【ことわざ】
色気と痔の気の無い者はない
【読み方】
いろけとじのけのないものはない
【意味】
人はだれでも欲や弱みをもち、心の中は似たり寄ったりであるということ。


【英語】
・Nobody’s perfect(完璧な人はいない)
【類義語】
・色気と盗人気の無い者はない(いろけとぬすっとけのないものはない)
「色気と痔の気の無い者はない」の語源・由来
「色気と痔の気の無い者はない」は、「色気」と「痔の気」を並べて、人間には誰にでも欲や弱みがあることを、少しおかしく言い表したことわざです。意味としては、人の心は結局のところ似たり寄ったりである、という見方につながります。
「色気」は、色の加減を表す意味もありますが、このことわざでは、主に異性への関心や欲求、人をひきつける性的な魅力に関わる意味で使われています。ここでは、外に出しにくい欲や、だれもが多少はもっている心の動きを示す言葉として働いています。
「痔」は、肛門やその周囲に起こる病気の総称です。痔の悩みは人に言いにくく、しかも多くの人に起こりうる身近な体の不調として受け止められてきました。
「気」は、「寒気」「商売っ気」「女っ気」などのように、名詞などに付いて、そのような様子、気配、感じを表す接尾語として使われます。そのため「痔の気」は、痔そのものを断定するよりも、痔の気味、痔になりやすい様子、痔を抱えていそうな気配をやわらかく言う形になっています。
このことわざのおもしろさは、「色気」と「痔の気」が同じ「け」の音で結ばれている点にあります。「痔の気」は「色気」に語呂を合わせたものとして伝わっており、深刻な話を少し軽く響かせる働きをもっています。
「色気」は人の欲や関心を表し、「痔の気」は人に言いにくい弱みや悩みを表します。つまり、このことわざは、心の欲と体の弱みを並べることで、どんな人も完全ではなく、内側には似たようなものを抱えているという見方を示しています。
「無い者はない」という言い方も、このことわざの力を強めています。ただ「多くの人にある」と言うのではなく、「ない人はいない」と言い切ることで、人間一般に共通する性質として表しています。
近い形に、「色気と盗人気の無い者はない」という言い方があります。こちらは「痔の気」の代わりに「盗人気」を置き、人の心の中には、欲やよこしまな気持ちがまったくないとは言いきれない、という方向から似た考えを表します。
このような言い換えがあることからも、このことわざは、特定の一つの病気だけを問題にする言葉ではありません。だれにでも言いにくい欲や弱みがあるという、庶民的な人間観を、音の調子を生かして短くまとめた言い方です。
現在使うときは、人をばかにするためではなく、だれかを過度に立派だと思い込んだり、反対に一つの弱みだけで見下したりしないための言葉として受け取るのがよいでしょう。人はみな完全ではなく、似たような悩みを抱えながら生きている、という少し皮肉で、同時に人間味のあることわざです。
「色気と痔の気の無い者はない」の使い方




「色気と痔の気の無い者はない」の例文
- 完璧な人ばかりを集めようとしても、色気と痔の気の無い者はないから、欠点を補い合う体制が大切だ。
- 有名な人にも悩みや弱みはあり、色気と痔の気の無い者はないという言葉を思い出す。
- 友人の小さな失敗を笑う前に、色気と痔の気の無い者はないと考えて、自分のふるまいも振り返るべきだ。
- どのクラスにも得意な子と苦手な子がいるが、色気と痔の気の無い者はないので、互いに助け合えばよい。
- 面接で立派に見えた人にも弱点はあり、色気と痔の気の無い者はないという前提で人を見る必要がある。
- 家族の中でだれか一人を責め続けるより、色気と痔の気の無い者はないと受け止め、話し合うほうがよい。
主な参考文献
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。
・Merriam-Webster, Incorporated『Merriam-Webster.com Dictionary』Merriam-Webster, Incorporated.























