【ことわざ】
馬を水辺につれていけても、水を飲ませることはできない
【読み方】
うまをみずべにつれていけても、みずをのませることはできない
【意味】
人に機会や助言を与えることはできても、本人がその気になって行動するかどうかまでは強制できない、というたとえ。


【英語】
・You can lead a horse to water, but you can’t make him drink(人に機会を与えることはできても、実行までは強制できない)
【類義語】
・笛吹けども踊らず(ふえふけどもおどらず)
「馬を水辺につれていけても、水を飲ませることはできない」の語源・由来
「馬を水辺につれていけても、水を飲ませることはできない」は、英語で古くから使われてきたことわざを日本語で表したものです。馬を水のある場所まで導くことはできても、実際に水を飲むかどうかは馬自身の行動にかかっている、という身近なたとえから成り立っています。
この言葉のもとには、「条件を用意すること」と「本人が受け入れて行動すること」は別である、という考えがあります。水辺は機会や助言を、馬が水を飲むことは本人の意思による行動を表します。
古い形は、12〜13世紀の英語説教集を収める『Old English Homilies and Homiletic Treatises』(1868年、Richard Morris編)に出てくる表現にさかのぼります。そこには “hwa is þet mei þet hors wectrien þe him self nule drinken” という形があり、自分から飲もうとしない馬に、だれが水を飲ませられるのか、という意味を表しています。
この古い形では、現在のように「馬を水辺へ連れていく」という言い方よりも、「飲もうとしない馬に水を飲ませることはできない」という点が前面に出ています。つまり、相手の内側にある意思までは外から動かせない、という考えが早い段階から表れていました。
16世紀には、John Heywoodの『A dialogue conteinyng the nomber in effect of all the prouerbes in the Englishe tongue』(1546年、ロンドン刊)にも、このことわざが記されます。この書物は英語のことわざを多く含む作品で、著者名と1546年の刊行が伝わっています。
Heywoodの本文には、“A man maie well bring a horfe to the water, But he can not make him drinke without he will.” とあります。これは、人は馬を水のところへ連れていくことはできるが、馬自身にその気がなければ飲ませることはできない、という意味です。
この16世紀の形では、「bring a horse to the water」という表現が使われています。後の英語では “lead a horse to water” の形が広まり、「連れていく」「導く」という言い方で、機会を与えることを表すようになりました。
現在の英語では “You can lead a horse to water, but you can’t make him drink.” という形がよく使われます。意味は、相手が何かをしやすいようにしてあげることはできても、それをするように強制することはできない、というものです。
日本語では、「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない」という訳し方で知られます。対象語の「つれていけても」は、この英語のことわざを日本語として言いやすくした表記です。
このことわざは、相手を突き放すための言葉ではありません。周囲ができるのは、学ぶ場を整えること、助言すること、支えること、といったところまでであり、最後に動き出す力は本人の内側から生まれる、という限界と大切さを教えています。
そのため、勉強をしない子ども、練習に身が入らない選手、助言を受けても動かない人などに対して用いられます。ただし、相手を責めるよりも、本人の意思がなければ本当の行動にはつながらない、という場面で使うのがふさわしい言葉です。
「馬を水辺につれていけても、水を飲ませることはできない」の使い方




「馬を水辺につれていけても、水を飲ませることはできない」の例文
- 先生が分かりやすい教材を用意しても、本人に学ぶ気がなければ、馬を水辺につれていけても、水を飲ませることはできない。
- 親が塾を探してくれても、子どもが机に向かわなければ、馬を水辺につれていけても、水を飲ませることはできないというものだ。
- 監督が練習場所と時間を整えても、選手が本気で取り組まなければ、馬を水辺につれていけても、水を飲ませることはできない。
- 友人に応募の方法を教えても、最後に申し込むかどうかは本人次第で、馬を水辺につれていけても、水を飲ませることはできない。
- 会社が研修の機会を与えても、社員が学ぼうとしなければ、馬を水辺につれていけても、水を飲ませることはできない。
- 馬を水辺につれていけても、水を飲ませることはできないという言葉は、人を支えることと、本人が動くことの違いをよく表している。
主な参考文献
・瀬戸賢一・投野由紀夫編『プログレッシブ英和中辞典 第5版』小学館、2012年。
・Cambridge University Press『Cambridge Advanced Learner’s Dictionary, Fourth Edition』Cambridge University Press、2013年。
・Richard Morris編『Old English Homilies and Homiletic Treatises』Early English Text Society、1868年。
・John Heywood『A dialogue conteinyng the nomber in effect of all the prouerbes in the Englishe tongue』Thomas Berthelet、1546年。























