【ことわざ】
栄耀の餅の皮
【読み方】
えようのもちのかわ
※「えいようのもちのかわ」とも読む。
【意味】
度を越したぜいたくのこと。ぜいたくに慣れ、餅を食べるにも皮をむくほどになることからいう。


【英語】
・extravagance(度を越したぜいたく、必要以上にお金を使うこと)
【類義語】
・栄耀に餅の皮を剥く(えようにもちのかわをむく)
・栄耀の餅(えようのもち)
【対義語】
・質素倹約(しっそけんやく)
・粗衣粗食(そいそしょく)
「栄耀の餅の皮」の語源・由来
「栄耀の餅の皮」は、「栄耀に餅の皮を剥く」という言い方と同じ考えから生まれたことわざです。ぜいたくに慣れると、餅を食べるときに、ふつうはむかない皮までむき、あんばかりを食べるようになる、というたとえです。
「栄耀」は、もとは大いに栄えて、世に時めくことを表す言葉です。のちに、栄えた暮らしから進んで、ぜいたくをすること、気まま勝手にふるまうことも表すようになりました。
「えよう」は、「えいよう」が変化した読みです。『義経記』(室町時代ごろ成立)には「ゑようの狩」という形が出てきて、晴れがましく立派なことを表しています。
さらに、江戸時代初期の仮名草子『竹斎』(1621〜1623年ごろ)には、「ゑようの振舞ひつかまつり」という形が出てきます。この段階では、栄えた暮らしに乗じて、ぜいたくにふるまう意味がはっきりしてきます。
一方、「餅」は、糯米を蒸してつき、形をまとめた食べ物で、正月や節句、祝い事にも用いられてきました。日常の食べ物であると同時に、晴れの日の食べ物としても大切にされてきたものです。
このことわざでは、その餅を粗末に扱うのではなく、食べられる皮までわざわざむくところに、ぜいたくの行き過ぎを表す力があります。食べるのに差し支えない部分まで取り除き、よいところだけを食べようとする姿が、むだなぜいたくのたとえになっています。
「栄耀の餅の皮」は、「栄耀に餅の皮を剥く」の短い形として伝わった表現です。また、「栄耀の餅」ともいい、いずれも、剥く必要のない餅の皮を剥いて食べることから、度を越したぜいたくを表します。
この言葉は、食べ物の細かな扱いを通して、暮らし全体のあり方をたとえています。少しよいものを食べる、少し便利なものを使うという程度ではなく、必要もないのに上等さを求めすぎるところを戒める言葉です。
上方のいろはかるた系の句としても、「栄耀に餅の皮剥く」という形が伝わっています。短く覚えやすい形で、ぜいたくに流れすぎることへの戒めが、日常の言い回しとして広まったといえます。
現在の使い方では、実際に餅を食べる場面に限りません。高価な料理を少しだけ食べて残す、まだ使えるものをすぐ買い替える、十分な品物に満足せず過分なものを求める、というような場面で用います。
このことわざは、豊かさそのものを否定する言葉ではありません。豊かさに慣れすぎて、もののありがたさや必要な限度を見失うことを戒める言葉です。
「栄耀の餅の皮」の使い方




「栄耀の餅の皮」の例文
- 高級料理の中心だけを少し食べて残す態度は、栄耀の餅の皮と言われても仕方がない。
- まだ使える筆箱を毎月買い替えるのは、栄耀の餅の皮に近い。
- 旅行先で一番高い部屋でなければ嫌だと言い出すとは、栄耀の餅の皮も甚だしい。
- 祖父は、物を粗末にする孫を見て、栄耀の餅の皮になってはいけないと注意した。
- 十分立派な贈り物に不満を言うのは、栄耀の餅の皮というものだ。
- 豊かな生活に慣れすぎると、栄耀の餅の皮のように、必要以上のぜいたくを求めてしまう。
主な参考文献
・松村明監修『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・日本漢字能力検定協会『漢字ペディア』。
・佐竹秀雄・武田勝昭・伊藤高雄編、北村孝一監修『故事俗信ことわざ大辞典 第二版』小学館、2012年。
・時田昌瑞『岩波ことわざ辞典』岩波書店、2000年。























