言葉として理解されてきました。この場合の「金」は、金属のかたさを思わせる語で、そこから非常にきまじめで物堅い人、また融通のきかない人を表すようになりました。
一方で、「石部金吉」は、もとは将棋の言葉で、金将を中心にした堅い陣形を指したとする説があります。そこから、時代が下るにつれて、守りが固く動きにくい陣形の印象が、人の性格を表す言い方へ移っていったと考えられます。
古い用例では、江戸時代前期の評判記『役者評判蚰蜒』(1674年・延宝2年)に、「石部金吉」の形が出てきます。この段階では、きまじめで堅い人物を、人名めかしたしゃれの形で呼ぶ言い方が、すでに世間に通じる表現になっていました。
「鉄兜」に当たる「金兜(かなかぶと)」は、鉄製のかぶとを意味する言葉です。かぶとは頭を守るための堅い防具であり、その堅さから、考え方に融通性がなく頑固な人を表す比喩にもなりました。
『本朝浜千鳥(ほんちょうはまちどり)』(1707年・宝永4年刊・江戸時代前期、永井正流撰)には、「金吉」と「金兜」を結びつけた形が出てきます。そこでは、押しても曲がらないほど物堅い人物を示す文脈で使われ、堅物を表す言い方としての働きがはっきりしています。
その後、『譬喩尽(たとえづくし)』(1786年・天明6年序・江戸時代後期、松葉軒東井編)には、「石部金吉金兜」の形が出てきます。この形は、石部金吉にさらに金兜をかぶせたような人、つまり極端な堅物を表すものとして定着していきました。
「石部金吉金兜」と「石部金吉鉄兜」は、表記に違いがありますが、「金兜」は「鉄兜」とも書かれ、意味は鉄製のかぶとです。そのため、現在の見出しでは「鉄兜」と書いても、読みは「かなかぶと」となります。
このことわざの面白さは、まじめな人をただ「堅い」と言うのではなく、石のように堅く、金のように堅く、さらに鉄の兜までかぶっているようだ、と重ねて表す点にあります。たとえとしては大げさですが、その大げささによって、相手の融通のきかなさが強く伝わります。
また、このことわざには、まじめさを認めながらも、かたくなすぎる態度への批判が含まれます。規則を守ること自体は大切ですが、場面に合わせて考えを変えられないほどになると、人との関係や物事の進み方をかえって難しくしてしまう、という見方につながっています。
現在では、非常にまじめで物堅い人、または頑固で融通のきかない人を評するときに使います。ただし、人をからかう響きもあるため、相手を傷つけない場面や、少し古風でこっけいな表現として使うのが自然です。
「石部金吉鉄兜」の使い方




「石部金吉鉄兜」の例文
- 校則を一字一句そのまま守らせようとするだけで事情を聞かない先生は、石部金吉鉄兜のように見えた。
- 祖父は石部金吉鉄兜で、旅行中でも毎朝六時の体操を一日も休まなかった。
- 会議で全員が変更案に賛成しても、部長だけは石部金吉鉄兜で、昔からの手順を変えようとしなかった。
- 友人は石部金吉鉄兜だから、冗談で集合時間を五分遅らせようと言っても真顔で反対する。
- 石部金吉鉄兜のような人でも、相手の困りごとを知れば少しずつ柔らかくなることがある。
- 父は石部金吉鉄兜で、まだ使える物を流行だけで買い替えることを好まない。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・松葉軒東井編『譬喩尽』1786年。
・永井正流撰『本朝浜千鳥』1707年。























