【ことわざ】
鰹節と砥石の借入れはない
【読み方】
かつおぶしとといしのかりいれはない
【意味】
鰹節も砥石も使えば減るため、借りたつもりでも、実際にはもらうことになるということ。使えば元のまま返せない物の貸し借りには注意が必要だという教え。


【類義語】
・鰹節と巻紙の借入れはない(かつおぶしとまきがみのかりいれはない)
「鰹節と砥石の借入れはない」の語源・由来
このことわざは、鰹節と砥石という、使うと身を減らす物を並べて、名目上の「借りる」と実際の「もらう」の違いを示す言い方です。借入れは、金品などを借りて自分のもとに取り入れることを指しますが、このことわざでは、取り入れたあとに同じ形で返せるかどうかが問題になります。
鰹節は、鰹の身を蒸して干し固め、削って料理にかけたり、だしを取ったりする食品です。室町末から近世初めごろの狂言『察化』にも「鰹節」の用例があり、暮らしの中でよく知られた保存食品でした。
鰹節は、使うときに必要な分だけ削ります。そのため、借りた一本を削って使えば、見た目にも量にも変化が生じ、もとの一本として返すことはできません。
砥石は、刃物や石材などを研いだり磨いたりする石です。『和名類聚抄』(934年ごろ・平安時代中期、源順著)にも関係する語が出ており、古くから道具を整えるための物として扱われてきました。
砥石は、刃物を研ぐとき、砥石の表面にある細かな粒が働いて、刃や表面を少しずつ削ります。とくに軟らかい砥石では砥石そのものの減りも大きく、使えば使うほど形が変わっていきます。
この二つに共通するのは、役目を果たすほど本体が減るという点です。椀や鍋のように洗ってそのまま返せる物とは違い、使った分をそっくり元に戻すことができません。
同じ考え方をもつ言い方に、「鰹節と巻紙の借入れはない」があります。巻紙は横に長く継ぎ合わせて巻いた紙で、手紙を書くために用いられたため、書けば使った分が減っていく物として受け取られました。
また、「鰹節と巻紙はかくほど減る」という言い方もあります。鰹節は削るほど減り、巻紙は書くほど減るという、日常の動作から生まれた分かりやすい組み合わせです。
「借入れはない」と言い切るところには、ことばの上では借りると言えても、実際には返せない物がある、という生活上の判断が込められています。貸す側にも借りる側にも、物の性質をよく考えなさいという教えになっています。
現在の意味も、この具体的な性質から離れていません。消耗品や材料のように、使えば減ったり形が変わったりする物を借りるときは、初めから「もらう」「分けてもらう」「使った分を返す」と考えるべきだ、という考えを表すことわざです。
「鰹節と砥石の借入れはない」の使い方




「鰹節と砥石の借入れはない」の例文
- 料理教室で削って使う鰹節を借りようとして、鰹節と砥石の借入れはないと注意された。
- 工作に使う色紙を切ってしまうなら、鰹節と砥石の借入れはないと考えるべきだ。
- 返せないほど使ってしまう物を安易に借りるのは、鰹節と砥石の借入れはないに当たる。
- 友人の絵の具を大量に使ってから返すと言うのは、鰹節と砥石の借入れはないというものだ。
- 消耗する材料を借りるときは、鰹節と砥石の借入れはないと思って、先に相手へ相談する必要がある。
- 会社の備品でも、使えばなくなる物については、鰹節と砥石の借入れはないという意識が大切だ。
主な参考文献
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・二階堂清風編著『釣りと魚のことわざ辞典』東京堂出版、1998年。























