【ことわざ】
得難きは時、会い難きは友
【読み方】
えがたきはとき、あいがたきはとも
【意味】
よい機会をつかむのはむずかしく、よい友に出会うのもむずかしいこと。


【英語】
・Opportunity knocks but once(好機は一度しか訪れない)
・A good friend is like a four-leaf clover, hard to find and lucky to have(よい友は四つ葉のクローバーのように見つけにくく、得られれば幸運である)
【類義語】
・一期一会(いちごいちえ)
・千載一遇(せんざいいちぐう)
・時は得難くして失い易し(ときはえがたくしてうしないやすし)
・友は得難く失い易し(ともはえがたくうしないやすし)
「得難きは時、会い難きは友」の語源・由来
「得難きは時、会い難きは友」は、能の曲『西行桜(さいぎょうざくら)』に由来することわざです。もとの形では「逢い難き」とも表され、よい機会を得ること、よい友に出会うことのむずかしさを言い表します。
『西行桜』は、室町時代の能の曲目で、作者は世阿弥、一説には金春禅竹とも伝わります。舞台は京都の西山にある西行の庵で、登場人物には桜の精、西行、花見の人々などがいます。
物語では、西行の庵に美しい桜があり、毎年多くの花見客が訪れます。静かに暮らしたい西行は、花見客のにぎわいをわずらわしく思い、桜に罪があるかのような歌を詠みます。
その夜、西行が桜の木の下でまどろんでいると、夢の中に老人が現れます。老人は、草木には心がないのだから桜に罪はない、と西行に語り、自分が老木の桜の精であることを明かします。
桜の精は、西行と出会えたことを喜びます。そして、都の桜の名所を語り、春の夜のひとときを惜しみながら、静かに舞を舞います。
このことわざのもとになる言葉は、夜明けが近づく場面に出てきます。『西行桜』には「あら名残惜しの夜遊やな。惜しむべし〳〵得難きは時。逢ひ難きは友なるべし」とあり、桜の精が、西行と過ごす春の夜の短さを惜しんでいます。
ここでいう「時」は、ただ時計で数える時間ではありません。西行と桜の精が心を通わせる、二度と同じ形では戻らない貴重なひとときを指しています。
また、「友」は、ただ知っている人という意味だけではありません。桜の精にとって、西行は夢の中で出会い、花の罪をめぐって語り合い、春の夜をともに惜しむ相手です。
この言葉のすぐ後には、「春宵一剋価千金。花に清香月に陰」と続きます。これは、中国北宋の詩人・蘇軾の詩「春夜」にある「春宵一刻直千金、花有清香月有陰」をふまえた言い方で、春の夜のひとときがたいへん貴いことを表します。
つまり、このことわざは、春の夜の美しさ、西行と桜の精の出会い、そして別れの名残惜しさが重なって生まれた言葉です。よい時も、よい友も、望めばいつでも得られるものではないという思いが、短い一句の中に込められています。
現在では、能の場面を離れて、人生の大切な機会や友人との出会いを広く表すことわざとして使われます。得られた機会を粗末にせず、出会えた友を大切にする心を教える言葉です。
「得難きは時、会い難きは友」の使い方




「得難きは時、会い難きは友」の例文
- 留学の誘いを受けた兄は、得難きは時、会い難きは友と思い、思い切って挑戦した。
- 親友と呼べる人に出会えたことは、得難きは時、会い難きは友という言葉どおりの幸運だ。
- 長年望んでいた仕事の依頼が来たので、得難きは時、会い難きは友と考えて引き受けた。
- 転校先で心から話せる友人ができ、得難きは時、会い難きは友の意味を実感した。
- 得難きは時、会い難きは友というから、目の前の好機を軽く見てはいけない。
- 旅先で出会った仲間との縁を、祖父は得難きは時、会い難きは友として大切にしていた。
主な参考文献
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・大和田建樹著『謡曲評釈 第七輯』博文館、1908年。
・蘇軾『春夜』。























