【故事成語】
雲は竜に従い風は虎に従う
【読み方】
くもはりゅうにしたがいかぜはとらにしたがう
【意味】
性質や志の似たものどうしは、自然に求め合い、集まるものだというたとえ。また、すぐれた君主のもとには、すぐれた臣下が集まることのたとえ。


【英語】
・Birds of a feather flock together.(似た者どうしは自然に集まる)
・Like will to like.(似たものは似たものを求める)
【類義語】
・同気相求む(どうきあいもとむ)
・類は友を呼ぶ(るいはともをよぶ)
「雲は竜に従い風は虎に従う」の故事
「雲は竜に従い風は虎に従う」は、中国古代の書物『易経(えききょう)』の乾卦(けんか)に付された「文言伝(ぶんげんでん)」に出てくる言葉です。『易経』の経文は周代に形作られ、その解釈を述べる「十翼(じゅうよく)」は、周代末から前漢にかけてしだいに成立したと考えられており、「文言伝」もその一つです。
乾卦では、竜が地中に潜む段階から天高く飛ぶ段階までを描きながら、すぐれた人物が力を養い、世に出て働く道筋を説きます。その第五段階に当たる九五(きゅうご)には、「飛龍天に在り、大人を見るに利あり」とあり、徳を備えた人物が高い地位に立ち、人々から仰ぎ見られる場面を表しています。
「文言伝」は、この言葉の意味を明らかにするために、「同声相応じ、同気相求む」と述べます。同じ音は互いに響き合い、同じ性質をもつものは互いに求め合うという意味です。続いて、水は湿った所へ流れ、火は乾いた物へ燃え移り、「雲從龍、風從虎」、すなわち、雲は竜に従い、風は虎に従うと述べ、最後に、万物はそれぞれ自分と同じ種類のものに従うと結んでいます。
中国では古くから、竜は水に関わる霊獣であり、その動きには雲が伴うと考えられていました。また、虎が激しくほえると、山や谷に風が起こると考えられていました。唐代の孔穎達(こうえいたつ)による注釈では、竜と雲はともに水の気に属し、虎の猛々しさと風の激しい動きも互いに通じるため、同じ性質をもつものが感応する例として、この二つが並べられています。
したがって、この言葉は、竜の後ろを雲が追い、虎の後ろを風が追うという、単純な上下関係だけを表すものではありません。竜と雲、虎と風のように、互いにふさわしいものが呼応して結び付き、それぞれの働きや勢いがいっそう強くなることを表しています。
原文では、この二つのたとえの直後に、徳の高い聖人が現れると、万物がその姿を仰ぎ見るという意味の言葉が続きます。そのため、単に似た者どうしが集まることだけでなく、立派な君主が世に出れば、その徳に応じてすぐれた臣下や人材が集まるという意味にも広がりました。
前漢の司馬遷が著した『史記(しき)』(紀元前1世紀)の「伯夷列伝(はくいれつでん)」にも、「雲從龍、風從虎」が引かれています。そこでは、伯夷(はくい)と叔斉(しゅくせい)は、孔子がその行いをたたえたために名声がいっそう明らかになり、顔淵(がんえん)も孔子に学んだために、その行いが後世に広く知られたと述べています。
この『史記』の用法では、すぐれた人物が、さらに大きな人物と結び付くことによって、その徳や働きを世に示すという意味が強く表れています。竜に雲が伴い、虎に風が伴うように、ふさわしい人物どうしが結び付けば、互いの価値や力がいっそう明らかになるということです。
日本では、室町時代中期の用字集『文明本節用集(ぶんめいぼんせつようしゅう)』に、この言葉の古い用例があります。同書には文明年間の記載があり、現存する古い節用集の一つであることから、遅くとも室町時代には、『易経』に由来するこの表現が日本の知識人の間に伝わっていたことが分かります。
原典では「雲從龍、風從虎」と簡潔に書かれていますが、日本語では助詞を補い、「雲は龍に従い、風は虎に従う」と読み下します。現在は「龍」を「竜」と書き、「雲は竜に従い風は虎に従う」と表すことも多く、同じ性質や志をもつ者が自然に集まること、また、すぐれた指導者のもとにふさわしい人材が集まることを表す言葉として用いられています。
「雲は竜に従い風は虎に従う」の使い方




「雲は竜に従い風は虎に従う」の例文
- 誠実な校長のもとに熱心な教師が集まる様子は、雲は竜に従い風は虎に従うという言葉にふさわしい。
- 雲は竜に従い風は虎に従うように、志の高い研究者の周りには優秀な協力者が集まった。
- 新しい監督が明確な目標を示すと有望な選手が次々に加わり、雲は竜に従い風は虎に従う結果となった。
- 地域のために働く代表者の熱意に多くの住民が応え、雲は竜に従い風は虎に従うような協力の輪が生まれた。
- 雲は竜に従い風は虎に従うというが、彼の優れた構想は、同じ理想を抱く仲間を引き寄せた。
- 立派な指導者と有能な部下が力を合わせる姿を見て、雲は竜に従い風は虎に従うとはこのことだと思った。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館大辞泉編集部編、松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・高田真治・後藤基巳訳『易経 上』岩波書店、1969年。
・小川環樹・今鷹真・福島吉彦訳『史記列伝 1』岩波書店、1975年。
・中田祝夫著『文明本節用集研究並びに索引 影印篇・索引篇』風間書房、1970年。
・王弼注、孔穎達疏『周易正義』。























