【ことわざ】
梅に鶯
【読み方】
うめにうぐいす
【意味】
取り合わせのよい二つのもののたとえ。美しく調和するもの、また、仲のよい間柄のたとえ。


【英語】
・a match made in heaven(ぴったり合った組み合わせ)
・a perfect match(非常によく合う組み合わせ)
【類義語】
・獅子に牡丹(ししにぼたん)
・竹に雀(たけにすずめ)
・牡丹に唐獅子(ぼたんにからじし)
・紅葉に鹿(もみじにしか)
【対義語】
・水と油(みずとあぶら)
「梅に鶯」の語源・由来
「梅に鶯」は、梅の花と鶯という、早春を思わせる二つのものを取り合わせた言葉です。梅の枝に鶯を配した姿が美しく調和することから、よく似合う二つのもの、仲のよいもののたとえとして使われるようになりました。
鶯は、古くから春の到来を告げる鳥として受け止められてきました。和歌では、特に早春の花である梅と組み合わせられる例が多く、「梅の枝の鶯」「梅に鶯」という構図は、絵画や工芸の題材にもなりました。
この取り合わせは、日本の詩歌や絵画に広く根づいたものですが、その背景には中国文学の影響もあります。梅はもともと日本に自然分布した植物ではなく、中国からもたらされたもので、「梅に鶯」の組み合わせは『懐風藻(かいふうそう)』(751年成立、奈良時代)以後に日本の文学に出てきます。
『懐風藻』の葛野王「春日翫鶯梅」には、「素梅開素靨 嬌鶯弄嬌声」という句があります。白梅が白いえくぼのように咲き、かわいらしい鶯が美しい声でさえずる、という意味の句で、梅と鶯を美しい春の景として並べています。
この「嬌鶯(きょうおう)」は、美しく愛らしい鶯、よい声で鳴く鶯を表す言葉です。梅の花の白さと鶯の声の美しさを重ねることで、目で見る春と耳で聞く春が、一つの景色として表されています。
『万葉集』(8世紀後半成立、奈良時代)にも、梅と鶯が近い景物として詠まれています。巻五の「梅の花散らまく惜しみ我が園の竹の林にうぐひす鳴くも」は、梅の花が散るのを惜しみながら、庭の竹林に鶯が鳴く情景を詠んだ歌です。
この歌では、鶯は梅の枝そのものではなく、竹林にいます。それでも、梅の花が咲く春の庭と鶯の声が一つの場面の中で結びつき、後の「梅に鶯」という美しい取り合わせへつながる感覚をよく示しています。
後の時代になると、梅と鶯は詩歌だけでなく、絵や文様の題材としても親しまれるようになりました。花と鳥を組み合わせて季節や風情を表す考え方の中で、「梅に鶯」は早春を表す代表的な組み合わせとして受け入れられていきました。
ことわざとしての形に近い古い例は、江戸時代の浄瑠璃『袂の白しぼり』(1710年ごろ成立)に出てきます。そこには「柳桜に松楓、梅に鶯紅葉に鹿、竹に雀や花に蝶」とあり、梅と鶯が、紅葉と鹿、竹と雀などと同じく、よい取り合わせの一つとして並べられています。
このように、「梅に鶯」は、もとは早春の美しい景色を表す詩歌的な組み合わせでした。そこから、二つのものがよく似合い、互いを引き立て合うことをいうことわざとして定着したのです。
「梅に鶯」の使い方




「梅に鶯」の例文
- 和風の庭に白い灯籠を置くと、梅に鶯のように美しく調和した。
- 静かな曲に友人の澄んだ歌声が重なり、まさに梅に鶯の取り合わせだった。
- 春の着物に淡い帯を合わせた姿は、梅に鶯と言いたくなるほど似合っていた。
- 落ち着いた文章と上品な挿絵が梅に鶯で、その本の魅力を高めている。
- 祖父母の穏やかな会話は息が合っていて、梅に鶯のような夫婦だと思った。
- 料理の味と器の色合いが梅に鶯で、食卓がいっそう華やかになった。
主な参考文献
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・『日本大百科全書』小学館。
・『世界大百科事典』平凡社。
・『懐風藻』751年。
・『万葉集』8世紀後半成立。
・『袂の白しぼり』1710年ごろ。























