【ことわざ】
得手に帆を揚げる
【読み方】
えてにほをあげる
【意味】
得意なことを発揮できるよい機会が来て、待っていたかのように調子に乗って物事を行うことのたとえ。


【英語】
・make hay while the sun shines(好機があるうちに活用する)
【類義語】
・追風に帆を上げる(おいてにほをあげる)
・順風に帆を上げる(じゅんぷうにほをあげる)
・順風満帆(じゅんぷうまんぱん)
【対義語】
・得手に鼻突く(えてにはなつく)
「得手に帆を揚げる」の語源・由来
「得手」とは、巧みで得意とすること、または最も得意とするところを指します。古くは、世阿弥の能楽論書『風姿花伝』(1400〜1402年ごろ・室町時代前期、世阿弥著)にも「えての能」という形が出てきており、得意な芸を表す言葉として使われています。
「帆」は、船が風を受けて進むために張る船具です。帆を揚げるとは、船が風を受けて進めるように、帆を高く張ることをもとにした言い方です。
このことわざは、得意なことをする人の勢いを、よい風を受けて進む船にたとえたものです。自分の力を発揮できる場面が来ると、船が帆に風を受けるように、物事が勢いづくという考え方があります。
近い表現に「追風に帆を上げる」があります。これは、追い風が吹いてきたところで舟に帆をかけて快走する意から、機会に恵まれて力を十分に発揮することを表します。
「得手に帆を揚げる」の古い用例としては、仮名草子『智恵鑑』(1660年・江戸時代前期、橘軒散人〔辻原元甫〕)に「ゑてに帆をあげたるふぜい」とあります。ここでは、よい機会を得て、いかにも勢いづいている様子を表しています。
また、短い形の「得手に帆」も使われました。『大坂独吟集(おおさかどくぎんしゅう)』(1675年・江戸時代前期、西山宗因判)には、「えてにほたて貝」という句が出てきます。
『大坂独吟集』は、談林俳諧(だんりんはいかい)の特色を伝える俳諧集で、西山宗因の判を加えた諸家の独吟百韻を収めたものです。俳諧のことば遊びの中にも「得手に帆」に近い形が使われており、当時すでに人々に通じる言い方であったことが分かります。
表記には「得手に帆を揚げる」のほか、「得手に帆を掛ける」という異形もあります。「帆を揚げる」「帆を掛ける」は、どちらも船が風を受けて進む準備をする動作につながる表現です。
近代の用例としては、内田魯庵の『社会百面相』(1902年・明治時代)に「得手に帆を揚げる才子」という言い方が出てきます。ここでは、才能のある人物が自分に都合のよい機会を得て、勢いよくふるまう様子を表しています。
このように、「得手に帆を揚げる」は、船が追い風を受けて進む姿と、人が得意な場面で力を発揮する姿とを重ねたことわざです。現在では、得意分野で出番を得て、調子よく物事に取り組む様子を表す言葉として使われています。
「得手に帆を揚げる」の使い方




「得手に帆を揚げる」の例文
- 絵が得意な姉は、ポスター係に選ばれて得手に帆を揚げるように作品を仕上げた。
- 司会が得意な友人は、文化祭の進行役を任され、得手に帆を揚げる勢いで会場を盛り上げた。
- 営業経験の長い社員は、新商品の説明会で得手に帆を揚げるように話を進めた。
- 料理好きの父は、親戚が集まる日になると得手に帆を揚げるように台所に立つ。
- 理科が得意な班長は、実験発表で得手に帆を揚げるように分かりやすく説明した。
- 相手チームの速い攻撃を読めた主将は、守備で得手に帆を揚げる働きを見せた。
主な参考文献
・日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典 第二版』小学館、2000〜2002年。
・小学館国語辞典編集部編『精選版 日本国語大辞典』小学館、2005〜2006年。
・松村明監修、小学館大辞泉編集部編『大辞泉 第二版』小学館、2012年。
・北村孝一編『ことわざを知る辞典』小学館、2018年。
・世阿弥『風姿花伝』1400〜1402年ごろ。
・橘軒散人『智恵鑑』1660年。
・西山宗因判『大坂独吟集』村上平楽寺、1675年。
・内田魯庵『社会百面相』1902年。























