【ことわざ】
一姫二太郎
【読み方】
いちひめにたろう
【意味】
子をもつなら、最初は女の子、次は男の子がよいという言い伝え。子どもの人数が「女の子一人、男の子二人」という意味ではない。


【英語】
・The lucky man has a daughter for his first born(幸運な人は最初の子に娘を授かる)
【対義語】
・後先息子に中娘(あとさきむすこになかむすめ)
「一姫二太郎」の語源・由来
一姫二太郎は、日本で伝えられてきた子どもの生まれる順番についてのことわざです。「一」は一人目、「二」は二人目を表し、「姫」は女の子、「太郎」は男の子、とくに長男を表す言葉として用いられます。したがって、このことわざの中心は「女の子一人、男の子二人」という人数ではなく、「一人目が女の子、二人目が男の子」という順番にあります。
この言い方の背景には、初めての子育てでは女の子のほうが育てやすいと考えられてきたことがあります。育児にまだ慣れない時期に、まず女の子を授かり、次に男の子を授かるのがよいという、昔の家族観や子育て観が込められた表現です。また、男の子を強く望んでいた家に女の子が生まれたとき、失望する人をなぐさめる言葉としても使われました。
古い用例としては、幸田露伴の『椀久物語』(1899年・明治時代、幸田露伴著)に、「一女二太郎(イチヒメニタラウ)」という形が出てきます。この例では、すでに「世話にいふ通り」と添えられており、明治時代後期には、世間でよく知られた言い伝えとして扱われていたことが分かります。表記は現在よく用いられる「一姫二太郎」と少し異なりますが、読みと意味は現在のことわざにつながる形です。
大正時代の佐々木邦『珍太郎日記』(1921年・大正時代、佐々木邦著)にも、「一姫二太郎(いちヒメにタラウ)」という形が出てきます。ここでは、最初の子に娘を授かることを幸運とする外国のことわざと並べて語られており、「第一子が女の子であること」をよいものとして受け止める考え方が表れています。
その後も、このことわざは「子どもは、まず女の子を、次に男の子を授かるのがよい」という意味で使われ続けました。立原正秋の『恋人たち』(1965年・昭和時代、立原正秋著)にも、女の子の誕生を祝う場面で「一姫二太郎とはよく言ったものだ」という用例があります。ここでは、子どもの人数ではなく、第一子として女の子が生まれたことを喜ぶ言葉として用いられています。
一方で、現代では「一姫」を女の子一人、「二太郎」を男の子二人と受け取り、三人の子どもの構成を表す言葉だと誤解されることがあります。しかし、本来の「太郎」は長男を意味する言葉でもあるため、「二太郎」は「二人目に長男が生まれる」と理解すると分かりやすくなります。第一子が女の子、第二子が男の子であれば、その後に子どもが何人いても、一姫二太郎ということができます。
このように、一姫二太郎は、家族の人数を数える言葉ではなく、子どもを授かる順番をよしとする昔からの言い伝えです。今では性別の好みに優劣をつけるためではなく、言葉の本来の意味をふまえて、第一子が女の子、第二子が男の子である場合を表すことわざとして理解するのが自然です。
「一姫二太郎」の使い方




「一姫二太郎」の例文
- 友人の家では第一子が女の子、第二子が男の子で、一姫二太郎といわれている。
- 祖母は、姉のあとに弟が生まれたことを一姫二太郎だと喜んだ。
- 一姫二太郎は、子どもの人数ではなく、生まれる順番を表すことわざである。
- 近所の人は、長女と長男を育てるその家庭を見て、一姫二太郎だと言った。
- 一姫二太郎という言葉を、女の子一人と男の子二人の意味で使うのは本来の意味と異なる。
- 第一子の娘に続いて息子が生まれ、親戚から一姫二太郎だと祝われた。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・小学館『大辞泉』編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・文化庁文化部国語課「一姫二太郎」の意味『文化庁月報』平成25年10月号、2013年。
・幸田露伴『椀久物語』1899年。
・佐々木邦『珍太郎日記』1921年。























