【ことわざ】
口に甘いは腹に毒
【読み方】
くちにあまいははらにどく
【意味】
相手の甘い言葉につられて気を許すと、策略にはまり、害を受けるというたとえ。


【英語】
・be taken in by honeyed words.(甘い言葉にだまされる)
【類義語】
・口に蜜あり腹に剣あり(くちにみつありはらにけんあり)
【対義語】
・良薬は口に苦し(りょうやくはくちににがし)
「口に甘いは腹に毒」の語源・由来
「口に甘いは腹に毒」は、口に入れたときには甘くておいしい物でも、食べ過ぎれば腹をこわすことがあるという、飲食にまつわる身近な経験を土台にしています。目の前の心地よさに引かれて度を越すと、あとから自分の身に悪い結果が返ってくるという関係を、「口」と「腹」、「甘い」と「毒」の鮮やかな対照によって表しています。
「甘い」は、もともと砂糖や蜜のような味を表しますが、味覚以外にも意味を広げて、話しぶりが巧みで人をたぶらかすさまを表すようになりました。「甘い言葉」といえば、相手を喜ばせ、警戒心を解かせるような言葉を指します。この広がった意味によって、食べ物についての教えが、人の言葉や誘いを警戒する教えへと移されたのです。
このことわざでは、「口」にも二つの働きが重ねられています。一つは食べ物の甘さを味わう口、もう一つは言葉を聞き入れたり、交わしたりする場です。その口には快く受け入れられるものが、腹、すなわち表面からは分からない結果の部分では、害となるという組み立てになっています。
同じ内容を「口に甘きは腹に害あり」ともいいます。「甘い」を古い文語形の「甘き」で表し、「毒」を「害」とした言い方ですが、表面のうまさや心地よさに引かれると、あとで悪い結果を招くという教えは共通しています。この形は、「口に蜜あり腹に剣あり」の類似表現としても挙げられています。
甘い言葉を害に結び付ける考え方は、古くから日本語の中にありました。『文明本節用集』(1474年ごろ・室町時代中期)には、「苦言薬也 甘言病也」とあります。耳に痛い苦言は身を直す薬となるが、相手の気に入る甘言は人を損なう病となるという意味です。これは「口に甘いは腹に毒」そのものの用例ではありませんが、甘い言葉の心地よさと、その後に生じる害とを対照させる、共通した発想を示しています。
反対の方向から同じ教えを表すものに、「良薬は口に苦し」があります。日本では、11世紀中ごろの『明衡往来』に、良い薬は口に苦いという内容の用例があり、のちには、耳の痛い忠告ほど本人のためになるという意味で広く使われました。苦くても役に立つものと、甘くても害になるものとを比べることで、目先の快さだけで物事を判断してはならないという教えが、よりはっきりと表れます。
「口に甘いは腹に毒」は、親切な言葉や褒め言葉をすべて疑うよう求めるものではありません。あまりにも都合のよい話を持ちかけられたとき、言葉の心地よさだけに気を取られず、相手の目的や、その話がもたらす結果まで慎重に考えるよう促すことわざです。甘言に気を許して計略に乗せられないための戒めとして、現在の意味に定着しています。
「口に甘いは腹に毒」の使い方




「口に甘いは腹に毒」の例文
- 口に甘いは腹に毒というから、利益ばかりを強調する勧誘には注意が必要だ。
- 友人は口に甘いは腹に毒と考え、見知らぬ人からの都合のよい申し出を断った。
- 口に甘いは腹に毒を忘れて甘言を信じたため、彼は不利な契約を結んでしまった。
- 母は口に甘いは腹に毒と戒め、褒め言葉だけで相手を信用しないよう子どもに教えた。
- 無料で必ずもうかるという宣伝を見て、祖父は口に甘いは腹に毒だと警戒した。
- 口に甘いは腹に毒を心に留め、担当者の説明だけでなく契約書の条件も確かめた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・集英社辞典編集部編『会話で使えることわざ辞典』集英社、1989年。
・『文明本節用集』室町時代中期。























