【ことわざ】
牛の角を蜂が刺す
【読み方】
うしのつのをはちがさす
【意味】
牛の角を蜂が刺しても牛が痛くもかゆくも感じないように、物事に対してなんとも感じないことのたとえ。


【英語】
・like water off a duck’s back(忠告や批判がまったく効かないこと)
【類義語】
・鹿の角を蜂が刺す(ししのつのをはちがさす)
・蛙の面に水(かえるのつらにみず)
・暖簾に腕押し(のれんにうでおし)
「牛の角を蜂が刺す」の語源・由来
「牛の角を蜂が刺す」は、牛の頭にある角と、小さな蜂の針を対比させたことわざです。牛の角は動物の頭に突き出た部分であり、「角」という字にも、動物のつのという意味があります。
もとの見立ては、牛の角を蜂が刺しても、牛は痛くもかゆくも感じないというものです。そこから、何かを言われたりされたりしても、相手がまったくこたえないことを表すようになりました。
このことわざには、「蜂が刺す」のほかに「蚊がせせる」という形もあります。「せせる」は、ここでは小さな虫が細かく刺すように触れる動きを表し、牛の角にとっては、まるで影響がないほど小さい刺激として描かれています。
古い用例として、『風流夢浮橋(ふうりゅうゆめのうきはし)』(1703年・江戸時代前期、雨滴菴松林作)に、「あせみづになって祈れども、牛の角を、蚊のせせるほどもげんなし」という形が出てきます。汗を流すほど懸命に祈っても、牛の角を蚊がつつくほどの効き目もない、という文脈で使われています。
この古い例では、現在の「蜂」ではなく「蚊」が使われています。小さな虫が硬く厚い角に向かってわずかな刺激を与えても効果がない、という考え方は、現在の「牛の角を蜂が刺す」と同じです。
「蜂」は、人を刺す虫として痛みを連想させやすい存在です。しかし、その蜂でさえ牛の角を刺しても牛には通じない、というところに、このことわざの強いたとえがあります。
よく似たことわざに「鹿の角を蜂が刺す」があります。鹿の角を蜂が刺しても鹿がなんとも感じないように、手ごたえがないことを表す言い方で、「牛の角を蜂が刺す」と同じ発想をもつ類句です。
また、「蛙の面に水」は、非難されたり罵倒されたりしても平気で反応がないことを表します。こちらも、相手がこたえない様子を生き物の姿にたとえている点で、「牛の角を蜂が刺す」と近い関係にあります。
このことわざは、相手の心が強いというほめ言葉として使うよりも、注意や忠告がまったく効かない、反応がなく手ごたえがない、という少しあきれた気持ちをこめて使うことが多い言葉です。
つまり「牛の角を蜂が刺す」は、小さな刺激が硬い角には届かないという具体的な情景から、どれほど言っても相手がなんとも思わない状態を表すことわざとして定着したものです。
「牛の角を蜂が刺す」の使い方




「牛の角を蜂が刺す」の例文
- 何度注意しても同じ失敗をくり返す彼には、牛の角を蜂が刺すようだった。
- 母が早寝をすすめても、兄は夜更かしをやめず、牛の角を蜂が刺すだった。
- 上司の厳しい忠告にも平然としている同僚は、牛の角を蜂が刺すようにこたえていなかった。
- 友人が真剣に止めても、危ない遊びを続ける彼には牛の角を蜂が刺すだった。
- 地域の人が何度も注意したが、迷惑駐車をする人には牛の角を蜂が刺すに近かった。
- 先生の言葉を聞き流して宿題を出さないままなら、牛の角を蜂が刺すと言われても仕方がない。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・雨滴菴松林『風流夢浮橋』1703年。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary & Thesaurus』。























