【ことわざ】
入れ物と人はある物使え
【読み方】
いれものとひとはあるものつかえ
【意味】
道具も人も、手近にあるもので間に合わせよということ。


【英語】
・make do with what you have(手元にあるもので何とかする)
・make use of what is available(利用できるものを活用する)
【類義語】
・人と入れ物は有り次第(ひとといれものはありしだい)
・人と入れ物は有り合わせ(ひとといれものはありあわせ)
・立っている者は親でも使え(たっているものはおやでもつかえ)
「入れ物と人はある物使え」の語源・由来
「入れ物と人はある物使え」は、物を入れる器や道具と人手とを並べて、どちらも手近にあるものをうまく使えば用が足りる、という生活上の知恵を表すことわざです。「入れ物」は、物を入れる器、容器を指す言葉として用いられてきました。
「入れ物」という言葉そのものは古く、『宇津保物語』(970〜999年ごろ成立、平安時代中期)に「いれ物いとをかしくて」と出てきます。ここでは、品物を入れる器が美しく整えられている場面に使われており、物を入れる器という基本の意味がよく分かります。
このことわざでいう「入れ物」は、茶碗、箱、皿、小鉢のような器だけに限りません。広く、何かを入れたり運んだりする道具、つまり日常の用に役立つ器物を指していると受け取ると、意味がつかみやすくなります。
「ある物使え」という部分は、「有り合わせ」の考え方と深くつながります。「有り合わせ」は、特に準備したものではなく、たまたまその場にあること、またそのものを指します。
「有り合い」には、たまたまその場にあるもの、また、そのものだけで簡単にすませること、という意味があります。『石山本願寺日記』天文十年(一五四一年)九月十三日の「青侍は有合に食え」という例は、その場にあるもので済ませるという発想をよく示しています。
近い形のことわざに、「人と入れ物は有り次第」があります。これは、人と器物は多ければ多いほど便利だが、少なくても使い方しだいで用が足りる、という意味を表します。
また、「人と入れ物は有り合わせ」という形も伝わっています。人間でも器物でも、手近にある有り合わせのもので結構役に立ち、難しく考えなくても間に合うことが多い、という意味です。
「入れ物と人はある物使え」は、これらの「人と入れ物」のことわざと同じ発想に立つ言い方です。語順を「入れ物と人」とし、「ある物使え」と命令に近い形にすることで、手元のものを活用せよという教えを、より直接的に言い表しています。
このことわざには、ぜいたくを戒めるだけでなく、場に応じて工夫するという意味もあります。理想の道具がない、人数が足りない、予定どおりに準備できないというときでも、今あるものを組み合わせれば道は開ける、という実用的な知恵を含んでいます。
人について述べる点では、「立っている者は親でも使え」とも近い関係にあります。このことわざは、急用のときは、そばに立っている者に用事を頼むのが早い、という意味を表し、手近な人をその場で役立てる発想を共有しています。
ただし、「入れ物と人はある物使え」は、人を粗末に扱ってよいという意味ではありません。人や道具を大切にしながら、今ある条件の中で最善を尽くす、という方向で理解すると、ことわざの教えが穏やかに生きてきます。
現在では、家庭での片づけ、学校行事の準備、部活動の道具、仕事での人手不足など、幅広い場面に当てはめることができます。新しいものをすぐ求める前に、まず手元のものを見直すという考えを表すことわざです。
「入れ物と人はある物使え」の使い方




「入れ物と人はある物使え」の例文
- 文化祭の準備では、新しい道具を買わず、入れ物と人はある物使えで教室の空き箱を活用した。
- 急な来客で皿が足りなかったが、入れ物と人はある物使えと考え、家にある小鉢を並べて料理を出した。
- 部活動の練習では、専用の係を待たずに、入れ物と人はある物使えで手の空いた部員が道具を運んだ。
- 会社の展示会では、予算を増やさず、入れ物と人はある物使えの方針で既存の棚と社員の工夫を生かした。
- キャンプ場で容器を忘れたため、入れ物と人はある物使えで空いた袋と鍋を使い分けた。
- 地域の清掃活動では、入れ物と人はある物使えとして、参加者が持ち寄った袋やバケツを使った。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・現代言語研究会著『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』あすとろ出版、2007年。
・Cambridge University Press, Cambridge Academic Content Dictionary。























