【ことわざ】
鏡は女の魂
【読み方】
かがみはおんなのたましい
【意味】
女性にとって、鏡は命にも代えるほど大切なものであるということ。


【類義語】
・女の魂(おんなのたましい)
「鏡は女の魂」の語源・由来
「鏡は女の魂」の「鏡」は、姿を映す道具を指します。ただし、このことわざでは、鏡を単なる道具としてではなく、女性にとって命にも代えるべき大切なものとして表しています。
古くから鏡は、人の姿を映すものとして特別に扱われてきました。日本では、鏡が神の依代(よりしろ)や神体とされることもあり、三種の神器の一つである八咫鏡(やたのかがみ)にもつながる神聖な品として考えられてきました。
また、鏡は姿を映すだけでなく、光を反射して悪いものを退ける品とも考えられました。鏡を女の魂や護身の具とする伝承があり、鏡が日常の道具であると同時に、身を守る特別な力をもつ品として受け取られていたことが分かります。
このことわざの古い用例として、『栬狩剣本地(もみじがりつるぎのほんじ)』(1714年・江戸時代中期、近松門左衛門作)の二段目に、「鏡は女の魂武士のたちかたな」とあります。近松門左衛門の作品一覧にも、1714年の浄瑠璃作品として『栬狩剣本地』が記されています。
この用例では、「鏡は女の魂」と「武士の太刀刀」が並べられています。武士にとって刀が名誉や生き方を象徴する大切な品であるように、女性にとって鏡もそれに匹敵する大切な品である、という対比で使われています。
この発想は、鏡を納める道具の呼び名にも表れています。「鏡の家」は、鏡箱を女の魂が宿る家に見立てた言い方で、鏡を入れる箱、つまり鏡箱を指します。『書言字考節用集』(1717年・江戸時代中期、槙島昭武編)には、この語が出てきます。
鏡箱そのものも、古くから生活の中で大切に扱われました。平安時代以後、寝殿に置かれた理髪の調度の一つとして、鏡や領巾(ひれ)、汗手拭(あせたなごい)などを入れる箱が用いられていました。
江戸時代後期には、「女の魂」という短い言い方も用いられています。『心学早染草(しんがくはやそめぐさ)』(1790年・江戸時代後期、山東京伝作、北尾政美画)は、善玉悪玉の趣向で知られる黄表紙で、その用例に「女のたましいは鏡にきわまりたり」とあります。
つまり、はじめは「鏡は女の魂」という形で、鏡の大切さをはっきり言い表し、後には「女の魂」だけでも鏡を指す言い方として定着していきました。鏡を女性の身近な調度、身だしなみの道具、また特別な力をもつ品として大切にしてきた考えが、この表現の土台にあります。
このことわざは、現代の価値観をそのまま決めつける言葉としてではなく、昔の社会で鏡が女性にとってきわめて大切な品と考えられたことを伝える言い方として読むと分かりやすいです。鏡という道具に、身だしなみ、名誉、守りの意味まで重ねたところに、このことわざの由来があります。
「鏡は女の魂」の使い方




「鏡は女の魂」の例文
- 祖母は嫁入り道具の手鏡を大切にし、鏡は女の魂と言って毎朝そっと布で拭いていた。
- 古い物語では、鏡は女の魂という考えのもと、鏡を失うことが大切な品を失う場面として描かれる。
- 母は形見の鏡を箱に納め、鏡は女の魂だから粗末に扱ってはならないと子どもに教えた。
- 展示室には、鏡は女の魂という言葉とともに、江戸時代の鏡箱が紹介されていた。
- 婚礼の支度では、鏡は女の魂といわれるほど大切な品として、手鏡を丁寧に包んだ。
- 鏡は女の魂ということわざには、昔の人が鏡を身だしなみだけでなく心にも関わる品と考えたことが表れている。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・平凡社編『改訂新版 世界大百科事典』平凡社、2007年。
・近松門左衛門『栬狩剣本地』1714年。
・槙島昭武編『和漢音釈書言字考節用集』村上平楽寺、1717年。
・山東京伝作、北尾政美画『心学早染草』1790年。























