【ことわざ】
厭と頭を縦に振る
【読み方】
いやとかぶりをたてにふる
【意味】
うわべの態度と本心とがまるで違うことのたとえ。口では嫌だと言いながら、態度では承諾していること。


【英語】
・send mixed signals(矛盾した合図を出す)
・say one thing and do another(言うこととすることが違う)
【類義語】
・いやいや嬉しい(いやいやうれしい)
・厭じゃ厭じゃは女の癖(いやじゃいやじゃはおんなのくせ)
【対義語】
・言行一致(げんこういっち)
・心口如一(しんこうじょいつ)
「厭と頭を縦に振る」の語源・由来
「厭と頭を縦に振る」の「厭」は、「いや」と読み、欲しないこと、したくないこと、きらいであることを表します。このことわざでは、まず口から出る「いや」という言葉が、表向きの拒否を示します。
一方、「頭」はここでは「かぶり」と読みます。「頭を振る」は、頭を左右に振って否定や不承知を表す言い方として、古くから使われてきました。
ところが、このことわざでは、その「頭」を「縦に振る」と表します。首を縦に振ることは、承知する、賛成するという意味を表すため、「いや」という言葉と、承諾を示す身振りが同時に並ぶことになります。
つまり、このことわざの中心には、言葉では断っているのに、体の動きでは受け入れている、という分かりやすい食い違いがあります。口先の拒否と、態度による承諾がぶつかるところに、表面と本心の違いが表れています。
「かぶり」という読み方も、このことわざの古風な味わいを支えています。現在の日常語では「頭」を「あたま」と読むことが多いですが、「頭を振る」という形では「かぶり」と読み、否定の身振りを表す用法が残っています。
この言い方は、中国の古い人物や事件に基づくものではなく、日本語の中で、人の言葉と態度のずれを身近な動作でとらえた表現です。特別な故事を知らなくても、「いや」と言いながらうなずく姿を思い浮かべれば、意味が自然に分かる形になっています。
類句には、「厭じゃ厭じゃは女の癖」があります。これは、恋愛や口説きの場面で、口では嫌だと言いながら内心では受け入れている、という古い見方を表す言葉です。
「厭と頭を縦に振る」も、かつてはそうした恋愛や遠慮の場面と結びつけて説明されることがありました。ただし、現在の使い方では、性別に限らず、言葉と態度が合わない場合を広く表すことができます。
このことわざで大切なのは、相手の「いや」という言葉を軽く扱うことではありません。人の気持ちは、言葉と態度がずれることもあるという観察を表す言葉であり、実際の人間関係では、相手がはっきり断っている場合は、その言葉を尊重する必要があります。
表記としては、「厭と頭を縦に振る」のほか、意味を分かりやすくするために「いやと頭を縦に振る」と書かれることもあります。しかし、ことわざとしての形では、「厭」という字が、口に出した拒否の気持ちをはっきり示しています。
このように、「厭と頭を縦に振る」は、言葉の「いや」と、身振りの「承諾」を並べることで、表向きの態度と本心の違いを短く表したことわざです。人の言動には、照れ、遠慮、体面、迷いなどが入りまじることがある、という生活上の観察から生まれた表現といえます。
「厭と頭を縦に振る」の使い方




「厭と頭を縦に振る」の例文
- 弟は発表会の司会を嫌だと言いながら、台本を何度も読み直していて、厭と頭を縦に振るような態度だった。
- 友人は代表に選ばれるのは困ると言ったが、すぐに予定表を確認し始め、厭と頭を縦に振る様子を見せた。
- 祖母は写真に写るのは嫌だと言いながら、髪を整えて座り直し、厭と頭を縦に振るようだった。
- 部長は追加の仕事を断るふりをしたが、資料を受け取って詳しく読み始め、厭と頭を縦に振る形になった。
- 妹は新しい習い事に行きたくないと言いながら、前の日から服を選んでいて、厭と頭を縦に振る気持ちが表れていた。
- 口では辞退しながら行動では受け入れている態度は、厭と頭を縦に振るということわざで表せる。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『デジタル大辞泉』小学館。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・あすとろ出版編『故事ことわざの辞典』あすとろ出版。
・Merriam-Webster『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster。























